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プロローグ
しおりを挟む25日、それは平凡な会社員には、
「給料日だー!欲しかった服買おう!」
「ちょっと高級なランチ行こう!」
といったささやかな幸福から、
「よかった、家賃払える……」
「保険料高すぎ……ローンもあるのに」
と言う悲哀の籠ったものまで悲喜こもごもである。
私は独身貴族を謳歌しているアラサーなので、どちらかといえば前者に入る。
「今日はデパ地下でちょっといいお惣菜買って帰ってバスボム入れてバスタイムして晩酌しよう」
と考えているレベルの。
その為にも、残業なしで速やかに帰宅すべく液晶画面に向かったところで、
「香澄せんぱーい、まだお昼休み残ってるのにもう仕事始めるんですか?」
と後輩の彩花が声をかけてきた。
私より五年後に入社した子で、まだ二十五才だが堅実な仕事をする。
名前は彩花だが、派手なメイクは好まないようで最低限なプチプラメイクで整え、化粧品にお金はあまり使わない印象だ。
「あぁ、、今日はちょっと早く帰りたくてね」
「先輩、元々仕事早いのに」
「念の為よ。終業間近に何かあったら目も当てられないでしょ」
「うひゃー、さすが先輩!!じゃあ私も今日は早く帰りたいんでもう始めよーっと」
とデスクに戻る彩花をみて、「相変わらず、掴みどころのない子だわ」と内心で呟きつつ、自分もパソコンに向き直った。
入社時私が教育を担当した事もあるだろうが、妙に懐かれているのだ。
彩花は人付き合いが悪いわけではないが、
「今度の休み、⚪︎⚪︎ホテルの日帰りプランで女子会しない?」
「え?行く行く!!あそこ、ランチ超美味しいんだよね!!」
「ブランドコスメのお試しし放題もつくんだよ~」
「えー凄い、めっちゃいいじゃん!」
といった感じの(あくまで私から見ると)キャピキャピしたーーというか意識高い系女子とでも言うのだろうかーーな集団には、距離をとって同調しない。
だがランチをひとりで行くこともなく、その辺りは上手くバランスを取っていた。
仕事終わり、誰より仕事を早く終えた私と彩花は、
「じゃ、先輩、お疲れ様でーす!」
「お疲れさま。凄い気合だけどどこか行くの?」
「んっ、ふっふ……実はすっごく大切な用事があるんです……」
「そ、そう……頑張ってね」
何を頑張るのかわからないが、彩花の異常な気迫にこれ以外かける言葉が見つからなかったのだ。
「はい!先輩もお元気で……ととっ!いえ、では!」
“ととっ“のあたりで慌てて口を覆った彩花は踵を返して目の前から去っていった。
いつも通りの、会社終わりの光景。
そう、思っていたのにーーその日以来、彩花は会社に来ることはなかった。
*・゜゚・*:.。..。.:*・*:.。. .。.:*・゜゚・*
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