〈完結〉八年間、音沙汰のなかった貴方はどちら様ですか?

詩海猫(9/10受賞作発売中!)

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「ふむ、そうですな。年齢を指定して集めるとなるとどこか良家のご令嬢のお付きや家庭教師を探しているといった名目ですかな?」
「ご協力くださるのか……?」
ディーンの無茶振りとも言える提案にすぐ様頷きを返す領主にエドワードは驚いたように返す。
「もちろんですとも、今この国に平和があるのは貴方がた騎士団のお陰ですからな。さりとてお探しのご令嬢も何か事情があれば召集をかけたところで応じないこともあり得ますが__」
「ええ、ですのでそうですね、そういった“漏れ“が生じないように同じ年代の女性同士声を掛け合ったり周囲も行くのを勧めてしまうような状況が作り上げられれば__」
「褒美が必要ということか?」
「褒美とまで行かなくても、そうですねいっそ奥方様が見つかった時にお側に仕える女性探しとしてはどうでしょうか?団長が陛下から賜った館は大層立派なものですが人員も揃っておりませんし」
エドワードは国王からフェンティ伯を賜ると同時に、王城に近い一角に館を「おまけだ」と言って与えられた。

フェンティ侯爵家に戻る気は全くなかったが、王城に立派な個室を与えられているエドワードはそれで不自由はなかった。
だが、アルスリーアを迎えるにはちょうど良いと思って貰い受けた。
国王は不利な戦況をひっくり返し、自国を勝利に導いた若き将軍をいたく気に入っていたからだ。
いざ賜ってみたら迎えるべき奥方は姿を消していたわけだが。

「それは、構わないが……」
不安そうに言葉を切る姿はただの恋する青年で、ディーンは苦笑する。
彼も考えているのだろう、最悪の想像を。
「そういう理由なら反対も上がらないでしょう、我が家に勤める女性たちにも声を掛けて回るよう言いましょう」
「そうね、我が家で一番条件に近いと言えばイリューシアかしら?」
「そのイリューシアという女性は?ガゼル子爵のところはお子は確かご嫡男一人であられたと記憶しておりますが__」
「あゝ、その嫡男の家庭教師の先生です。剣術や体術などは専任の教師がいますが座学は彼女に一任しております」
「ほう、それは……若くして優秀な方なのですね、学園はどちらを卒業されているのですか?」
ディーンが興味を引かれて聞くと、
「最終学歴はゼネビア大学となっていましたし、紹介状も立派なものでしたよ。確かに条件に合致しているかも知れませんが彼女は怪しい人物などではありません」
ハワードが心外そうに答えると、
「あ いや、決してそういうつもりでは__アルスリーア様も学園をスキップで卒業されたと聞いているので」
慌てて返すディーンに、
「あゝそういうことですか。確かに彼女も赤い髪に青い瞳ではありますが「何だとっ?!」__」
エドワードが急に凄い形相で詰め寄ったので、ハワードは座っていたソファーから飛び上がりそうになる。

「落ち着いて下さい団長、話が進まないでしょう。申し訳ない、ガゼル子爵」
「いや、どうかハワードとお呼び下さい、どうも貴方がたのような身分の方からそう呼ばれると落ち着きません」
「ではハワードどの、そのイリューシアという女性はいつ頃からこちらにお勤めに?」
「三年前です」
三年前というと、僅かな目撃証言が途絶えた頃だ。
エドワードとディーンは頷き合う。
「その、イリューシア嬢をここに呼んでいただけませんか?」


















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