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*・゜゚・*:.。..。.:*・*:.。. .。.:*・゜゚・*
『マリア!……マリア!』
裏路地でマリアを探し彷徨っていたトニーは建物上階の窓に彼女を見つけ、歓喜に打ち震える。
『トニー?!』
『見つけた、僕のマリア。今行くよ』
『待って!』
マリアが止めるのも聞かず、トニーは非常階段を上がってきてしまう。
「恋の翼を借りて、この壁を飛び越えて参りました」
(え?)
いきなり“ロミオとジュリエット“の台詞を言ってきたゼノに、瑠璃は困惑して止まってしまったが、「続けて」と小さく挟み込んできたゼノに押される形で続行する。
『あなたこんなところに!危険よ!ここは__』
『君の兄さんがいる。俺を殺したいほど憎んでいる男が__わかってる。けど、君のお兄さんだ。争い合うのではなく、話し合ってわかり合いたい。そして君と__』
『トニー……』
*・゜゚・*:。. .。:*・゜゚・*
ここで、パチ パチ パチ と気のない拍手が室内に響いた。
「随分と楽しそうなことで」
不機嫌に顔を出したのは零だった。
「なんだ、来てたんなら止めてくれて良かったんだよ?」
「別に聞き耳立ててたわけじゃない。今来ただけだ」
「そう?なら良かったけど」
「で・なんで剣城くんがトニーやってんの?もしかして本音はやりたかったとか?」
「まさか!練習での代役くらいなら構わないだろうとやらせてもらっただけだよ。不快な思いをさせたのなら謝罪する」
「代役、ねぇ?それにしては堂に入ってたな。ロミオとジュリエットの台詞まで混ぜ込んで、まるで練習してきたみたいだ」
「まさか。いつも練習で副部長のトニーを見てたからだよ。アドリブはちょっとした出来心だけどウエストサイドストーリーはロミオとジュリエットを元に書かれたもので、今の場面だって有名なバルコニーのシーンを非常階段に置き換えただけだ。台詞としておかしくはないんじゃないかな?」
「非常階段に“壁“なんてないだろ」
「マリアの兄っていう“障壁“があるだろう?それの比喩とすればありえない表現じゃない」
「そんなことを論じる場じゃねえよ、ただの学祭の読み聴かせだ」
「ふぅん?僕は論じるのも一興だと思うけど。ところで今年“ウエストサイドストーリー“にしようって最初に言ったの誰?」
「部長の瑠璃だよ」
「そっか。僕はてっきり橅木さんは“ロミオとジュリエット“を発案したのに君が“ウエストサイドストーリー“で押し切ったのかと思ったんだけど」
「勝手に決めつけんなよ。瑠璃は元々“ロミオとジュリエット“なんて好きじゃねえんだよ」
『マリア!……マリア!』
裏路地でマリアを探し彷徨っていたトニーは建物上階の窓に彼女を見つけ、歓喜に打ち震える。
『トニー?!』
『見つけた、僕のマリア。今行くよ』
『待って!』
マリアが止めるのも聞かず、トニーは非常階段を上がってきてしまう。
「恋の翼を借りて、この壁を飛び越えて参りました」
(え?)
いきなり“ロミオとジュリエット“の台詞を言ってきたゼノに、瑠璃は困惑して止まってしまったが、「続けて」と小さく挟み込んできたゼノに押される形で続行する。
『あなたこんなところに!危険よ!ここは__』
『君の兄さんがいる。俺を殺したいほど憎んでいる男が__わかってる。けど、君のお兄さんだ。争い合うのではなく、話し合ってわかり合いたい。そして君と__』
『トニー……』
*・゜゚・*:。. .。:*・゜゚・*
ここで、パチ パチ パチ と気のない拍手が室内に響いた。
「随分と楽しそうなことで」
不機嫌に顔を出したのは零だった。
「なんだ、来てたんなら止めてくれて良かったんだよ?」
「別に聞き耳立ててたわけじゃない。今来ただけだ」
「そう?なら良かったけど」
「で・なんで剣城くんがトニーやってんの?もしかして本音はやりたかったとか?」
「まさか!練習での代役くらいなら構わないだろうとやらせてもらっただけだよ。不快な思いをさせたのなら謝罪する」
「代役、ねぇ?それにしては堂に入ってたな。ロミオとジュリエットの台詞まで混ぜ込んで、まるで練習してきたみたいだ」
「まさか。いつも練習で副部長のトニーを見てたからだよ。アドリブはちょっとした出来心だけどウエストサイドストーリーはロミオとジュリエットを元に書かれたもので、今の場面だって有名なバルコニーのシーンを非常階段に置き換えただけだ。台詞としておかしくはないんじゃないかな?」
「非常階段に“壁“なんてないだろ」
「マリアの兄っていう“障壁“があるだろう?それの比喩とすればありえない表現じゃない」
「そんなことを論じる場じゃねえよ、ただの学祭の読み聴かせだ」
「ふぅん?僕は論じるのも一興だと思うけど。ところで今年“ウエストサイドストーリー“にしようって最初に言ったの誰?」
「部長の瑠璃だよ」
「そっか。僕はてっきり橅木さんは“ロミオとジュリエット“を発案したのに君が“ウエストサイドストーリー“で押し切ったのかと思ったんだけど」
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