上 下
68 / 90
14.管理人、やめます

7

しおりを挟む
「分かった、マオ。わたし、戦う」
 わたしの声は震えていた。でも、出した答えに後悔はない。
 わたしは、マオを心から信頼している。
 ううん、マオだけじゃない。
 このダンジョン・マンションの管理人たち、みんなを信頼して、尊敬している。
 みんなが、わたしのもうひとつの家族なんだ。 
 わたしがそう結論を出すと、マオはあの優しいほほえみを浮かべた。
「そうか。では、力になろう。それにあたって、おまえの正体をみんなに言うことになるが、いいな?」
「うん。それでいいよ。ありがとう、マオ」
 みんな、驚くだろうな……。でも、きっと、嫌な結果にはならないはず。
「そうだ、エート。目を閉じろ」
「え?」
「これから戦うおまえがうまくいくように、まじないをかけてやる」
 言われるままに、目を閉じる。
 すると、ふいにわたしの右手に、手をにぎられる感触。
 ああ、マオが、両手で、わたしの手を包んでくれてるんだ。
 大きな手。あったかくて、不思議と力がじんわりとわいてくる。
 大丈夫。マオが……、みんなが力になってくれるなら、絶対になんとかなるよ。
 目を閉じた暗闇にあるのは、不安じゃない。
 マオや、管理人のみんながついてくれているという安心感だ。
「さ、目をあけていいぞ」
「ふふ、ありがとう、マオ。元気出たよ」
 うん、本当に、元気が出てきた。
 おまじないの力、抜群だね!
「そうだ、エート。おまえに、ひとつ言っておこう」
 めずらしく、マオがいたずらっぽい笑みを浮かべている。
「このダンジョン・マンションの管理人をやめるには、条件があってな……」
 条件?
 マオはひっそりと、わたしに耳打ちした。
 その条件に、わたしは思わず笑ってしまったのだった。
しおりを挟む

処理中です...