【完結】エス★まほ ~エスパーと魔法使い、出会う~

みなづきよつば

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12.マジシャン・シーフとの戦い

12-4

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 バキンッ、バチッ。
 
 ん? なんだ、この音。
 見ると、地面に落ちていた石が、
 ばちっと音をたててわれた。
 次々と石はわれ、そのたびに音がする。

「ひっ!」

 エマは悲鳴をあげ、おれとマナトは声を失った。
 霧浦が、立ち上がっていた。
 長い髪はみだれてぼさぼさ。
 がくがくと体をけいれんさせながら、それでも立っている。

「あんたたちなんかあああぁぁぁ、
いなくなればいいんだあああ!」

 また、バチバチバチッと石が砕け、
 今度は木々も音をたてて折れだした。
 やべ、アイツ、念動力が暴走してる!
 霧浦は念動力をつかって、
 こっちの腕を折ったり、足を折ったりしなかった。
 それは、優しさか、過去に何かあったのか……。
 それは、わからない。
 でも、今は能力の暴走で、周り中のものを曲げたり、
 はじけさせたりしている。
 こっちにその能力がとんでくれば、
 骨折、内臓破裂は間違いなしだ!
 霧浦の念動力で、周囲の石や、
 折れた木が浮かび上がり、ぐるぐると渦を巻きだした。

「リキくん、今、テレパシー能力オフにしとる? 
てか、オフにできるん?」

「エマ? いきなりなんだ?」

「こたえて!」

  必死の声に
 「オフにしてる。オンにした方がいいのか?」
 と返す。

「ううん! そのままオフにしとって! 
わたし、探査能力使うから!」
 
 そう言うと、エマは目を閉じて、
 手にしていた虹隕石をにぎりしめた。

「う……ぐ、あああ!」

 霧浦が頭を押さえて苦しみだす。

「あああ、頭がっ、うあ、あああぁぁぁ!」

 ……、そうか、コイツ、テレパシーをオフにできないんだ!
 つねに、近くにいるヤツの心の声を
 かたっぱしからひろってるんだな。
 エマの探査能力に含まれる大量の声や映像も、
 コイツは全部読み取っている!

「やめてえええ! 
もう、頭が、こわれ、る」

 がくん、と霧浦がひざをつき、
 念動力で浮いていたものがいっせいに地面におちた。
 今度は本当の本当に、完全に気絶したようだ。

「ウチを誘拐したことのバツ。
あ~、スッキリした!」

 エマはべーっと霧浦にむかって舌を出した。

「すっげえ、エマ! 
まさか、探査能力でアイツを倒しちまうなんて!」

「呪文をとなえるヒマがなかったから、助かったよ」

 おれたちに向かい、エマは照れ顔でピースサインした。

「最初、ウチが能力つかった時、
アイツ、うめき声を出したかと思ったら、
いつの間にか部屋からいなくなってたんよ。
次につかおうとした時は、
さっさと部屋から出ていった。
不思議に思ってたんだけど……。
さっきの、リキくんの言葉で納得できたわ。
アイツ、ウチの能力つかってる時の心を読んで、
気分悪くしてたんね」

 すごい観察力だ。
 それが、能力にも活かされているのかもしれない。

「さて、じゃあ、今のうちだな」

 マナトが杖を振り、呪文をとなえる。
 長い長いそれは、
 戦いの間ではとてもとなえられなかっただろう。

「……ロゼッタ・ワーン。
このものの記憶を、すべて消し去りたまえ!」

 カッと霧浦の体が光ると、マナトはふうと息をついた。

「これ、忘却の魔法なんだ。
霧浦のヤツ、自分が超能力をつかえることも、
いや、自分がどこのだれかも忘れちまったよ」

「すごいけど……、やりすぎじゃない?」

 エマがこわごわとマナトに向かって聞いた。
 ぶっちゃけ、おれもちょっと引いてる。
 これまで生きてきた全部の記憶を、桐浦は失ったってことか……。

「え? そう? 
魔法使いの犯罪者とかには、みんなこうやってるよ」

 きょとんとするマナトに、
 おれは人間界と魔法界の違いを、あらためて知ったのだった。
 ……まあ、なにはともあれ、これで大団円だ!
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