<完結済>画面から伸びて来た手に異世界へ引きずりこまれ、公爵令嬢になりました。

詩海猫(8/29書籍発売)

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断罪されるべきはどちらでしょう?

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あのサロンで初めて彼女を見た時どうしても気になったのだ、どう見ても分不相応なアクセサリーを身に付けていたことに。
あれはどう見ても恋人や婚約者でなければ贈るのがおかしい高価なものだ__だとしたら、その予算はどこから?
考えられるのが婚約者への贈り物と称して流用している事だ。
王子本人の個人資産なら問題はないがーーもし違うのだとしたら?
アクセサリーのデザインから店の見当はついたので店に出向き、デザイナー本人に確かめた。
「ねぇあなた?最近、殿下から注文を受けなかったかしら?……例えば人の名前を一文字だけ間違えて刻んだアクセサリーとか」
そう切りだせばデザイナーは目に見えて狼狽し、次いで真っ青になった。
それを見て私は確信した。
「あぁ、やっぱり」
と。
リカルドはフェリシナに高価な贈り物をする為に私の名を利用したのだ。
「せっこ……」
心底呆れた。
そりゃぁ、フェリシアも嫌になるわよね……いくら顔が良くたって。
いや、実際顔はカッコ良くてぶっちゃけ私の好みだけどさ?中身が残念すぎる……
そう思いながらデザイナーの供述調書を取った。
勿論王太子の命令には逆らえなかった、〝デザイナー本人の意思ではないので彼に罪はない〟という部分を強調して作成しサインをさせ、実際の注文と納品の記録を差し押さえ__それを携えて国王夫妻との交渉に臨んだ。
婚約者への費用をそんな手で横流ししていると告げられた国王は頭を抱えて唸り、王妃からは謝罪された。

だから、王妃教育を休む事も許されたし、もしこのままリカルドが態度を改めなければ破棄して良いとの言質も取った。
私的には公爵家の面子などどうだっていいし第一フェリシアがここまで追い詰められ、苦しんでいることに全く頓着せず中身が違ってるのに未だに疑問ひとつ感じない連中だ、虞ってやる必要はないーーもちろん王子にも。

「だから__私が贈ったドレスを要らないと言って返してきたのか?」
に贈られたものなど要りませんわ」
呻く様に言ったリカルドの言に驚いたのは公爵はじめフォルトナ一家だ。
父公爵に夫人である母、リカルドの側近として仕える上の兄オルドウィンに、近衛として頭角を現し始めている下の兄ウィルソンもこの場には来ておりフェリシアとの仲は悪くはなかったーーが良くもなかった。
__つまり、彼等も知らなかった。
フェリシアが妃教育を休んでる事も、ドレスを送り返した事も。
「フェリシア!どういうことだ!」
「シア!どういうことなの?!」
「シア、どういうつもりだっ!」
「君、殿下にほんとにそんな真似をしたのかい?」
口々に責めたてる自称家族に私は冷笑を浮かべる。
「今更ですか?」
これが一緒に暮らしてる家族の会話だと言うのだから、笑える。
今まで発覚しなかったのはつまり、この人達が無関心だったからだ。
だからこそ、フェリシアはいなくなったのに私はここにいるのだ。

冷たく言い放つフェリシアにオルドウィンは初めて違和感を持つ。
「どういうつもりも何も、この件について国王陛下並びに王妃様の許可は得ておりますわ、何か問題がありまして?」
「あるに決まってるだろう、確かに殿下は軽率だったがこんな場で貶めて良い方ではない」
ーー側近としては百点だが、兄としては0点である。
「私が貶められている分には構わないのに?」
学内でも、夜会でも恥をかかされていたのはフェリシアの方だ。
浮ついてるのは、軽率なのはーーリカルドの方なのに。
「そんなことは言ってないよ、けど」
「この場面を引き出したのは他でもない殿下本人ですわ。お忘れですか?子爵令嬢に熱をあげて私へのプレゼントだと言い張って予算を流用したのも、私に執務を押し付けて子爵令嬢と逢瀬の時間を作ったのも、今のこの騒ぎも__全部殿下本人が自らなさったこと。私が何をしたと?」
「何もしなかったのが問題だ。殿下が道を踏み外さないよう導くのがお前の役目だろう」
今度はフォルトナ公爵がしゃしゃり出てきた__何を言っているのだか。
フェリシアは度々窘めて来たのをコイツが聞かなかっただけでしょうが。
第一 、自分とコイツは同じ年だ。
「私、殿下の乳母ナニィになった覚えはないのですが?」
フェリシアはさもおかしそうに笑う。
「なっ…?!」
「__良い機会だから言わせてもらいますけど、まずオルドウィンお兄様は私の現状を知っておられましたよね?なのに王子を諫める事も私を慮る事もなかった、そんな方に今更身内ヅラされたくありません。ウィルソンお兄様もです、殿下の軽率な行いのせいで私がどれだけ王宮の侍女たちに軽んじられていたか多少は知る機会があったはず!なのに何もしなかった!なにより公爵!私が登城しなくなってもうふた月にもなるというのに今初めて知っただなんて、よほど娘に関心がなかったのですわねぇ?」
兄達は、父公爵は瞠目した。
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