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民宿「いさき」 その2
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幸祐はつゆ子が左脚を少し引きずるように歩くのに気がついた。
「左脚、お怪我をされてるんですか?」
「あ…脚ね。昔仕事中に転んで骨折っちゃって。入院したりして治療したけどこんな有様よ。でも痛くはないから仕事に支障はないから、安心してくださいね。」
2階まで上がると、広くてきれいな部屋が準備されていた。奥の障子を開けると、予約サイトに書かれていた、口コミ評判通りの、緑いっぱいの自然の景色が広がっていた。毎日冷たいコンクリートの建物ばかり見ていた幸祐は心穏やかな気持ちになった。
1階で扉のアラームが鳴った。
「主人が戻ってきたみたいですね。呼んできましょう。」
(アラームは故障していなかったのか?)
「予約の佐野さんですね!ようこそ!民宿いさきへ!妻のつゆ子といさきを経営しています。貞夫と申します。よろしくお願いします。」
2階まで上がって来た貞夫は、幸祐たちの予約を心待ちにしていたかのように挨拶した。きれいに手入れされた髭が彼をイケおじに見せていた。
「つゆ、注意事項は説明したかい?」
「あらやだ、まだでした。」
「じゃあ、俺から説明しましょう。いさきの周りには森があります。自然豊かですが、野生の動物もたくさんおります。森を散策したいときは必ず俺かつゆ子に言って下さい。」
「クマでもいるんですか?SNSバズりそう。」
危険なものをSNS映えの対象にしようとする龍太郎に幸祐は呆れた。
「それが最近若者がSNSとか目的でクマやハチにちょっかいを出しているみたいなんですよ。それで追いかけられたり、怪我をして戻ってくる。出来れば、動物を見かけても、遠くで静かに見守ってくれませんか?」
「わかりました。」
幸祐は真剣に聞いているが、龍太郎はスマホをいじりながら聞いていた。
「あと特に夜は危険です。動物は夜の方が動きが活発になります。夜は出歩かない方が良いです。起きているのは構いませんが、消灯、門限は11時とさせてもらいます。」
「龍太郎、出来るよな?」
「はーい。」
と龍太郎は適当な生返事をした。
「そして1階にある通路のトイレのすぐ隣の物置き部屋は近づかないで下さい。扉の立て付けが悪くて開きにくいんです。この家も築42年。いずれは改修する予定です。」
龍太郎は立て付けの悪い扉の話を聞いた瞬間、
(開けて絶対に動画を撮ってやろう。)
と考えていた。
「龍太郎!聞いているのか?!」
「あーはいはい。トイレのすぐ隣の物置き部屋の扉は立て付けが悪いから近づかないで下さい、でしょ?」
「すいません…。失礼な息子で…。」
「良いんですよ。みんな大事なお客様なんですから。それじゃゆっくり休んでいて下さい。晩御飯の支度が出来たらお呼びします。」
「何かお手伝い出来ることはあります?」
「何をおっしゃいますか。佐野様はお客様ですよ。ゆっくりされて下さい。準備が出来たらお呼びしますよ。」
つゆ子が急いで1階へ降りていった後、貞夫は幸祐たちに森の散策を薦めた。
「明日朝から良ければ森か川へ行きませんか?確か天気予報は晴れだったはずです。普段見れない動物や植物が見れますよ。」
「良いですね!龍太郎寝坊するんじゃないぞ!」
「はーい。」
とまた生返事。
(俺寝坊したことないじゃん。)
「左脚、お怪我をされてるんですか?」
「あ…脚ね。昔仕事中に転んで骨折っちゃって。入院したりして治療したけどこんな有様よ。でも痛くはないから仕事に支障はないから、安心してくださいね。」
2階まで上がると、広くてきれいな部屋が準備されていた。奥の障子を開けると、予約サイトに書かれていた、口コミ評判通りの、緑いっぱいの自然の景色が広がっていた。毎日冷たいコンクリートの建物ばかり見ていた幸祐は心穏やかな気持ちになった。
1階で扉のアラームが鳴った。
「主人が戻ってきたみたいですね。呼んできましょう。」
(アラームは故障していなかったのか?)
「予約の佐野さんですね!ようこそ!民宿いさきへ!妻のつゆ子といさきを経営しています。貞夫と申します。よろしくお願いします。」
2階まで上がって来た貞夫は、幸祐たちの予約を心待ちにしていたかのように挨拶した。きれいに手入れされた髭が彼をイケおじに見せていた。
「つゆ、注意事項は説明したかい?」
「あらやだ、まだでした。」
「じゃあ、俺から説明しましょう。いさきの周りには森があります。自然豊かですが、野生の動物もたくさんおります。森を散策したいときは必ず俺かつゆ子に言って下さい。」
「クマでもいるんですか?SNSバズりそう。」
危険なものをSNS映えの対象にしようとする龍太郎に幸祐は呆れた。
「それが最近若者がSNSとか目的でクマやハチにちょっかいを出しているみたいなんですよ。それで追いかけられたり、怪我をして戻ってくる。出来れば、動物を見かけても、遠くで静かに見守ってくれませんか?」
「わかりました。」
幸祐は真剣に聞いているが、龍太郎はスマホをいじりながら聞いていた。
「あと特に夜は危険です。動物は夜の方が動きが活発になります。夜は出歩かない方が良いです。起きているのは構いませんが、消灯、門限は11時とさせてもらいます。」
「龍太郎、出来るよな?」
「はーい。」
と龍太郎は適当な生返事をした。
「そして1階にある通路のトイレのすぐ隣の物置き部屋は近づかないで下さい。扉の立て付けが悪くて開きにくいんです。この家も築42年。いずれは改修する予定です。」
龍太郎は立て付けの悪い扉の話を聞いた瞬間、
(開けて絶対に動画を撮ってやろう。)
と考えていた。
「龍太郎!聞いているのか?!」
「あーはいはい。トイレのすぐ隣の物置き部屋の扉は立て付けが悪いから近づかないで下さい、でしょ?」
「すいません…。失礼な息子で…。」
「良いんですよ。みんな大事なお客様なんですから。それじゃゆっくり休んでいて下さい。晩御飯の支度が出来たらお呼びします。」
「何かお手伝い出来ることはあります?」
「何をおっしゃいますか。佐野様はお客様ですよ。ゆっくりされて下さい。準備が出来たらお呼びしますよ。」
つゆ子が急いで1階へ降りていった後、貞夫は幸祐たちに森の散策を薦めた。
「明日朝から良ければ森か川へ行きませんか?確か天気予報は晴れだったはずです。普段見れない動物や植物が見れますよ。」
「良いですね!龍太郎寝坊するんじゃないぞ!」
「はーい。」
とまた生返事。
(俺寝坊したことないじゃん。)
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