ふざけんな! と最後まで読まずに投げ捨てた小説の世界に転生してしまった 旦那様、あなたは私の夫ではありません

詩海猫(8/29書籍発売)

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連載

番外編 ブーケの行方

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ふと思いついたので書いてみました、ゆるゆる設定です。
タイトル通り本編でマリーローズがブーケを寄付(?)した際の結婚式でのとある司祭目線です。




*・゜゚・*:.。..。.:*・*:.。. .。.:*・゜゚・*


「このお花、よかったらこちらの教会でお使いください」
そう言って今日晴れて花嫁となったマリーローズ嬢が差し出したのは、先ほどまで行われていた結婚式(花婿が姿を消してしまったので式は続行不可能となったが)で手にしていたブーケだ。
真っ白な薔薇に鮮やかなグリーンが添えられ、朝露で光ったように見せるためのストーンが散りばめられている。
花も一級品だが、細かく計算されたデザインといい、使われているストーンもくず石のような宝石とは言え、材料費だけでも安くない。売ればそれなりの金額になるだろう。
「よ、よろしいのですか?」
式が中断したとはいえ、このご令嬢はロード伯夫人となったのだ。
このブーケはロード伯邸の玄関ホールに飾られるはずのものなのでは?
「どうせこの先もロード伯はいつお戻りになるかわかりませんし、縁起が悪……んんっ、捨てるのも面d、いえ、花に罪はありませんので!ここでお役に立てていただくのが一番ですわ!もし飾るのは縁起が悪いという事でしたら売っぱら、いえ換金して困っている方の役に立ててくださいませ!」
と凄い迫力に呑まれた司祭は気付いたら受け取ってしまっていた。

いち司祭には決めかねると教会の長でもある大司祭に報告すると、もういい年の教会長は眉間に皺を寄せた。
「そうか……教会側からみても稀にみる酷い式だったからな。ご令嬢も思うところがおありなのだろう、全く王家もこの日は他の祈りの間も立ち入り禁止にしろだの、式の招待客以外は一旦外に出せだの無理難題を押しつけた挙句がこれとは」
「仰るとおり……ご令嬢の心痛が如何ばかりかと」
「だが令嬢の言う通り、花に罪はないからな。一部を大祈だいきの祭壇に飾っておやり。残りは売らせてもらって貧民への食事代とさせてもらおう」
「かしこまりました」

“大祈の祭壇“とは、文字通りこの教会の数ある祈りの間でも一番大きな広間である。
この教会で結婚式や儀式などを行う場合、よほどの小規模や事情がない限り、ここが使用される。
式典などの予定がない時は、一般市民がいつ祈りにきても構わないように開放されているうえに、結婚式を挙げる余裕がなく、ただ誓いを立てに来る市民たちが使う祭壇でもある。
小祈の間は、大祈の間が開放されている間は閉じられていることが多いのだ。
因みに彼らの結婚式が行われたのは特別なVIPのみが使用を許される“司祭の間“であり、特別な大祭以外は閉じられた広間での出来事だった。
あれだけの人数の招待客の面前で、しかも王宮からの使者が警備を無理矢理押し通って入り込んだため、内外問わずかなりの騒ぎを引き起こした。
しかも結婚式の礼装のまま騎馬で慌てて走り去った新郎を多くの者が目にしていた。
本来なら、二人が寄り添って教会から出て、屋根のない花で飾られた馬車で走り去る新婚夫婦を通りすがりの者たちまで祝福し、幸せに包まれて終わるのが結婚式というものなのに、花嫁がドレスを脱いで簡素なドレスに着替え、ひっそりと教会を後にするなど前代未聞である。
「全くもって、あり得ん」
教会のトップとしてとして海千山千の者と駆け引きをすることもあるが、基本人の幸せを願ってやまない善人(しかも彼が教えを受けたのはペンタスである)の大司祭はすぐに本国ペンタスに報告し、ロード伯夫妻と王家の動向を見守った。

中でも、ブーケを置いていったと言うことはすなわち“ロード伯夫人“となることを拒否したに等しいマリーローズ嬢の動向を。
あのブーケを売って得た収益は二週間、貧しい市民の腹を満たした。
出来るだけ長く枯れない処置を施された花は三週間祭壇を飾り、結婚式は無理でもせめて祭壇で愛の誓いをとやって来る者たちを感激させた。
真っ白に咲き誇る花は滅多に見かけることのない見事さで光り輝き、大祈の間を彩った。
そしてペンタスの教えが行き届いている司祭たちは、市民に食事を提供する時も、大祈の祭壇を訪れる者にも、
「このお食事代はマリーローズ・セントレイ伯爵令嬢から寄付していただいたんですよ」
「この祭壇の美しい花はセントレイ伯爵家のマリーローズ様が寄付してくださいました」
と必ず伝え、それを聞いて最初は「ほぅ……」だけだった市民たちも、彼女が教会に置き去りにされた悲劇の花嫁だと知ると、
「なんと、そのような優しいご令嬢がおいたわしい……」
「王家も酷いことをするものだ」
「その花婿も碌なもんじゃないね!」
と静かにマリーローズ及びセントレイ家の評価があがり、王家の心象が悪くなっていったことを、最初はロシエルさえ気がつかなかった(そして気付いた後は大いに利用した)。

そして今、「白い結婚として離縁手続きを!」と両家の夫人を従えてやってきたマリーローズにとっておきのお茶と茶菓子を差し出している彼こそ、ブーケを受け取った件の司祭その人だった。
喚いて抵抗するアベルに冷たい目線を送りながら、離婚を成立させて去っていくマリーローズ嬢の後ろ姿に「お幸せに」と祈ったことと、司祭をして罰当たりではあるが「離婚成立、万歳!」と大司祭とその夜ハイタッチして喜びあったのは生涯の秘密である。











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感想 791

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みんなの感想(791件)

nahuto
2025.12.31 nahuto

オススメから来ました。
最終的にこうなったか~っと、納得しつつ楽しませてもらいました。ありがとうございます。(^.^)(-.-)(__)
可能なら、何百年後に彼らと滅んだ?国の歴史書みたいな感じのアフターがみてみたいなーと思います。

解除
nahuto
2025.12.31 nahuto

オススメから来ました。
最終的にこうなったか~っと、納得しつつ楽しませてもらいました。ありがとうございます。(^.^)(-.-)(__)
可能なら、何百年後に彼らと滅んだ?国の歴史書みたいな感じのアフターがみてみたいなーと思います。

2026.03.01 詩海猫(8/29書籍発売)

遅くなりましたが、感想ありがとうございます!
国が滅んだ過程自体はふんわりと脳内にある程度なので、歴史書みたいなアフター……難易度高いですね(^^;)
降りてきたら書いてみたいと思います。それまでちょこちょこ覗いてくださるとありがたいです(笑)

解除
元鞘ドアマット鬱展開メンヘラ無理派です
ネタバレ含む
2025.09.03 詩海猫(8/29書籍発売)

速攻の購入と感想ありがとうございます!
短編に関してはロシエルの器の大きさをわかっている二人が滅多にテンパることのない彼の表情を引き出してやろうという確かに子供っぽい理由ではありますが、問題になることはないとわかっているからこそでもあります。
ペンタスの王族もセントレイ伯爵兄妹を気に入っているので何かあればフォローに入りますし、問題にはならないと確信しての行動でしたが省いた部分も多々あるため、読後感が良くなかったとのこと、申し訳なかったです。
であれば(私に限らず、サイトにある作家さんの有料話を1話購入する必要はありますが)レジーナブックスwebサイトのみの短編の方が読後感は好んでいただけるかもしれません。よろしければ是非チェックしてみてください!

解除

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