また、会いたい… 〜少しずつ見える狂気〜

クマミー

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桃太郎伝説

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 その夜、晩御飯は夫婦が腕をふるって準備してくれた。地元の食材を使った料理だ。幸祐も龍太郎も鮎の塩焼きに舌鼓を打った。
 幸祐は壁の上の方に飾ってある写真が気になった。
「壁の上のところ、写真が飾ってありますね。先代のご家族ですか?」

「ええ、実は私たち一族は退治屋をしておりまして、室町時代に遡ります。桃太郎伝説ってご存知ですか?」

「童話のですか?知っていますが、その桃太郎なんですか??」

「ええ、桃太郎は実在しております。鬼もいました。」

「貞夫さんが桃太郎なんですか!?」

「いや~昔の話ですよ。私は51代目、飾りきれてない写真もございます。ちなみに、もう息子に桃太郎の名を譲りました。」
貞夫は照れ臭そうに打ち明けた。

「譲る?」

「桃太郎の名は後世に引き継がれて行くんです。子どもだけでなく、師匠の教えを継ぐ意志さえあれば、弟子でも名を継ぐ資格がありました。当時は鬼だけでなく、悪い人間や動物の退治の依頼がわんさか来ました。」

「今は退治屋はどうしてるんですか?」

「今ですか?もう退治屋はやっておりません。もう鬼がいなくなりましたから。こうやって民宿を経営出来るのも先代様のおかげですよ。」

「ぶっちゃけ鬼とどっちが強かったんですか?」
龍太郎がスマホのカメラを向けながら、質問した。

「おい、こら失礼だぞ!」
幸祐は龍太郎のまるでマスコミの取材ような物言いを注意した。

「いや、良いんですよ。興味を持ってくれて嬉しいですよ。私たち一族が優勢だったと聞いています。なにしろ戦略家が多かったもので。」

「鬼ってそもそも何ですか?」
龍太郎がスマホを向けながら質問した。貞夫もお酒が入ったからか、少し饒舌になり、

「殺人、暴行、窃盗など犯す犯罪集団です。しかし実際に鬼と呼ばれていた角の生えた怪物は上層部の十数人の幹部だけ。あとは…。」

「えっ?あとは?」

「人間でした。鬼に賛同して集まったり、捕まって働かされていた人間だったようです。私たちが優勢とは言いましたが同士討ちをしているようで、非常に辛い闘いだったんです。」

「鬼たちはそのまま制圧されたんですか?」
龍太郎はまるでベテラン記者だ。

「鬼たちはいよいよ敗北を目の前にしたとき、ある祈祷に頼りました。鬼たちの必死の抵抗でした。」

「祈祷ってどんな?」

「復活ですよ。死者を蘇らせたり、瀕死の者の魂を別の肉体に入れ替える祈祷です。もちろんどれもうまくいかなかくて、戦況に影響はなかったんですけどね。」
 
「胡散臭いですね…。そんな話、鬼は信じたんですか?」
今度は幸祐も合いの手を入れた。

「戦況が不利なのに鬼たちは信じていたんですよ!考えられないでしょ?今じゃ非科学的ですよ。ただ当時飢饉や疫病が流行したから、祈祷や儀式は心の拠り所でもあったんです。」

「じゃあ抵抗虚しく全滅ってこと?」

「藁をもすがる思いだったんだろうけどね。最後の策だったようで、鬼は全員討伐されたよ。」

桃太郎伝説の話をしている貞夫の顔は活き活きしていた。幸祐にとって、他人の武勇伝を聞くのは苦痛だが、貞夫の話にはリアリティがあり、いつの間にか聞き入ってしまった。龍太郎も態度はイマイチだったが、興味を持って会話に参加してくれたことには、幸祐は内心少しホッとした。

「そういえば、現役桃太郎君はどうされてるんですか?」
この幸祐の質問の後、貞夫の表情が一瞬曇ったように見えたが、すぐにほろ酔い顔に戻り、

「息子は旅に出ていてね、しばらく帰ってないよ。どこで何をしてるんだか。連絡もよこさない。」

「自分探しの旅ってやつですよ。親でも最近子どもの考えていることがわからなくなっちゃいますよ。」
すかさずフォローをしたつゆ子も少し寂しそうだった。
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