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▼籠絡する魔女の影
しおりを挟む珍しいピンクブロンドの王妃は、その髪色に見合わないほど深い青のドレスを身にまとっていた。
これで瞳が青ければ納得もできるが、残念ながら瞳も濃い桃色をしている。
ドレスだけじゃない、手袋に髪飾り、靴にソックス、あしらわれるフリルやレースも全て青。
濃淡がある訳でもなく、いっそ恐ろしいほど「着飾る」意味を履き違えた容貌だった。
向日葵色の髪にアクアブルーの瞳の凛々しい国王は、それこそ純白の服が似合いそうなほど王子様然とした男性であるにも関わらず、この国の国民らしい、質がいいだけの黒の礼服を纏っている。
もちろん所々に細やかな刺繍や宝石が有るのだが、それらも全て黒。
金属すらも黒なのはどうかと思うが。
それでいて夫婦の瞳は幸せそうで、お互いを愛している訳では無いのだとよくわかるのに、おかしなくらい近しいのはおそらく同類だからだろうか。
・・・頭がおかしい。
メイドなどの使用人も、おそらく国絡みの政策なのか黒と青の使用人服。
胸元に光る揃いのネクタイピンには鮮やかなまでの青の宝石が輝く。
全て本物の宝石なのが怖いところだ。
国王の瞳の色と言い張るには深すぎる群青の宝石を誇らしげに胸に輝かせる彼らは狂信者の面立ちをしていて・・・危うく足が下がりかけた。
乳兄弟に捕獲されたが。
それからの日々はまさに地獄。
所々で魔女の布教をされ、一時期精神状態がやばい事になっていた。
客室も黒と青で固められ、逃げ場がない。
他どこにいても目に入る黒と青・・・もう本人に会ってもいないのに嫌いだ。
「父上、早く帰りましょう・・・」
「あなた、わたくしも帰りたいですわ」
「そうか、俺もだ、我慢しろ」
母と二人で訴えるも聞き入れられない。
ああ・・・国に残った宰相と仕事をしているとでも言って逃げておけばよかった。
軽くノイローゼだ。
夢の中でも布教される。
黒と青が追いかけてくる。
「聖女様万歳」と叫びながら、聖女味のまんじゅうを掲げて。
怖すぎる。
早く帰りたいと思いながらも帰れない。
ようやく会うことが出来た同い年の王太子は目がイッていた。
瞳孔は開き切り、明らかに何人か殺っているに違いない。
ちなみに服は青を基調にした服。
初めて黒と青以外の色・・・とは言っても白だが、それを見た。
花瓶が黒で中の花が青の状態のここでは、二色以外は肌と髪と目の色くらいしか見当たらない。
黒や青を髪や目に持つ奴と出会うと地獄だった。
自分も聖女と同じ色だって自慢が始まるからな。
王太子はひたすらに聖女と、その娘のことしか話さない。
聖女の娘が好きな訳ではなく、自分こそ聖女の子供であるべき、だから彼女と結婚して聖女の子供になる。と言ったもので、現在の国王と魔女が元婚約者だということを思い出し背筋は凍った。
普通に怖い。
ともかくどこにいても魔女の影がある。
その状況で暫く過ごし、俺たちの精神がやばくなってきた頃、ついに魔女と対面できる機会が巡ってきた。
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