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「既婚者だと?レベッカは騎士団長であるエドワード殿と結婚すると出て行ったのだぞ?」
「「「………」」」
広間の静寂に台詞をつけるとすれば、「お前も知らなかったんかーい!」というところだろう。
「流石親子と言うべきかしら、都合の良い部分しか見ることも聞くこともしない所はそっくりね?」
王妃の突っ込みとも言えない呟きに、サーシャ様はじめ貴婦人方が一斉に頷く。
「最初の書簡で知らせてあったでしょう、フェンティ伯は既婚だと。その後そこの小娘が言い寄った時もフェンティ伯は“国に愛する妻がいるので“と固辞していたはずよ?それをさも既成事実があったかのように振る舞い、更には私の友人として招待したフェンティ夫人を侮辱するわ離婚を迫るわ……招かれざる客の分際でなんて図々しい!」
既に“王女“でも“お嬢さん“ですらなくなっている。
うわぁ、王妃さま超怒ってる……と身が竦んだのは私だけではなかったらしく、広間にいる貴族の殆どが呑まれたように固まったり、腕をさすったりしている。
寒気(か怖気)でも感じてるらしい。
自分はあまり感じないが、エドワードはどうだろうと背後から伺うと涼しい顔をしている。
どうやらさっきまでの殺気は王妃様の一喝で収まったようだ。
「貴方の国では国王からの書簡ひとつまともに読めないの?それとも読んでもすぐ忘れてしまうのかしら?」
一国の王をニワトリ扱い……
「そ、それは、その!手違い、そうだちょっとした手違いだ!それで私への報告が遅れたのだ。すまなかった。だからレベッカも「あら?貴方と我が国の陛下は直に書簡をやりとりする間柄だとあちこちで触れ回っているではありませんか、なのにご自分で封すら開けず臣下に任せっきりにしているの?」……ぐn」
王妃様の鋭すぎる切り込みに、ミレスナ王は蛙の潰れたような声で押し黙る。
「まあ知っていたか否かは今や関係ありませんわ。問題はその小娘がいきなりフェンティ夫人を捕まえて離婚を迫ったこと、またその為にこの城の下仕えのメイドを買収したり下級兵士を誘惑したりしたということですわ。これは我が国への間諜行為、ひいては宣戦布告ととられても仕方がありません」
え、買収じゃなく誘惑?!
「ゆ、誘惑だと?!」
目の曇ったミレスナ王もこのことは寝耳に水だったようで、「どういうことだ、レベッカ?!」
とまだ尻もちをついたままの娘に詰め寄る。
「誘惑とはどういうことだ!お前はまだ未婚の王女なのだぞ?!」
間諜行為とか宣戦布告云々よりそちらのほうが重要らしい。
いや、自分の国の心配しろよ?
「ゆ、誘惑なんてしてないわ!下級兵士が私に想いを寄せてきたからちょっとだけ答えてあげて下僕にしただけよ!」
“ちょっとだけ“って、__どこまで?
しかも“下僕にした“って、他国の兵士をしちゃまずいのでは?
ていうか王女なのに尻軽すぎでは?
さまざまな心中突っ込みが飛び交うなか、愚かな王女の叫びは止まらない。
「その下僕が勝手にやったことよ!私は何も悪くないわ!」
いやいや、アナタ思いきり宣言してたじゃない、「この為に兵士やメイドを買収しておいた」って。
売春紛いのことまでしてるとは思わなかったけど。
代わりにその兵士が来てた(そもそもその男の身分では入り込めなかったとは思うが)ならともかく、あの時現れたのはコイツひとりだったので無理がありすぎる。
だが、流石親子と言うべきかミレスナの王は、
「そ、そうか。ならば問題ないな、下級兵士が勝手にやったことだからな!」
と今まで詰め寄っていたことなど忘れたように娘の手を取って立たせ、
「王妃陛下、こういうことです。責任はその下級兵士にある」
と大真面目に言ってのけた。
ミレスナ、大丈夫??
「よくこんなのが王で保ってるわね、ミレスナは」
その場にいた全員の意見を象徴するように王妃が言い、「お疲れ様です」と言いたくなったが、隣にいた国王は気まずげに顔を伏せるだけで何も言わなかった。
「「「………」」」
広間の静寂に台詞をつけるとすれば、「お前も知らなかったんかーい!」というところだろう。
「流石親子と言うべきかしら、都合の良い部分しか見ることも聞くこともしない所はそっくりね?」
王妃の突っ込みとも言えない呟きに、サーシャ様はじめ貴婦人方が一斉に頷く。
「最初の書簡で知らせてあったでしょう、フェンティ伯は既婚だと。その後そこの小娘が言い寄った時もフェンティ伯は“国に愛する妻がいるので“と固辞していたはずよ?それをさも既成事実があったかのように振る舞い、更には私の友人として招待したフェンティ夫人を侮辱するわ離婚を迫るわ……招かれざる客の分際でなんて図々しい!」
既に“王女“でも“お嬢さん“ですらなくなっている。
うわぁ、王妃さま超怒ってる……と身が竦んだのは私だけではなかったらしく、広間にいる貴族の殆どが呑まれたように固まったり、腕をさすったりしている。
寒気(か怖気)でも感じてるらしい。
自分はあまり感じないが、エドワードはどうだろうと背後から伺うと涼しい顔をしている。
どうやらさっきまでの殺気は王妃様の一喝で収まったようだ。
「貴方の国では国王からの書簡ひとつまともに読めないの?それとも読んでもすぐ忘れてしまうのかしら?」
一国の王をニワトリ扱い……
「そ、それは、その!手違い、そうだちょっとした手違いだ!それで私への報告が遅れたのだ。すまなかった。だからレベッカも「あら?貴方と我が国の陛下は直に書簡をやりとりする間柄だとあちこちで触れ回っているではありませんか、なのにご自分で封すら開けず臣下に任せっきりにしているの?」……ぐn」
王妃様の鋭すぎる切り込みに、ミレスナ王は蛙の潰れたような声で押し黙る。
「まあ知っていたか否かは今や関係ありませんわ。問題はその小娘がいきなりフェンティ夫人を捕まえて離婚を迫ったこと、またその為にこの城の下仕えのメイドを買収したり下級兵士を誘惑したりしたということですわ。これは我が国への間諜行為、ひいては宣戦布告ととられても仕方がありません」
え、買収じゃなく誘惑?!
「ゆ、誘惑だと?!」
目の曇ったミレスナ王もこのことは寝耳に水だったようで、「どういうことだ、レベッカ?!」
とまだ尻もちをついたままの娘に詰め寄る。
「誘惑とはどういうことだ!お前はまだ未婚の王女なのだぞ?!」
間諜行為とか宣戦布告云々よりそちらのほうが重要らしい。
いや、自分の国の心配しろよ?
「ゆ、誘惑なんてしてないわ!下級兵士が私に想いを寄せてきたからちょっとだけ答えてあげて下僕にしただけよ!」
“ちょっとだけ“って、__どこまで?
しかも“下僕にした“って、他国の兵士をしちゃまずいのでは?
ていうか王女なのに尻軽すぎでは?
さまざまな心中突っ込みが飛び交うなか、愚かな王女の叫びは止まらない。
「その下僕が勝手にやったことよ!私は何も悪くないわ!」
いやいや、アナタ思いきり宣言してたじゃない、「この為に兵士やメイドを買収しておいた」って。
売春紛いのことまでしてるとは思わなかったけど。
代わりにその兵士が来てた(そもそもその男の身分では入り込めなかったとは思うが)ならともかく、あの時現れたのはコイツひとりだったので無理がありすぎる。
だが、流石親子と言うべきかミレスナの王は、
「そ、そうか。ならば問題ないな、下級兵士が勝手にやったことだからな!」
と今まで詰め寄っていたことなど忘れたように娘の手を取って立たせ、
「王妃陛下、こういうことです。責任はその下級兵士にある」
と大真面目に言ってのけた。
ミレスナ、大丈夫??
「よくこんなのが王で保ってるわね、ミレスナは」
その場にいた全員の意見を象徴するように王妃が言い、「お疲れ様です」と言いたくなったが、隣にいた国王は気まずげに顔を伏せるだけで何も言わなかった。
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