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○永遠の向こうに

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長い長い時の果てに、私は揺られていた。

何も分からない、聞こえない、感じない。

それでも何度も何度も繰り返している気がした。

ああ、私はどうなったのだろうか。

薄くなった自我で考える。

このまま飲み込まれてしまったら、私は消えてなくなるのだろう。

今回のこの子は、光に満ち溢れて、幸福そうに笑っている。

それなら、それでいいじゃないか、このまま溺れてしまったって。

そう囁く自分がいた。

それと同時に、抗おうとする自分がいた。 

だってこの先に、ルーシェは居ない。

ルーシェだった誰かはいても、ルーシェは居ない。

同じように、私だった誰かはいても、それは私では無いのだ。

きっと、ルーシェだってそう思う。

私はそう思ったし、それはきっと間違いじゃないのだ。

そう信じて、私は強く抗った。
強く、強く、強く。

抗い続ける。
手足をばたつかせて、思い切り暴れた。

気が付いたら、そばにルーシェがいた。

二人で、共に抗う。

一緒に蹴り上げて、腕を振るって、必死になって滑稽なダンスを踊る。

段々と楽しくなってきて、意識が明確になり始めながら、二人で笑い声を上げて踊る。

楽しい、楽しい、楽しい。

そんな感情のままに、二人で暴れる。

そうしたら、そのうち自由に泳げるようになった。

早い早い流れに抗って、遠くに見える光を掴みに行く。

二人で、強く強く願い続ける。

共に生きたいのだ。
二人で生きていきたいのだ。

たとえ何があろうとも、二人一緒なら───────きっと何も怖くないから。

 

遠い遠いその先で、暖かい何かに包み込まれた私たちは、疲れ果てて二人眠りについた。

優しいルーシェ。
彼に守られるように抱きしめられて、うたた寝をした。

きっともう離れることは無い。
握りしめたこの手が、離れることなどないのだ。

熱い熱いこの気持ちが、冷めることもきっとない。

眠りに落ちる直前に、大きくて安心する何かに、そっと撫でられた。



どのくらい経ったろうか、まだ私たち二人はここにいた。
この暖かい場所で二人で浮いている。
たまに寝返りを打っても、狭いが優しく包み込まれた。

ああ、永遠にここにいたい・・・。

そう思いながら二人微睡んでいたある日、急に私たちは押し出された。

いきなりはしった衝撃に二人手足をばたつかせる。

ああ、どんどん消えてゆく!

私は私のまま、全く新しい存在に書き換えられてゆく。

ただ一つ、ルーシェと強く握りあった手だけが、今の私たちを繋ぐもの。

やがて強い光が溢れる世界に、純真になった輝きは放たれた。






ぉ・・・ぁ・・・ぉ・・・ゃぁ・・・

「おめでとうございます、元気な双子の赤ちゃんです」
「ありがとうございます・・・」

その物語の結末を、まだ誰も知らない。
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