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前王の崩御で予定より早く即位した国王は、一旦国政が落ち着くとアデリアへの留学を望んだ。
実際、クロイツ学園には各国から王族貴族子弟の留学も多く、国同士の繋がりを持つ場としての役割もあったため、学園側も既に卒業年齢を過ぎているにも関わらず特例として短期留学を認めた。
実際当時のミレスナ王は美男子であり、成績も後輩の面倒見も良く、為政者なだけあって弁も立つため信奉者も多く常に人に囲まれていた。
男女問わず。
そう、男女問わずである。
クロイツ学園は共学なので、友人として付き合う分には問題ない。
だが、ミレスナの王は国に妻子がいるにも関わらず高等学年から入学してきたヘレネーに恋をしてしまったのである。
王妃はミレスナの公爵家の出であり、第一王子を産んだばかりだというのに留学したいという国王の我が儘を叶え、国王代理までしていたにも関わらず、である。
ヘレネーは黒髪黒目に泣きぼくろが神秘的な美少女であったらしい。
多くの男子生徒が魅了され、数多くの婚約・縁談をぶち壊し、それが遠因で幾つかの家がお取り潰しになっても、そんなことは知らないと微笑む女神(悪魔の間違いでは?)のような女性だったらしい。
そんな彼女を自国に連れ帰りたいミレスナ王だったが、当然王妃とその実家が許すはずもない。
そこで彼らは最も恥知らずで手っ取り早い方法を選んだ。
所謂デキ婚である。
国王の子を懐妊してしまえば、側妃として迎えなければいけなくなることを見越して事に及んだ__らしい。
このことに呆れた王妃は即離婚を決意し、だが「王太子には第一王子が必ず立つこと」を条件のひとつとして王太子を全面的にバックアップすることで合意し王妃の座を退いた。
ヘレネーがその時孕んでいたのが第二王子、後に生まれたのがレベッカであり、国王はヘレネーとの子だけに愛情を注ぎ、第一王子であるカリムには「次期王ならば当然」とばかりに政務を押しつけた。
当然王妃の実家との仲は最悪だが、良かったこともある。
ヘレネーの際限ない贅沢で傾いていた財政をカリムに一部実権が移ったことで、そこそこ建て直せたのだそうだ。
ヘレネーが亡くなった後はレベッカの我が儘が炸裂していたが、レベッカが散財した分は国王及び第二王子の予算から天引きしていたのだそうだ。
ひと通り聞いたアデリアの国王は、
「其方、そこまでして……潰されて良いのか?」
「ええ、母も言っていました。父の傲慢さもレベッカの我が儘も“自分は王族であるという意識ゆえだと。だったらこんな王室はいっそ潰されてしまった方がいい“と。でなければ民が気の毒だと」
(“前“王妃様は、しっかりした方だったんだな……)
「ふむ。そういうことなら良かろう、ジークリード」
「はい」
「ミレスナの王室の解体に関しての全権をお前に一任する。カリムの仮即位でも摂政委任でも好きにするが良い」
「!ありがとうございます、ち、いえ、国王陛下」
「感謝いたします、国王陛下」
王太子二人が頭を下げる。
「だが、王とレベッカへの沙汰はこちらでさせてもらう」
「どのようにでも」
「元ミレスナ王はとりあえず逮捕・投獄のうえ処罰はミレスナの国民投票に委ねることとする。元王女レベッカは八年間の無償労働の後、パネキラ島の修道院送りとする」
パネキラ島は離れ小島であり、実質脱出不可能の収監所のようなものである。
「なっ……」
「そんなっ!」
愚かなピエロ二人から悲鳴があがった。
実際、クロイツ学園には各国から王族貴族子弟の留学も多く、国同士の繋がりを持つ場としての役割もあったため、学園側も既に卒業年齢を過ぎているにも関わらず特例として短期留学を認めた。
実際当時のミレスナ王は美男子であり、成績も後輩の面倒見も良く、為政者なだけあって弁も立つため信奉者も多く常に人に囲まれていた。
男女問わず。
そう、男女問わずである。
クロイツ学園は共学なので、友人として付き合う分には問題ない。
だが、ミレスナの王は国に妻子がいるにも関わらず高等学年から入学してきたヘレネーに恋をしてしまったのである。
王妃はミレスナの公爵家の出であり、第一王子を産んだばかりだというのに留学したいという国王の我が儘を叶え、国王代理までしていたにも関わらず、である。
ヘレネーは黒髪黒目に泣きぼくろが神秘的な美少女であったらしい。
多くの男子生徒が魅了され、数多くの婚約・縁談をぶち壊し、それが遠因で幾つかの家がお取り潰しになっても、そんなことは知らないと微笑む女神(悪魔の間違いでは?)のような女性だったらしい。
そんな彼女を自国に連れ帰りたいミレスナ王だったが、当然王妃とその実家が許すはずもない。
そこで彼らは最も恥知らずで手っ取り早い方法を選んだ。
所謂デキ婚である。
国王の子を懐妊してしまえば、側妃として迎えなければいけなくなることを見越して事に及んだ__らしい。
このことに呆れた王妃は即離婚を決意し、だが「王太子には第一王子が必ず立つこと」を条件のひとつとして王太子を全面的にバックアップすることで合意し王妃の座を退いた。
ヘレネーがその時孕んでいたのが第二王子、後に生まれたのがレベッカであり、国王はヘレネーとの子だけに愛情を注ぎ、第一王子であるカリムには「次期王ならば当然」とばかりに政務を押しつけた。
当然王妃の実家との仲は最悪だが、良かったこともある。
ヘレネーの際限ない贅沢で傾いていた財政をカリムに一部実権が移ったことで、そこそこ建て直せたのだそうだ。
ヘレネーが亡くなった後はレベッカの我が儘が炸裂していたが、レベッカが散財した分は国王及び第二王子の予算から天引きしていたのだそうだ。
ひと通り聞いたアデリアの国王は、
「其方、そこまでして……潰されて良いのか?」
「ええ、母も言っていました。父の傲慢さもレベッカの我が儘も“自分は王族であるという意識ゆえだと。だったらこんな王室はいっそ潰されてしまった方がいい“と。でなければ民が気の毒だと」
(“前“王妃様は、しっかりした方だったんだな……)
「ふむ。そういうことなら良かろう、ジークリード」
「はい」
「ミレスナの王室の解体に関しての全権をお前に一任する。カリムの仮即位でも摂政委任でも好きにするが良い」
「!ありがとうございます、ち、いえ、国王陛下」
「感謝いたします、国王陛下」
王太子二人が頭を下げる。
「だが、王とレベッカへの沙汰はこちらでさせてもらう」
「どのようにでも」
「元ミレスナ王はとりあえず逮捕・投獄のうえ処罰はミレスナの国民投票に委ねることとする。元王女レベッカは八年間の無償労働の後、パネキラ島の修道院送りとする」
パネキラ島は離れ小島であり、実質脱出不可能の収監所のようなものである。
「なっ……」
「そんなっ!」
愚かなピエロ二人から悲鳴があがった。
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