ふざけんな! と最後まで読まずに投げ捨てた小説の世界に転生してしまった 旦那様、あなたは私の夫ではありません

詩海猫(8/29書籍発売)

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連載

アンサー編 彼女が死んだ後 4(原作 セントレイ伯爵家と王家)

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お待たせして申し訳ありません、11月中という約束だったので本日中に完結します(笑)
事情がありましてm(_ _)m
この先も視点がころころ変わります、お覚悟を!!


*・゜゚・*:。. .。:*・゜゚・*



誘拐の後遺症とでも言えばいいのか、王女殿下は助けた際、子供のように俺に飛びつき、
「ああ!約束通り助けに来てくださったのですね」
と誰かと俺を取り違えているようだった。
国王陛下によると、王女殿下には幼い頃に約束した相手がいたのだそうだ。
誘拐の最中俺に助け出されたことで記憶が混同し、飛びついたのも一時的に幼児退行してしまったのだろうということだった。
「なんだ、そういうことか」
と納得したが、王女殿下はその後も急なパニック発作のような状態に陥り、俺を呼ぶようになった。

側付きの侍女がいくら落ち着かせようとしても、「あの騎士は王女殿下と幼い頃に会った方ではありません、護衛騎士です」と言い聞かせても、俺の姿を見るまで発作が止まることはなかった。
「その約束の相手をここにお呼びしたらどうか」
と進言したが、相手はこの国の者でなく、外でたまたま出会ったどこかの令息だったのだそうだ。
「エルローゼは当時まだ三歳だったし、正式に約束を交わしたわけではない……其方と取り違えていても無理はあるまい。時間が経てば徐々に落ち着いて来るだろう。それまでエルローゼの側にいてやってくれ。君の階級をすぐに上げさせよう。こちらも無理を通すのだ、他に何か欲しいものがあれば言ってくれ。その代わり_、」



__王女が望んだ時は、何をおいても駆けつけてやってくれ。

落ち着いたら王女はいずれ、他国へ嫁がせる。
それまで、王女の発作の件を外部に漏らすことは許さぬ。



*・゜゚・*:.。..。.:**:.。. .。.:*・゜゚・*


「そんな約束事が_…」
ハンナは息を呑む。
「王女も徐々に落ち着き、アベルが幼い頃知り合った令息とは別人だと認識してはいた。だが、時折起こる発作は頻度は減ったもののおさまらず、アベルの立ち位置は変わらなかった。王女宮の誘拐や襲撃がなくなったわけではなかったからだ。秘密を知る人間は少ないほど良いからな。だが、王女が十二歳になる頃には別の問題が浮上した」
「“未婚の若い騎士が王女殿下に近い位置に侍るのはよろしくない“というお話でしたね?」
「そうだ。まあ本来十二歳だろうが二歳だろうがはなから側におくべきではなかったと思うがな、王女のそばに若い男の騎士など」
苦々しげに言うダニエルは思い出すだけでも忌々しい、と言う顔を隠さない。

この話の先に想像がついたハンナも、苦々しげに眉を顰めた。
  


王女の筆頭護衛騎士というのは、肩書きだけ見れば華々しいがアベルの任務は、「王女が発作を起こしたら速やかにその場に駆けつけ、宥めること」であり、本来の騎士の任務からは逸脱していた。
だが、王女の襲撃にはただの破落戸ならず者も時折混じっていたので、取り押さえるのは然程難しくなく、アベルの実績は着実に積み上がって行った。
いつでも駆けつけられるように通常の業務を割り振れないものの、側から見れば目覚ましい活躍だったといえよう。
__そのせいでいらぬ恨みも買い、自邸が襲撃のターゲットになったわけだが。

発作を起こした時にアベルが駆けつけると王女は縋りついてくるので、アベルはただそれを受け止め、優しくあやすしかなかった。
トラウマを抱えた幼子のような王女に妹のような庇護欲を抱いていたのは確かだが、アベルは“任務“だと割りきっていた。
マリーローズに抱く感情と王女に対するそれは全く違うものだと、この頃には自身で気がついていた。

そんな頃、
「アベルよ、其方、結婚したい相手はいるか?」
と国王陛下に聞かれた。
「え いや_…」
まだまともに言葉さえ交わせていない__どころか、彼女がセントレイ伯爵家の令嬢だと自分は最近知ったばかりだ。
「私が良家の令嬢を紹介してやっても良いぞ?」
「い いえ!それには及びません!私には心に決めた方がっ!」
とつい、口走ってしまった。
「ほう、そうだったのか。それはすまなかった…_で、どこの令嬢だ?」
「いえ、まだ約束どころかまともに言葉さえ交わせていないのです。慎ましい令嬢で、騎士団の練習に差し入れと称して突撃してくる一団の中にはおりませんので」

「ほうほう、ではどこの令嬢かわからないのか?」
「いえ、伯爵家の令嬢だということだけは_…」
「伯爵家の令嬢か!良いではないか!だが君には継ぐ爵位がなかったのだな…_ふむ、王女の筆頭護衛になってもう一年、、そろそろよかろう。其方に騎士伯の位を授ける。一ヶ月後に叙勲式を行う。其方の結婚はその三ヶ月後でどうだ?」
「はっ、謹んで_…は?」
結婚も何も、私とセントレイ伯爵令嬢はまだ友人ですらないのだ。
「陛下、恐れながら、それは些か急すぎるかと」
「ふむ、そうか?そうだな、だがアベルよ。其方がうかうかしているうちに他の令息と婚約を結んでしまったらどうするのだ?」
「!それは_…、」
考えたことがなかった。
いや、むしろ適齢期の令嬢にそういう相手がいないほうが珍しいのだ。

「其方が望むなら、余が纏めてやっても良いのだぞ?」
「ならば陛下、セントレイ伯爵家のご令嬢が他家の令息との婚姻を望んだら、許可せず引き延ばしていただけますか?」
「できなくはないが、双方に何の落ち度もない場合その手は長くはもたんぞ?」
「っ、それは_…、」
確かにそうだ。彼女には何の瑕疵もないのだ。

「まあ、良い。叙勲式で切っ掛けを作れば良かろう」
そう言って叙勲式で国王の差配もあって初めて会話をした二人だったが、それからひと月もしないうちに結婚の王命が下った。
「王女の嫁ぎ先にと考えている国が、君とエルローゼの噂を聞いてよく思っていないらしい。それに、マリーローズ嬢に縁談の話があるそうだ」
と言いくるめられたアベルが、
「では彼女と婚約させてください」
と願ったのを幸いに、
「あいわかった。ただの婚約では弱かろう、婚約期間を設けて王命での婚姻とさせよう」

*・゜゚・*:.。..。.:**:.。. .。.:*・゜゚・*

__と言うのが王命での婚姻の経緯だったが、それをセントレイ伯爵家が抵抗なく受け入れたのはマリーローズの淡い想いに家族が気付いていたせいでもある。
マリーローズの両親はこの頃の貴族には珍しい恋愛結婚だったし、子供たちにもその自由を与えたいと言う想いから婚約者を充てがうようなことはしなかった。

結婚式の惨状の後も、マリーローズが何かSOSを出せば動けたろうが、マリーローズは表向きこれといったアクションを起こさず、実家に何も言って来なかった為に最悪の結果を招いた。

なぜなら、結婚後も“何をおいても王女の非常事態には駆けつける“と言う条件はそのままだったからだ。
婚約期間中はできるだけ呼び出さないよう努めた。
不誠実だと婚約破棄されては元も子もないので、出来るだけセントレイ伯爵家に通う時間を作らせるよう騎士団長に指示し、順調に二人の距離は近くなった。
毎日定期報告という体で登城して王女の元に顔を出す形でも王女の発作は起こらず、安定していた__ところが、結婚式が始まってすぐに、今までにないレベルで王女は発作を起こし、急遽アベルが呼び出された。

アベルが駆けつけた事で安堵して眠りについた王女だったが、うわ言でアベルを呼び、度々目を覚ますので暫く帰るのを許されなかった。

この件で既にマリーローズの心が壊れ始めていたことに気づかないまま、アベルは王女の手を握り続けていた。


*・゜゚・*:.。..。.:**:.。. .。.:*・゜゚・*


「__許せません。お嬢様は、物ではないのですよ」
「当然だ、許す必要はない。私たちだって許してなどおらん」
あの騎士の態度を見るにマリーローズに情がなかったわけではないだろうが、それは許す理由にはなり得ないし、今マリーローズの代わりに怒れるのはハンナだけだ。
「俺たちも自分が許せないよ。もっと早く、あのろくでなしの元から無理矢理にでも連れ戻していれば__」
「ロシエル様……」
「それは私たち夫婦も一緒よ。そこまで追い詰められていたなんて……あんな約定など無視してあの子に教えてあげれば良かった……!」
「あの王命通り結婚させてしまった私たちに言えた事ではないが、ロード伯にもう少し常識が足りていれば…_尤も、一番厚顔無恥なのは王家だがな」



マリーローズの悲劇的な死が国中に広まる前に、王女は前々から話があったという他国の王家に急遽嫁いでいた。

マリーローズとアベルが結婚して二年、十三だった王女は十五になっていたのでギリ無理な年齢でもない。
兄のように慕っていたアベルの奥方の死に、落ち着いてきた王女がショックを受けないよう配慮して、何も知らせず国王が嫁がせたのだ。
水面下で話が進んでいたのは本当なので相手国は驚いていたが無事正妃として受け入れてくれて安堵していたところへ、アベルが騎士伯を返上、辞職を届け出て出奔したとの報告が入った。

数日後、王は知らなかったが「色々ありえません」と騎士団長も職を辞し、その後も職を辞する者が相次いだ。
筆頭はセントレイ伯爵家で、彼らの近親者、もしくは親しく付き合っていた者から随時辞めていってるらしい。
「無言の抗議といったところか…_痛ましいな」
報告書を見てため息を吐く国王はここに至っても事態の深刻さを理解していなかった。

マリーローズの葬式からして、無言のはずがないのだ。
葬列の場での騒ぎは瞬く間に拡散し、人々は『王女と騎士の淡い恋物語』が『王家と夫に殺された悲劇の令嬢』の話にすり替わった。






*・゜゚・*:.。..。.:*・*:.。. .。.:*・゜゚・*


*お知らせ*

スマホが限界を迎えて突然ブラックアウトしてしまう現象が続きまして、でも欲しい機種の在庫がどこにもなくアワアワする日が続いてましたが漸く明日には機種変ができそうです。

ですがアプリが全て正常に移動してくれるかわからないのと、自分で今月中!と決めていたので本日複数話投稿し最終話まで持っていこうと思います。
直しきれていない部分はご容赦を🙇‍♀️💦
その間、一旦感想欄を閉じさせていただきますが最終話投稿と同時に解放しますので、よろしくお願いします!




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