<完結済>婚約破棄を叫ぶ馬鹿に用はない

詩海猫(8/29書籍発売)

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反省

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私が戦える事を、一生知らせるつもりなんかなかった。ただ、いざという時ただの足手まといになって貴方を死なせる事だけは嫌だから、コレはただの自己満足の筈だった。



縁をきった今では、関係のないことーーその筈だったのに。

なのに、私が中核で奴が前線で盾になってるという光景は皮肉にも程がある。
実際、奴の氷魔法がドラゴンの攻撃を無効化し他のハンターとの連携も上手く取れていたので私達中核の攻撃がしやすくなったのもあって依頼はすんなり片付いた。


大隊での依頼の後は祝杯をあげるのが当たり前で例に洩れずこの夜のギルドの拠点宿では「乾杯!」と皆が酒を酌み交わしていた。少数ながら女性ハンターもいて私も普通に混ざる。普段なら。ハンクの掛け声で杯を手にはしたものの軽く口を付けただけでそれを置くと私はさっさと部屋に下がろうとした。
それを見咎めたのが当のベルンで
「リ、アイリ!待ってくれ!」
その声に他の者も気付いて
「なんだよ、アイリ混ざらねぇのか?」
依頼成功の夜は無礼講なのに、とやや咎めた視線が刺さる。
が、
「当たり前でしょ?今回は不可抗力だったけど二度目はない。そいつと一緒の依頼は私は一切断る。ギルド統括にもそう伝えておくから」
私の言葉にしん、とその場が静まり返る。
「…お前、何したんだよ?」
ベルンと肩を組んでビールを煽っていた一人が訊いてくる。
「アイリ!待ってくれ!少しでいい!君に謝罪がしたいんだ!」
「いらん」
突如始まったメロドラマな展開に酔っ払い共が盛り上がるのは当然で一斉に
「うぉーなんだソッチ関係か?!」
「詳しく聞かせろ!」
「話くらい聞いてやれよアイリ!」
と囃し立てられるのは当然だった。
何故こうなる事がわからない。
空気読めないとこは進歩してないのかこの馬鹿は。
「………」
変な場に引き摺り出しやがってどうしてくれやがる、と睨み付ければ
「す、すまない。こんなつもりじゃー…」
慌てても もう遅い。
「んで?お前らの関係性って何?」
ハンクが真面目な顔で訊くのでちらちらこちらを見計らいながら
「幼馴染で…、その」
「幼馴染!!」「マジで?!」「お嬢の幼馴染?!」お囃子どもが一斉に悲鳴のような声を上げる(金色のスカーレットとは別に若くて美人のアイリをコイツらはこっそりお嬢と呼んでいる)。
「てめぇら、ちっと黙れ」
「んで?幼馴染で?成長するにつれ互いを意識したとかいうパターンか?」
「いや…、その互いが家族同士の付き合いで」
うんうんそれで?といかつい野郎どもが一斉に頷く仕草は妙に笑えたが、
「…婚約者、だったんだ。その…、」
「「「こんやくうっ?!?」」」
次の瞬間一斉にムンクの叫びが量産されて不気味な光景になった。
「ふーん…で、お前が浮気したと」
ハンクのひとことに
「っなんでそれをっ…!」
「いや~だってよぉ?幼馴染で元婚約者なのにあそこまで信用出来ないって言い切られる理由って逆に他にあんの?」
………
確かに。
恐る恐る皆が怒りのオーラを迸させてるアイリの方を見遣る。
と、ばっとベルンが立ち上がり
「悪かった!俺は本当に愚かだった!すまない!ひとことでいい、謝罪を」
と走り寄ろうとするのを
「黙れ。でもって近づくな」
温度のない声で遮った。
「私の中ではとっくに終わった事なんだよ、謝罪して気が済むのはてめえの都合だろうが?んなエゴに人を巻き込むんじゃない、迷惑野郎」
絶対零度の私に多少なりとも付き合いのある男達は
「いや、おじょ…アイリよう、謝罪くらい聞いてやっても、」
などと擁護する。
「言っておくけど、年頃になって他に好きな女が出来たからって公衆の面前で、『お前のように取り澄まして可愛げのない女との結婚は御免だ!婚約は破棄させてもらう!』ていきなりコイツに怒鳴られて生き恥晒されたのは私の方だから」「「「えぇっ?!」」」
「ただの浮気なんて可愛いもんじゃない、一晩で町中の噂のタネになるくらい派手に馬鹿にしてくれた。だから、町を出たのよ。ーーコイツの顔も二度と見たくなかったし、ね」
淡々と告げるアイリにベルンは当然言い返せない。力なく項垂れる。
「そーいう事だから、ソイツと一緒の依頼は受けない、祝杯もあげない。ソイツがここに留まるなら私は朝イチでここ出てくから。ーーじゃあね」
言ってさっさと階段をあがるアイリに今度は誰も声を掛けない。
少し時間を開けて、すーっとアイリとそこそこ仲の良い女性ハンターが同じくあがっていった。

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