6 / 13
反省
しおりを挟む
私が戦える事を、一生知らせるつもりなんかなかった。ただ、いざという時ただの足手まといになって貴方を死なせる事だけは嫌だから、コレはただの自己満足の筈だった。
縁をきった今では、関係のないことーーその筈だったのに。
なのに、私が中核で奴が前線で盾になってるという光景は皮肉にも程がある。
実際、奴の氷魔法がドラゴンの攻撃を無効化し他のハンターとの連携も上手く取れていたので私達中核の攻撃がしやすくなったのもあって依頼はすんなり片付いた。
大隊での依頼の後は祝杯をあげるのが当たり前で例に洩れずこの夜のギルドの拠点宿では「乾杯!」と皆が酒を酌み交わしていた。少数ながら女性ハンターもいて私も普通に混ざる。普段なら。ハンクの掛け声で杯を手にはしたものの軽く口を付けただけでそれを置くと私はさっさと部屋に下がろうとした。
それを見咎めたのが当のベルンで
「リ、アイリ!待ってくれ!」
その声に他の者も気付いて
「なんだよ、アイリ混ざらねぇのか?」
依頼成功の夜は無礼講なのに、とやや咎めた視線が刺さる。
が、
「当たり前でしょ?今回は不可抗力だったけど二度目はない。そいつと一緒の依頼は私は一切断る。ギルド統括にもそう伝えておくから」
私の言葉にしん、とその場が静まり返る。
「…お前、何したんだよ?」
ベルンと肩を組んでビールを煽っていた一人が訊いてくる。
「アイリ!待ってくれ!少しでいい!君に謝罪がしたいんだ!」
「いらん」
突如始まったメロドラマな展開に酔っ払い共が盛り上がるのは当然で一斉に
「うぉーなんだソッチ関係か?!」
「詳しく聞かせろ!」
「話くらい聞いてやれよアイリ!」
と囃し立てられるのは当然だった。
何故こうなる事がわからない。
空気読めないとこは進歩してないのかこの馬鹿は。
「………」
変な場に引き摺り出しやがってどうしてくれやがる、と睨み付ければ
「す、すまない。こんなつもりじゃー…」
慌てても もう遅い。
「んで?お前らの関係性って何?」
ハンクが真面目な顔で訊くのでちらちらこちらを見計らいながら
「幼馴染で…、その」
「幼馴染!!」「マジで?!」「お嬢の幼馴染?!」お囃子どもが一斉に悲鳴のような声を上げる(金色のスカーレットとは別に若くて美人のアイリをコイツらはこっそりお嬢と呼んでいる)。
「てめぇら、ちっと黙れ」
「んで?幼馴染で?成長するにつれ互いを意識したとかいうパターンか?」
「いや…、その互いが家族同士の付き合いで」
うんうんそれで?といかつい野郎どもが一斉に頷く仕草は妙に笑えたが、
「…婚約者、だったんだ。その…、」
「「「こんやくうっ?!?」」」
次の瞬間一斉にムンクの叫びが量産されて不気味な光景になった。
「ふーん…で、お前が浮気したと」
ハンクのひとことに
「っなんでそれをっ…!」
「いや~だってよぉ?幼馴染で元婚約者なのにあそこまで信用出来ないって言い切られる理由って逆に他にあんの?」
………
確かに。
恐る恐る皆が怒りのオーラを迸させてるアイリの方を見遣る。
と、ばっとベルンが立ち上がり
「悪かった!俺は本当に愚かだった!すまない!ひとことでいい、謝罪を」
と走り寄ろうとするのを
「黙れ。でもって近づくな」
温度のない声で遮った。
「私の中ではとっくに終わった事なんだよ、謝罪して気が済むのはてめえの都合だろうが?んなエゴに人を巻き込むんじゃない、迷惑野郎」
絶対零度の私に多少なりとも付き合いのある男達は
「いや、おじょ…アイリよう、謝罪くらい聞いてやっても、」
などと擁護する。
「言っておくけど、年頃になって他に好きな女が出来たからって公衆の面前で、『お前のように取り澄まして可愛げのない女との結婚は御免だ!婚約は破棄させてもらう!』ていきなりコイツに怒鳴られて生き恥晒されたのは私の方だから」「「「えぇっ?!」」」
「ただの浮気なんて可愛いもんじゃない、一晩で町中の噂のタネになるくらい派手に馬鹿にしてくれた。だから、町を出たのよ。ーーコイツの顔も二度と見たくなかったし、ね」
淡々と告げるアイリにベルンは当然言い返せない。力なく項垂れる。
「そーいう事だから、ソイツと一緒の依頼は受けない、祝杯もあげない。ソイツがここに留まるなら私は朝イチでここ出てくから。ーーじゃあね」
言ってさっさと階段をあがるアイリに今度は誰も声を掛けない。
少し時間を開けて、すーっとアイリとそこそこ仲の良い女性ハンターが同じくあがっていった。
縁をきった今では、関係のないことーーその筈だったのに。
なのに、私が中核で奴が前線で盾になってるという光景は皮肉にも程がある。
実際、奴の氷魔法がドラゴンの攻撃を無効化し他のハンターとの連携も上手く取れていたので私達中核の攻撃がしやすくなったのもあって依頼はすんなり片付いた。
大隊での依頼の後は祝杯をあげるのが当たり前で例に洩れずこの夜のギルドの拠点宿では「乾杯!」と皆が酒を酌み交わしていた。少数ながら女性ハンターもいて私も普通に混ざる。普段なら。ハンクの掛け声で杯を手にはしたものの軽く口を付けただけでそれを置くと私はさっさと部屋に下がろうとした。
それを見咎めたのが当のベルンで
「リ、アイリ!待ってくれ!」
その声に他の者も気付いて
「なんだよ、アイリ混ざらねぇのか?」
依頼成功の夜は無礼講なのに、とやや咎めた視線が刺さる。
が、
「当たり前でしょ?今回は不可抗力だったけど二度目はない。そいつと一緒の依頼は私は一切断る。ギルド統括にもそう伝えておくから」
私の言葉にしん、とその場が静まり返る。
「…お前、何したんだよ?」
ベルンと肩を組んでビールを煽っていた一人が訊いてくる。
「アイリ!待ってくれ!少しでいい!君に謝罪がしたいんだ!」
「いらん」
突如始まったメロドラマな展開に酔っ払い共が盛り上がるのは当然で一斉に
「うぉーなんだソッチ関係か?!」
「詳しく聞かせろ!」
「話くらい聞いてやれよアイリ!」
と囃し立てられるのは当然だった。
何故こうなる事がわからない。
空気読めないとこは進歩してないのかこの馬鹿は。
「………」
変な場に引き摺り出しやがってどうしてくれやがる、と睨み付ければ
「す、すまない。こんなつもりじゃー…」
慌てても もう遅い。
「んで?お前らの関係性って何?」
ハンクが真面目な顔で訊くのでちらちらこちらを見計らいながら
「幼馴染で…、その」
「幼馴染!!」「マジで?!」「お嬢の幼馴染?!」お囃子どもが一斉に悲鳴のような声を上げる(金色のスカーレットとは別に若くて美人のアイリをコイツらはこっそりお嬢と呼んでいる)。
「てめぇら、ちっと黙れ」
「んで?幼馴染で?成長するにつれ互いを意識したとかいうパターンか?」
「いや…、その互いが家族同士の付き合いで」
うんうんそれで?といかつい野郎どもが一斉に頷く仕草は妙に笑えたが、
「…婚約者、だったんだ。その…、」
「「「こんやくうっ?!?」」」
次の瞬間一斉にムンクの叫びが量産されて不気味な光景になった。
「ふーん…で、お前が浮気したと」
ハンクのひとことに
「っなんでそれをっ…!」
「いや~だってよぉ?幼馴染で元婚約者なのにあそこまで信用出来ないって言い切られる理由って逆に他にあんの?」
………
確かに。
恐る恐る皆が怒りのオーラを迸させてるアイリの方を見遣る。
と、ばっとベルンが立ち上がり
「悪かった!俺は本当に愚かだった!すまない!ひとことでいい、謝罪を」
と走り寄ろうとするのを
「黙れ。でもって近づくな」
温度のない声で遮った。
「私の中ではとっくに終わった事なんだよ、謝罪して気が済むのはてめえの都合だろうが?んなエゴに人を巻き込むんじゃない、迷惑野郎」
絶対零度の私に多少なりとも付き合いのある男達は
「いや、おじょ…アイリよう、謝罪くらい聞いてやっても、」
などと擁護する。
「言っておくけど、年頃になって他に好きな女が出来たからって公衆の面前で、『お前のように取り澄まして可愛げのない女との結婚は御免だ!婚約は破棄させてもらう!』ていきなりコイツに怒鳴られて生き恥晒されたのは私の方だから」「「「えぇっ?!」」」
「ただの浮気なんて可愛いもんじゃない、一晩で町中の噂のタネになるくらい派手に馬鹿にしてくれた。だから、町を出たのよ。ーーコイツの顔も二度と見たくなかったし、ね」
淡々と告げるアイリにベルンは当然言い返せない。力なく項垂れる。
「そーいう事だから、ソイツと一緒の依頼は受けない、祝杯もあげない。ソイツがここに留まるなら私は朝イチでここ出てくから。ーーじゃあね」
言ってさっさと階段をあがるアイリに今度は誰も声を掛けない。
少し時間を開けて、すーっとアイリとそこそこ仲の良い女性ハンターが同じくあがっていった。
1,166
あなたにおすすめの小説
悪役断罪?そもそも何かしましたか?
SHIN
恋愛
明日から王城に最終王妃教育のために登城する、懇談会パーティーに参加中の私の目の前では多人数の男性に囲まれてちやほやされている少女がいた。
男性はたしか婚約者がいたり妻がいたりするのだけど、良いのかしら。
あら、あそこに居ますのは第二王子では、ないですか。
えっ、婚約破棄?別に構いませんが、怒られますよ。
勘違い王子と企み少女に巻き込まれたある少女の話し。
侯爵令嬢は限界です
まる
恋愛
「グラツィア・レピエトラ侯爵令嬢この場をもって婚約を破棄する!!」
何言ってんだこの馬鹿。
いけない。心の中とはいえ、常に淑女たるに相応しく物事を考え…
「貴女の様な傲慢な女は私に相応しくない!」
はい無理でーす!
〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇
サラッと読み流して楽しんで頂けたなら幸いです。
※物語の背景はふんわりです。
読んで下さった方、しおり、お気に入り登録本当にありがとうございました!
悪役令嬢に相応しいエンディング
無色
恋愛
月の光のように美しく気高い、公爵令嬢ルナティア=ミューラー。
ある日彼女は卒業パーティーで、王子アイベックに国外追放を告げられる。
さらには平民上がりの令嬢ナージャと婚約を宣言した。
ナージャはルナティアの悪い評判をアイベックに吹聴し、彼女を貶めたのだ。
だが彼らは愚かにも知らなかった。
ルナティアには、ミューラー家には、貴族の令嬢たちしか知らない裏の顔があるということを。
そして、待ち受けるエンディングを。
初めまして婚約者様
まる
恋愛
「まあ!貴方が私の婚約者でしたのね!」
緊迫する場での明るいのんびりとした声。
その言葉を聞いてある一点に非難の視線が集中する。
○○○○○○○○○○
※物語の背景はふんわりしています。スルッと読んでいただければ幸いです。
目を止めて読んで下さった方、お気に入り、しおりの登録ありがとう御座いました!少しでも楽しんで読んでいただけたなら幸いです(^人^)
知らない男に婚約破棄を言い渡された私~マジで誰だよ!?~
京月
恋愛
それは突然だった。ルーゼス学園の卒業式でいきなり目の前に現れた一人の学生。隣には派手な格好をした女性を侍らしている。「マリー・アーカルテ、君とは婚約破棄だ」→「マジで誰!?」
そちらがその気なら、こちらもそれなりに。
直野 紀伊路
恋愛
公爵令嬢アレクシアの婚約者・第一王子のヘイリーは、ある日、「子爵令嬢との真実の愛を見つけた!」としてアレクシアに婚約破棄を突き付ける。
それだけならまだ良かったのだが、よりにもよって二人はアレクシアに冤罪をふっかけてきた。
真摯に謝罪するなら潔く身を引こうと思っていたアレクシアだったが、「自分達の愛の為に人を貶めることを厭わないような人達に、遠慮することはないよね♪」と二人を返り討ちにすることにした。
※小説家になろう様で掲載していたお話のリメイクになります。
リメイクですが土台だけ残したフルリメイクなので、もはや別のお話になっております。
※カクヨム様、エブリスタ様でも掲載中。
…ºo。✵…𖧷''☛Thank you ☚″𖧷…✵。oº…
☻2021.04.23 183,747pt/24h☻
★HOTランキング2位
★人気ランキング7位
たくさんの方にお読みいただけてほんと嬉しいです(*^^*)
ありがとうございます!
婚約破棄をされるのですね、そのお相手は誰ですの?
綴
恋愛
フリュー王国で公爵の地位を授かるノースン家の次女であるハルメノア・ノースン公爵令嬢が開いていた茶会に乗り込み突如婚約破棄を申し出たフリュー王国第二王子エザーノ・フリューに戸惑うハルメノア公爵令嬢
この婚約破棄はどうなる?
ザッ思いつき作品
恋愛要素は薄めです、ごめんなさい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる