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1章 悪役貴族は屈しない
第32話 仲間割れ
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憎き悪役貴族エルヴィンにふるぼっこされた勇者は、顔を真っ赤にしながら城壁のすぐ脇にある洞窟へとやってきた。
「覚えてろよ、くそったれのゴミエルヴィン。次に会ったときは、原型が残らないくらい顔をぶん殴ってやる!!」
クラスメイトの面前で、あれだけの負け方をしたのだ。
同じ目に遭わせるだけじゃ満足出来ない。
そうだ。殴った後は裸にして、校門に貼り付けにしよう。
あいつの汚い体を衆目に晒してやるのだ!
だが、現状では太刀打ち出来ないことがやっと理解出来た。
アベルとエルヴィンの間にある実力差は、少々の努力では埋まりそうにない。
であるならば、残る手段はレベル上げしかない。
レベルが上がれば、さくっと強くなれる。
しかし、高等部の授業に出ている限り、レベルを上げる機会はそうそう訪れない。
ならば休日を利用して、レベリングをするしかない。
といっても、ちまちま魔物を狩るつもりは毛頭ない。
そんな面倒臭いレベリングなど勇者には似合わない。
こちらは貴重な休日を消費しているのだ。
それ相応の対価がなければ〝釣り合わない〟。
「さあて、始めようか」
そう言って、アベルは拾った石を目の前の崖に放り投げた。
次から次へと、石を放り投げていく。
五分、十分……。
かなり石を投げ込んだが、
「なんで一つもレベルが上がらないんだよ!!」
おかしい。
ここに石を投げればレベルが上がるはずなのに、ちっとも上がる気配がない。
そこからさらに三十分石を投げ入れ続けたが、やはりレベルは上がらなかった。
「畜生ぉぉぉぉ!!」
顔を真っ赤にして地団駄を踏む。
「あの、ゴミクソエルヴィン! オレのレベリングポイントを奪いやがったなッ!!」
状況的には八つ当たりだったが、実際のところは当たっている。
すでに、この場所はエルヴィンが利用済みであったため、なにも起らないただの崖になっていた。
しかしそんなこと、勇者はつゆほども知らない。
「くそっ。何から何まで上手くいかねぇ。なんで、あの糞虫はオレがやりたいことを邪魔してくるんだ……!」
もはや真実などどうだってよく、アベルにとってエルヴィンはストレスを発散する的でしかなかった。
「こうなったら……仕方ない。今はまだ使いたくはなかったが、一枚だけ切り札を使うか」
なんとしてでも、エルヴィンに一泡吹かせたい。
その思いだけが、アベルを突き動かすのだった。
○
一ヶ月の停学期間が明けて現われた勇者は、以前と同じ……いや、それ以上に自信ありげな様子だった。
てっきり自信喪失して鬱屈してるもんだと思ってたんだがな……。
あれだけバキバキに叩きのめしても折れないって、相当メンタル鋼だな。
かといって俺に絡むわけでもなく、普通に授業を受けている。
この静けさが、なんだか不気味だ。
勇者が復帰してから3日目になると、徐々に異変が顕在化してきた。
これまで決して勇者に近づかなかったクラスメイトが、徐々に距離を近づけてきているのだ。
勇者と談笑する生徒の姿には、さすがの俺も驚いた。
「夢でも見てるのか?」
「試してあげましょうか?」
「……結構だ」
ラウラの指先が俺の頬を掴む前に、丁重にお断り申し上げる。
だってこいつの爪、綺麗なんだけどめっちゃ痛そうなんだもん。
「それにしても、何があったんだ?」
「案外、気さくな人柄だってことがわかったのかもしれないわね」
「……あれが?」
「冗談よ」
「あれが気さくなら、俺は人気者だ」
「…………」
友達いないのに? みたいな顔して黙るなよ。
未だにいねぇよ、悪いかよ!
変化はわりと平穏なものだった。
だから、俺たちはこれをスルーした。
しかし異変はここで収まらなかった。
翌週、学校に来ると俺の机が泥まみれになっていた。
「さすがはファンケルベルク。家業の汚さって、机に表れるんだな」
「……これはどういうことだ?」
俺が尋ねると、生徒たちは一斉に視線をそらした。
その中で唯一歪な笑みを浮かべたまま、まっすぐ俺を見ている奴がいる。
――勇者だ。
なるほど。勇者の仕業か。
しかし――ふむ。証拠がないな。
「えっ、なにこれ、どうしたの?」
その時、教室の入り口からニーナが姿を現した。
彼女は泥だらけの机を見て、俺を見た。
「さて、な。朝来たらこうだった」
「まさか……いじめ?」
ニーナが周りを見て、腰に手を当てた。
「エルヴィンの机を汚した人は誰!?」
「おいおい、ニーナ。お前は黙ってろ」
「アベル……。あなたがやったのね」
きっと目をつり上げる。
どうも、かなり怒っているようで、聖なる力が体から発散している。
「黙れと言ってる」
「いいえ、黙りません。これは人間のクズがすることよ!」
「だったら無視はいいのか? アアン!? オレがクラスでいじめられた時、お前はなんで黙ってたんだよ!?」
「あれはいじめじゃないわ。アンタに関わると危ないから、みんな離れてたのよ。自分が悪いのに、他人のせいにするのはやめなさい!」
「俺に指図すんじゃねぇ!!」
おっ、仲間割れか?
こういうこともあるんだな。
でもさすがに、ヒートアップしすぎだな。
「二人とも」
「覚えてろよ、くそったれのゴミエルヴィン。次に会ったときは、原型が残らないくらい顔をぶん殴ってやる!!」
クラスメイトの面前で、あれだけの負け方をしたのだ。
同じ目に遭わせるだけじゃ満足出来ない。
そうだ。殴った後は裸にして、校門に貼り付けにしよう。
あいつの汚い体を衆目に晒してやるのだ!
だが、現状では太刀打ち出来ないことがやっと理解出来た。
アベルとエルヴィンの間にある実力差は、少々の努力では埋まりそうにない。
であるならば、残る手段はレベル上げしかない。
レベルが上がれば、さくっと強くなれる。
しかし、高等部の授業に出ている限り、レベルを上げる機会はそうそう訪れない。
ならば休日を利用して、レベリングをするしかない。
といっても、ちまちま魔物を狩るつもりは毛頭ない。
そんな面倒臭いレベリングなど勇者には似合わない。
こちらは貴重な休日を消費しているのだ。
それ相応の対価がなければ〝釣り合わない〟。
「さあて、始めようか」
そう言って、アベルは拾った石を目の前の崖に放り投げた。
次から次へと、石を放り投げていく。
五分、十分……。
かなり石を投げ込んだが、
「なんで一つもレベルが上がらないんだよ!!」
おかしい。
ここに石を投げればレベルが上がるはずなのに、ちっとも上がる気配がない。
そこからさらに三十分石を投げ入れ続けたが、やはりレベルは上がらなかった。
「畜生ぉぉぉぉ!!」
顔を真っ赤にして地団駄を踏む。
「あの、ゴミクソエルヴィン! オレのレベリングポイントを奪いやがったなッ!!」
状況的には八つ当たりだったが、実際のところは当たっている。
すでに、この場所はエルヴィンが利用済みであったため、なにも起らないただの崖になっていた。
しかしそんなこと、勇者はつゆほども知らない。
「くそっ。何から何まで上手くいかねぇ。なんで、あの糞虫はオレがやりたいことを邪魔してくるんだ……!」
もはや真実などどうだってよく、アベルにとってエルヴィンはストレスを発散する的でしかなかった。
「こうなったら……仕方ない。今はまだ使いたくはなかったが、一枚だけ切り札を使うか」
なんとしてでも、エルヴィンに一泡吹かせたい。
その思いだけが、アベルを突き動かすのだった。
○
一ヶ月の停学期間が明けて現われた勇者は、以前と同じ……いや、それ以上に自信ありげな様子だった。
てっきり自信喪失して鬱屈してるもんだと思ってたんだがな……。
あれだけバキバキに叩きのめしても折れないって、相当メンタル鋼だな。
かといって俺に絡むわけでもなく、普通に授業を受けている。
この静けさが、なんだか不気味だ。
勇者が復帰してから3日目になると、徐々に異変が顕在化してきた。
これまで決して勇者に近づかなかったクラスメイトが、徐々に距離を近づけてきているのだ。
勇者と談笑する生徒の姿には、さすがの俺も驚いた。
「夢でも見てるのか?」
「試してあげましょうか?」
「……結構だ」
ラウラの指先が俺の頬を掴む前に、丁重にお断り申し上げる。
だってこいつの爪、綺麗なんだけどめっちゃ痛そうなんだもん。
「それにしても、何があったんだ?」
「案外、気さくな人柄だってことがわかったのかもしれないわね」
「……あれが?」
「冗談よ」
「あれが気さくなら、俺は人気者だ」
「…………」
友達いないのに? みたいな顔して黙るなよ。
未だにいねぇよ、悪いかよ!
変化はわりと平穏なものだった。
だから、俺たちはこれをスルーした。
しかし異変はここで収まらなかった。
翌週、学校に来ると俺の机が泥まみれになっていた。
「さすがはファンケルベルク。家業の汚さって、机に表れるんだな」
「……これはどういうことだ?」
俺が尋ねると、生徒たちは一斉に視線をそらした。
その中で唯一歪な笑みを浮かべたまま、まっすぐ俺を見ている奴がいる。
――勇者だ。
なるほど。勇者の仕業か。
しかし――ふむ。証拠がないな。
「えっ、なにこれ、どうしたの?」
その時、教室の入り口からニーナが姿を現した。
彼女は泥だらけの机を見て、俺を見た。
「さて、な。朝来たらこうだった」
「まさか……いじめ?」
ニーナが周りを見て、腰に手を当てた。
「エルヴィンの机を汚した人は誰!?」
「おいおい、ニーナ。お前は黙ってろ」
「アベル……。あなたがやったのね」
きっと目をつり上げる。
どうも、かなり怒っているようで、聖なる力が体から発散している。
「黙れと言ってる」
「いいえ、黙りません。これは人間のクズがすることよ!」
「だったら無視はいいのか? アアン!? オレがクラスでいじめられた時、お前はなんで黙ってたんだよ!?」
「あれはいじめじゃないわ。アンタに関わると危ないから、みんな離れてたのよ。自分が悪いのに、他人のせいにするのはやめなさい!」
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おっ、仲間割れか?
こういうこともあるんだな。
でもさすがに、ヒートアップしすぎだな。
「二人とも」
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