29 / 32
12.マジシャン・シーフとの戦い
12-3
しおりを挟む「大丈夫か、エマ」
「リキくん! それにマナトくんも……。
助けに来てくれたん?」
涙声のエマに、「ああ」とそれぞれうなずくと、
エマは「うわああん」と泣き出した。
「こわかったあああ!
なんなんこの人!
『虹隕石を探せ。
言うことをきかないと、
ルームメイトのみんなを傷つけてやる』
っておどしてきて……」
そうか、
それでエマはコイツの言うことを聞いていたのか。
「そうなるとやっかいだな……」
霧浦のことを警察にひきわたしても、
きっと瞬間移動で刑務所から脱出してしまうだろう。
それに、自分を倒したおれたちに復讐しに来るかもしれない。
「リキ、霧浦には、とっておきの魔法をかけてやる。
だから、安心しろ」
どんっと自分の胸をたたいてみせたマナトに、
エマが涙をぬぐいつつ話しかける。
「魔法……。
さっき戦ってる時も、そう言っとったよね?
もしかして、マナトくんって魔法使いなん?」
あ。そうだ、
エマはマナトが魔法使いだって、知らないんだった。
「それに、リキくん!
やっぱりエスパーだったんね!
すごかった!
念動力に、瞬間移動、テレパシーまでつかえるん⁉」
あ~……、完全にバレちまった。
そうだよな、思いっきり能力使いまくってたからな。
「でもさ、エマ。
おれがこうやって能力使う前に、
おれのことエスパーだって見抜いてたよな。
なんでだ?」
エマは、
「それが、ちょっと申し訳ないんやけど……」
と前置きして話し出した。
「ほら、ウチ、タイムカプセル探しで、
みんなの情報を読み取ったやん?
あの時、ヘンな声がまじって聞こえたんよ」
「……ヘンな声?」
「そう。
『リキヤ、もしダメそうなら、
超能力でサポート頼むぞ』。
『この子も、リキくんと同じ、
本物のエスパーなのかしら』、
ってね」
「……」
はい、あきらかにうちの父さんと母さんの声ですね。
って、エマのやつ、あんなにたくさんの声から、
この声をひろいあげたのか……。
すごいな。
「ウチ、その『エスパーを知ってる人の声』に集中して、
『エスパーをみつけたい』って思ったん。
そしたら、リキくんの姿が頭にうかんできたんだ」
「勝手に情報を読んでごめんね」とエマは手を合わせた。
「それにしても、ふたりで、
スーパーエスパーに、魔法使い⁉
ウチのしょぼい探査能力より、ずっとずっとすごい!」
エマは興奮でほほを赤く染めながら、
手をぱたぱた上下させている。
こうも素直に信じてくれて、
しかも能力をほめられると照れくさくなるよな。
「オマエの能力、しょぼくなんてねーよ。
おれのところに虹隕石があるって、探し当てたんだろ?」
「あ、あれは、
リキくんがもってるってことしかわからんくて。
そしたら、アイツがリキくんに会って、探してこいって……」
「いや、それでもすごいと思うぞ。
あれだけの声と映像を分析して、探しものをするなんて。
フツーのヤツなら、ぶっ倒れてるよ。
……実はおれ、タイムカプセル探しの時、
探査能力をつかってる時のオマエの心を読んでたんだ。
でも、あまりにも情報がいっぱいで、気分が悪くなったもん」
「えへへ~。そう?
……あ! 一番大切なこと忘れとった!」
うれしそうな声から一転。
あわてたようなエマの声色に、思わず身がまえる。
「ふたりとも、助けてくれて、ありがとうございました」
そう言って、エマは深々と頭を下げた。
それに、思わずおれとマナトは顔を見合わせて、
笑ったのだった。
さて、あとはマナトが霧浦に、
「とっておきの魔法」をかけてくれれば、この事件は解決だ。
0
あなたにおすすめの小説
14歳で定年ってマジ!? 世界を変えた少年漫画家、再起のノート
谷川 雅
児童書・童話
この世界、子どもがエリート。
“スーパーチャイルド制度”によって、能力のピークは12歳。
そして14歳で、まさかの《定年》。
6歳の星野幸弘は、将来の夢「世界を笑顔にする漫画家」を目指して全力疾走する。
だけど、定年まで残された時間はわずか8年……!
――そして14歳。夢は叶わぬまま、制度に押し流されるように“退場”を迎える。
だが、そんな幸弘の前に現れたのは、
「まちがえた人間」のノートが集まる、不思議な図書室だった。
これは、間違えたままじゃ終われなかった少年たちの“再スタート”の物語。
描けなかった物語の“つづき”は、きっと君の手の中にある。
悪魔さまの言うとおり~わたし、執事になります⁉︎~
橘花やよい
児童書・童話
女子中学生・リリイが、入学することになったのは、お嬢さま学校。でもそこは「悪魔」の学校で、「執事として入学してちょうだい」……って、どういうことなの⁉待ち構えるのは、きれいでいじわるな悪魔たち!
友情と魔法と、胸キュンもありの学園ファンタジー。
第2回きずな児童書大賞参加作です。
エマージェンシー!狂った異次元学校から脱出せよ!~エマとショウマの物語~
とらんぽりんまる
児童書・童話
第3回きずな児童書大賞で奨励賞を頂きました。
ありがとうございました!
気付いたら、何もない教室にいた――。
少女エマと、少年ショウマ。
二人は幼馴染で、どうして自分達が此処にいるのか、わからない。
二人は学校の五階にいる事がわかり、校舎を出ようとするが階段がない。
そして二人の前に現れたのは恐ろしい怪異達!!
二人はこの学校から逃げることはできるのか?
二人がどうなるか最後まで見届けて!!
あだ名が242個ある男(実はこれ実話なんですよ25)
tomoharu
児童書・童話
え?こんな話絶対ありえない!作り話でしょと思うような話からあるある話まで幅広い範囲で物語を考えました!ぜひ読んでみてください!数年後には大ヒット間違いなし!!
作品情報【伝説の物語(都道府県問題)】【伝説の話題(あだ名とコミュニケーションアプリ)】【マーライオン】【愛学両道】【やりすぎヒーロー伝説&ドリームストーリー】【トモレオ突破椿】など
・【やりすぎヒーロー伝説&ドリームストーリー】とは、その話はさすがに言いすぎでしょと言われているほぼ実話ストーリーです。
小さい頃から今まで主人公である【紘】はどのような体験をしたのかがわかります。ぜひよんでくださいね!
・【トモレオ突破椿】は、公務員試験合格なおかつ様々な問題を解決させる話です。
頭の悪かった人でも公務員になれることを証明させる話でもあるので、ぜひ読んでみてください!
特別記念として実話を元に作った【呪われし◯◯シリーズ】も公開します!
トランプ男と呼ばれている切札勝が、トランプゲームに例えて次々と問題を解決していく【トランプ男】シリーズも大人気!
人気者になるために、ウソばかりついて周りの人を誘導し、すべて自分のものにしようとするウソヒコをガチヒコが止める【嘘つきは、嘘治の始まり】というホラーサスペンスミステリー小説
黒地蔵
紫音みけ🐾書籍発売中
児童書・童話
友人と肝試しにやってきた中学一年生の少女・ましろは、誤って転倒した際に頭を打ち、人知れず幽体離脱してしまう。元に戻る方法もわからず孤独に怯える彼女のもとへ、たったひとり救いの手を差し伸べたのは、自らを『黒地蔵』と名乗る不思議な少年だった。黒地蔵というのは地元で有名な『呪いの地蔵』なのだが、果たしてこの少年を信じても良いのだろうか……。目には見えない真実をめぐる現代ファンタジー。
※表紙イラスト=ミカスケ様
未来スコープ ―キスした相手がわからないって、どういうこと!?―
米田悠由
児童書・童話
「あのね、すごいもの見つけちゃったの!」
平凡な女子高生・月島彩奈が偶然手にした謎の道具「未来スコープ」。
それは、未来を“見る”だけでなく、“課題を通して導く”装置だった。
恋の予感、見知らぬ男子とのキス、そして次々に提示される不可解な課題──
彩奈は、未来スコープを通して、自分の運命に深く関わる人物と出会っていく。
未来スコープが映し出すのは、甘いだけではない未来。
誰かを想う気持ち、誰かに選ばれない痛み、そしてそれでも誰かを支えたいという願い。
夢と現実が交錯する中で、彩奈は「自分の気持ちを信じること」の意味を知っていく。
この物語は、恋と選択、そしてすれ違う想いの中で、自分の軸を見つけていく少女たちの記録です。
感情の揺らぎと、未来への確信が交錯するSFラブストーリー、シリーズ第2作。
読後、きっと「誰かを想うとはどういうことか」を考えたくなる一冊です。
9日間
柏木みのり
児童書・童話
サマーキャンプから友達の健太と一緒に隣の世界に迷い込んだ竜(リョウ)は文武両道の11歳。魔法との出会い。人々との出会い。初めて経験する様々な気持ち。そして究極の選択——夢か友情か。
大事なのは最後まで諦めないこと——and take a chance!
(also @ なろう)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる