異世界にトリップしたら魔王城のハウスキーパーとして雇われました。

たまき

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さようなら平凡、ようこそ非凡(改稿中)

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子供の時は良かったな、なんてここ最近特に思うようになった。
学校に行かなきゃいけないって面倒なことはあるけど、友達と馬鹿をやったり遊んだり……社畜的な今よりは絶対に楽しかった。

勉強が仕事、なんて言って毎日の生活を心配する必要もなかったし、税金も払う必要がなかったからお小遣いを全部自分のために使えた。

それなのに社会人という立場になった途端、住民税、国民年金、給料から天引きされる保険代、生きるためにはお金が必要なのに稼げば稼ぐほど税金が重くのし掛かってきて生活にも四苦八苦するようになる。

「何のために働いてるんだろ、毎日毎日上司のパワハラ、セクハラに耐えて……仕事をする意味があるのかって感じだよ」

生活をする以外で仕事をする意味でも見つかれば、毎日楽しくなるのかもしれないけど、なかなかそんなにうまく意味が見つかるはずもない。

(そういえば、来週は結婚式……またご祝儀でお金が飛んでくじゃん。今月ピンチだからまた借りるしかないかな……)

生活やお祝いのためにキャッシングでお金を借りるなんて、学生時代は考えてもいなかったけど、低賃金で働く身としてはキャッシングはすごく助かる。

ーーそれがいいことではないと分かってはいるけど、お金がないから仕方がない。

(給料の設定おかしくない? この金額で私と同じ生活してみろっての! 何で贅沢もしてないのにお金に困らなきゃいけないのよ!)

ダンッ! と強くベランダの手すりを叩いた時ーー……。

バキッ!

おんぼろアパートのベランダの手すりが壊れて、私はそのまま空中に放り出される。

(あぁ、本当にツイてない……ベランダの手すりが壊れて死んだ女なんて、笑い話にしかならないじゃない)

 とことんツイてない自分の運命を呪いながら、私はやがて来る衝撃に耐えるべく目を閉じた。

(あれ? なんか遅くない? これだけ待っても衝撃が来ないとかおかしくない?)

そろり、と目を開けてみるとーー……。

「貴様、一体どこから侵入した!?」

「はは、こんなよわそうな奴に侵入されるなんて魔王城の質も落ちたんじゃない?」

「笑い事ではなかろう! アスティ、貴様も宮廷魔導師なら気配くらい感じられんのか!」

「は? 魔導師だからって何でも出来ると思ったら大間違いなんですけど? 大体仮にも魔王の称号を持ってるんですからダーク様が見つけてくださいよ、侵入者」

「……まぁ、確かにその通りだが。と、ということで今回はお互いに悪かったことにしないか?」

「魔王なのに弱っ!」

「あぁ!?」

(しまった! ついツッコミいれちゃった……)

「とりあえず侵入者なんだから即処刑。はい、面倒な問題片付いたー」

「ま、待って! 一応私の命がかかってるんですから簡単に決めないで!?」

「とりあえず貴女がどこから侵入したのか、それを教えてほしいわね」

(露出狂っぽいけど、まともそうな人、かな?)

「いくら貴女がどこにでもいそうな平々凡々、しかもスタイルは並み以下だとしてもここは魔王城。簡単に忍び込めるはずがないのよねぇ…… 」

「あの、前半のさりげない……ってむしろ堂々と私をディスるのやめてもらえませんか。並み以下のスタイルだからこそガラスのハートなんです、私」

何でいきなり連れてこられて、この人たちから理由のない悪口を言われなきゃいけないのか。

「私、アパートのベランダから落ちたはずなんですけど、貴方たちに助けてもらったんでしょうか?」

侵入者扱いされているから、それはありえないと思うけど念のために聞いてみた。

「え、何で僕たちが君を助けないといけないの? メリットないよね? 頭悪いの?」

「万が一の可能性を考えても聞いてみただけなので、抉るような口撃をしてくるのやめてください」

「おい、貴様。俺たちが貴様のような輩を助けるはずがないだろう。妙なことを言ってないでさっさと侵入ルートを白状しろ」


魔王と呼ばれていた男性が私の手首を掴んだ後に捻ってきて今まで味わったことのない痛みが襲ってきた。

「痛い痛い痛い!! わ、私だって好きでここにいるんじやありません!」

「じゃあ出てく?」

「も、もちろんーー」

「この魔王城から出ていくって意味は死体になるかってことなんだけど、どうする?」

「出ていきません!」

 「勝手だなぁ。侵入者の対処として、即処刑が妥当だと思うんだけどどうすんのさ」

(うそ、ベランダから落ちて助かったと思ったら、いきなり変な人たちの所に来ていて死ぬか生きるかの瀬戸際だなんて……)

「ダ、ダーク様!」

慌てたようにモブっぽい誰かが入ってくる。

「おい、今は緊急事態だ。勝手に入ってくるな」

「も、申し訳ございません! ですが、ハウスキーパーがまた逃げ出しまして……!」

「またか! くそ、高い賃金を払ってるのに何故逃げ出すんだ!」

「そりゃ、当然だと思うわよ。呪われたりするアイテムが盛り沢山だもの。最初は賃金に釣られるでしょうけど割に合わなさすぎだものねぇ」

「姉上は黙っていてくれ。これでもう今月に入ってから10人目だぞ……」

(まだ今月に入ってから4日目なんだけど……)

するとそこで魔王様とやらと目が合う。

「貴様、生きたいか?」

「それはもちろん」

「なら貴様をこの魔王城のハウスキーパーとして雇ってやろう。対価は命の保証だ」

「……は? いやいやいやいやいや、私、自分の部屋すら片付けない汚部屋女子なんですけど」

「汚部屋女子?」

「散らかり放題の部屋を片付けもしないで、私、これくらいがちょうどいいからーとか言ってる社会不適合者のことでしょ」

(し、辛辣……)

「そんなことは知らん。ハウスキーパーにならないなら即処刑だ。ちなみにちゃんと仕事が出来ていないと判断した場合も即処刑だからな」

「そ、そんなぁ……」

ここで始めた名乗ります、私、福好喜子ふくよしよしこはひょんなことなら異世界っぽい所に来て、なぜか魔王城のハウスキーパー(死亡フラグあり)をすることになりました。

続く……

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