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第一章 運命に抗うドブネズミ
9・再会と友情と
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「すぐ目が寝れるはずだよ、ラット」
なんども目をこする。ここで自分の体の感覚がはっきりしてたことはねえが、今は目もちゃんとこすれる。何がなんだかよくわからねえが、早く慣れろ、俺!
「はいはい、焦らない焦らない~」
ぼんやりと部屋が見えてきやがった。殺風景で冷たい部屋の真ん中に、木でできたテーブルが置かれている。そこには椅子もあって。その椅子には……。
「タコ助!」
「よう、ラット。昨日ぶり~」
「なんだよ、お前、生きてたのかよ!」
「ははっ」
もう見ることができないと思ってた、この憎たらしい笑った顔。おいおい、もしかしてここは天国か? だとしたら随分神様もケチくせえことしやがる。もっと豪勢な部屋でもいいだろうによ!
「初めて見たよ、ラットが普通に笑う顔。結構かわいいじゃ~ん! ま、ぼくちゃんにはかなわないけどね」
「う、うるせえ」
「はは、出た! 口癖。うるせえ」
「うる! ……いいんだよ」
「ま、立ち話もなんだから、どうぞ」
「お、おう」
家では地べたに座ってたからな。なんか変な感じだ。だが、悪くねえ。悪くねえぞ。
「で、お前ここでなにやってんだよ」
「あー、まずさ。ぼくちゃん、死んだっちゃあ死んだんだよね」
「……え?」
「死んだときにさ、ふわっと体から出たんだけどね。自然と『あぁ、上に昇らなきゃ』ってわかったんだよ。でもどうせならさ、ラットにちょっかい出してからいきたいな~って思ったら、それができちゃったんだよね~」
そりゃ……そうか。確かにタコ助が死んだのは目の前で見た。じゃあ、今目の前にいるのは? いや、どう見てもタコ助だよ、な。
「そんな顔するなよ、ラット」
「じゃ、じゃあよ、今のお前は幽霊、ってことか?」
「う~ん、それがね、ラットの中には暗闇の階段と、部屋があるでしょ? まあ、ここなんだけど。たぶんラットの体をすり抜けた時に、ぼくちゃんの一部が部屋に引っかかっちゃったみたいなんだよね~」
「な、なんじゃそりゃあ!」
「ま、そういうわけだからさ。よくわかんないけど、ぼくちゃんはちゃんとここにいる。今後ともよろしく、兄弟!」
「うーん……よくわかんねえけど。そうだな、頼むぜ! って、ツバメ姉たちにどう説明すりゃいいんだよ……」
「あ」
タコ助、お前なんも考えてなかったな。お前が俺の考えを読めるように、俺もお前の考えは読める。まぁ、気づいたのは最近だけどよ。とにかくよ、なんでもいいや。生きてるとか死んでるって、よくわかんねえけどよ、確かにタコ助とこうやって話ができてんだ。なにも問題はねえ。
「ラット。そろそろ、時間みたいだね」
「え?」
「ぼくちゃんにはわかっちゃうんだよ。そろそろラットは目が覚める」
「俺、今寝てんの? 夢かよこれ!」
「うーん、それとはちょっと違うけど。とにかく、ラットは今後、この集中する感じを忘れないように! ぼくちゃんもこの部屋や階段について調べてみるからさ!」
「お、おう。え、俺またここに来られるんだよな?」
「知らね」
「知らねえじゃねえよ! どうすんだよ、お前閉じ込めちゃってよ!」
「まあ、なんとかなるでしょ~。それにほら、これで物理的にぼくちゃんを冒険に連れて行ってくれることになるじゃん! あ、この場合は精神的に、かな~?」
「いやどっちでもいいわ!!」
「ぎゃあ!」
……え? あ、目の前でババアが倒れてる。ここは……さっきのいい部屋か……。戻ってきちまったんだな。
「えーとあの~、どうしました?」
「なんだ急に叫びおって! 寝ぼけとるんか!」
「いや、え、叫んだ?」
「……まったく、この部屋で寝言を叫んだのはお前が初めてだ。だいたい、どっちでもいいって……こっちはどうでもいいわ」
「いや、悪気はなかったんだよ。ほら、この部屋はなんか、すげえ集中できてよ。これ、ババアが全部やってんのか? すげえじゃん。うん、あんた、すげえババアだよ」
「お前、一回死ぬか?」
あ、マジな殺気だ。あれ? 褒めたはずなんだけどな。
「……まあ、いい。とにかく今日は飯食ってさっさと寝ろ。そんで、朝になったらすぐ出ていくがよい」
「あ、あのー。また今度お湯借りに来ていい?」
「……あん?」
「いやほら、すげえ気持ちよかったからさ。それにこのお香? これの匂いも気に入ったぜ。ホント、身も心も清められた。さすがお清め様ってな」
「……お前に一つ忠告しておこう。町にでてからはあまり冗談は言わんほうがいい」
お、真剣な顔になりやがった。
「そうか。町の連中は冗談も通じねえ野郎の集まりなのかよ。わかった、気を付けるぜ」
「いや、お前のセンスの問題だ。あと礼儀も覚えろ! このたわけ!」
なんかすげー怒られたし。こりゃ飯抜きもあり得るか? って思ったけどよ、ちゃんと出してくれた。これがよ、またすげーうめえの! 俺らの村にくる材料がいかに悪いかって話だよな。うまいのにムカついちまった。
ほんで、この布団! ふっかふかだぜ!? これなら冬もぜってー寒くねえ! 一日中布団の中でもいいくらいだ。マジで。
そんでよ、うまい飯に綺麗な家に布団だろ? これが土と水属性の村にあんだからよ、町や王都なんてとんでもねえんだろうな!
いやほんと、それだけでこれからの冒険が楽しみになってきやがった。
布団に入ってからよ、さっきの感じを思い出してもう一回集中してみた。が、今はあの場所にはいけねえみたいだ。タコ助にも声かけてみたんだけど、応答がねえ。ま、そのうちまたひょっこりいけるだろうよ。あまり考えすぎねえようにしねえとな。
「おーい、ラット。ラット起きろ!」
「ん? あ、ああ」
いつの間にか寝ちまったらしい。いつもなら堅え床の上で寝苦しかったし、チビ達の寝相で二、三発はいいパンチもらってたからな。こんなにぐっすり寝たのは久しぶりな気がするぜ。……にしても寝すぎだよな。昨日も結構寝たのによ。
「お清め様が飯の支度ができたってさ」
「そうか。ゲンは?」
「ゲンはお前の見送りの準備してるから、後からくるよ」
「わかった。ありがとな、ショウ」
なんだかすげえいい気分だ。体力が全開したのがわかる。やっぱりうまい飯に風呂と布団だよな。これだけで人間、相当幸せになれるぜ。そう思うだろ?
「……どうだ。今日の飯はうまいか?」
「おう、絶品だよ。おかわりもらえるか?」
「まったくずうずうしいガキだ。ほらよ」
「あざっす」
今日の飯もうめえ。力がみなぎってくるぜ。お湯借りるついでに飯ももらえるといいんだけどな。まあ、土産くらいは持ってこねえといけねえわな。
「あれ、ババア、今日はお香変えたのか?」
「ほう、わかるか。鼻がきくな」
「うん、知らんけど。これもいい匂いだな」
「そうか……。お前は変わってるな。このお香には魔力が込められていてな、普通ならその魔力にあてられて気分が悪くなるものなんだ」
「へー、でも俺は好きだぜ。なんか、元気がでるな」
「……まあ、魔力にあてられても元気なのはいいことだ。それでな、冒険者管理所についたら、この手紙を受付に見せな」
「ん? なんだこれ」
「これはお前さんの推薦状だ。これがなきゃ、お前さんなんて門前払いだろうよ」
「え? なんでだよ」
「昨日も言ったろ? 闇属性の冒険者なんて今までいないんだ。そりゃそうだろう。力も魔力も倍率がかかってないんだから。魔物どころか大きな野生の犬相手でも命に関わっちまうよ」
そうか。なんか、町に行きさえすれば冒険者になれると思い込んでた。ちくしょう。町に入るにも通行証、働くにも推薦状。紙がねえとなんもできんのか、この国は。……いや、違えな。こうやってジジイやババアに世話してもらってやっと始められるんだな。いつか恩返ししなきゃならんな。
「わかった。ありがとうよ。でも、なんで俺なんかに」
「いいかい、あんたはすごいことをやったんだ。闇属性の一般人が火と風の騎士を倒したなんて、今まで耳にしたことがない。それに、もしそいつらをお前さんが倒してくれなけりゃ、こっちの村にも被害が及んだやもしれん。力を貸すのは当然だ」
「お、おう。そうか。ありがとうな、ババア。あんた、本当にいいババアだよ」
「お清め様と呼べ! このバチ当たりが!」
結局最後は怒られちまった。なんか昨日も言ってたな。礼儀がどうとかよ。まあ、ようわからんけど、そういうのも覚えなけりゃいけねえのかな。面倒くせえ。
「ではショウ、ラットの案内を頼んだよ」
「はい、お清め様」
ここともおさらばか。風呂に飯に布団……。ちょいと後ろ髪ひかれるが、ここでまごまごしてる暇は俺にはねえからな。
「そいでラット。まあ、そのなんだ。気が向いたらいつでもここに来い。一晩くらいは泊めてやる」
「マジで!? いやあ、何から何まですまねえな」
「ふん」
「そうじゃあ、世話になったぜ。また来るから元気でな、お清めババア」
「妖怪みたいな呼び方をすな! さっさといけー!!」
うーん、最後まで怒られっぱなしだったな。だがまあ、あの婆さんは嫌いじゃねえ。
「ラット、お前すごいな」
「え、何が?」
「お清め様に気に入られる人なんて、この村でもほとんどいないぜ」
「そうなのか? 怒られてばっかだったけどな」
少し北へ進むと、ゲンが待っていた。なんか荷物が多いな。あいつも町にでも出んのか? そうなら退屈せんで済みそうだけどよ。
「ようラット。よく眠れたか?」
「ああ、おかげさまでよ。お前らあんないい布団で寝てんのか。羨ましいぜ」
「そんなこたねえよ、あそこは特別だ。でもな~あの匂いがどうも俺はよ……」
「俺も~。でもラットは平気らしいよ」
「そっか、なんかお前は特別なのかもな」
「そんなもんか? よくわからん」
昨日と同じく、なんだか穏やかな話だな。これまでが嘘のようだぜ。やっぱあれか。攻めてきた奴らを斬り倒したのがきいてるのか。正直、あんまり覚えてねえんだが。
「ほれ、見えてきたぞ。あそこからは村の外だ」
「おう」
森に囲まれた街道……って感じか。ゆるい上り坂になってるみたいだな。ああ、じゃなきゃ俺の村から町やら王都が見えるはずねえか。
「おいラット。念のため聞いておくがよ、お前、金って知ってるか?」
「は? バカにすんなよ。知ってるよ。村長が昔見せてくれたし」
「……やっぱその程度か」
ゲンが呆れてやがる。しょうがねえだろ? 町に出ないやつは金なんか必要ねえしよ。持ってても使い道もねえんだ。そもそも、闇属性の村には金なんかねえし。食料も町や王都の残りがよ、豚や牛の餌と一緒に運ばれてくるんだぜ?
「いいか、町では金がねえとなんもできねえんだ」
「おう、だからよ、冒険者になって金稼ぎするつもりだぜ、俺は」
「そう簡単に仕事をふってもらえると思うか?」
「いや、知らんけど」
はぁ、とため息までつきやがる。俺はこのため息ってのがどうも嫌いだ。気分がこっちまで下がんだよ。
「……ほれ、これを持っていけ」
持ってた袋を渡してきやがった。え、これ持って歩くの面倒なんだが。
「これは?」
「中身を見てみろ」
道端で袋から物を出す。乾燥した芋にパン、あとは干し肉なんかもあるじゃねえか! そんでこれは……。
「おいこれ」
「金だ。少ないが、一週間くらいはなんとか暮らせるだろうよ」
「いや、なんでお前らがこんなこと」
「お前、俺たちの喧嘩の勝敗、どんなもんだと思う?」
なんだ急によ。そんなんいちいち覚えてねえよ。
「ショウ」
「はい、兄貴! 俺らの82勝、100敗だ」
「げっ、そんなに喧嘩してたのかよ、俺ら。ってかよく覚えてんな、そんなの」
「それもな、ガキの頃は俺らの圧勝だったのに、気が付いたらこのざまだ。ゴリもタコ助もな、俺らが煽っても乗ってこねえ。でも、お前だけは違った。いくらコテンパンにしてやっても次会ったときはまた挑んでくる。気が付きゃ逆転されてよ、このまえの喧嘩で丁度100敗だ」
そういやそうだったな。昔のことなんざ忘れてたが、最初はよく泣かされてたっけ。そんで悔しくてよ、ゴリ兄に訓練手伝ってもらって。そんでだんだん勝てるようになったんだ。
「なんつーかさ、張り合いがあったんだよ、お前とは。でも、それもこれでお終いだ。お前は町の冒険者になる。だったらよ、行けるとこまで行ってほしいんだよ、俺たちも。もし、もしだぜ? お前が騎士団にでも入れた日には、俺らの自慢になるぜ」
「はは、心配すんな。俺は絶対なってやるよ。そうじゃなきゃ目的は果たせねえ」
「やっぱり、タコ助の恨みか」
「……正直、それもある。だがよ、それ以上に自分自身がどこまで行けるのか。どんな大人になれるのか、試してみてえんだよ」
「へっ。お前らしいな。いいか、俺たちはこれまですげえ喧嘩してきた。ガキの頃から今に至るまでな。これはさ、もう、ダチなんだよ。俺ら」
「ダチ、か」
「そう」
「そうか~?」
今まで散々喧嘩してきたからな。顔を見るのも嫌だった時期もある。でもまあ、張り合いっていうんなら、確かにちょっとこいつらとやりあうのは楽しかった。
「いいんだよラット! 細かいことは! 兄貴がダチっていったら俺たちはダチなんだ」
「まあ……そうだな」
「そう! だからさ、困ったことがあったらまた俺らのところに来てくれよな! ほら、村に帰るのは照れ臭いときとかあるだろ? そういう時に!」
「ショウの言う通りだ。それによ、俺たちもタコ助がやられたことははらわた煮えくり返ってんだ。だからさ、これは俺たちがコツコツ集めてきたものだけど、お前にやる。黙って持っていけ!」
照れくせえ。友達とか家族とか、なんだか恥ずかしいことばっかりだ。でも、悪くねえ。やっぱり悪くねえなこういうの。なんでかな? やっぱ、誰かに期待されることなんてなかったからか。それに、認めたくねえが、ゲンとショウが俺とタコ助に一瞬見えやがった。認めたくねえがな。
「……わかった。ありがたく頂いていくぜ」
「おう、それでさ、最後になるが。死ぬなよ、ラット」
……なんか皆に言われるな、それ。でもそうだな。死んだらななんもならねえ。タコ助を連れていくことができねえしな。
「ああ。お前らも、元気でいろよ」
ここで俺らは別れる。さっきようやく友達になったばっかだけどな。それでも少し、寂しさを感じた。だが、ここから本当に俺一人で進む一歩目が始まる感じがするぜ。って、その前に。
「あ、あと最後に質問なんだけどよ」
「ん? なんだ」
「この、金ってさ。どれがどういう価値があんだ?」
「ラット……そこからかよ!!」
なんども目をこする。ここで自分の体の感覚がはっきりしてたことはねえが、今は目もちゃんとこすれる。何がなんだかよくわからねえが、早く慣れろ、俺!
「はいはい、焦らない焦らない~」
ぼんやりと部屋が見えてきやがった。殺風景で冷たい部屋の真ん中に、木でできたテーブルが置かれている。そこには椅子もあって。その椅子には……。
「タコ助!」
「よう、ラット。昨日ぶり~」
「なんだよ、お前、生きてたのかよ!」
「ははっ」
もう見ることができないと思ってた、この憎たらしい笑った顔。おいおい、もしかしてここは天国か? だとしたら随分神様もケチくせえことしやがる。もっと豪勢な部屋でもいいだろうによ!
「初めて見たよ、ラットが普通に笑う顔。結構かわいいじゃ~ん! ま、ぼくちゃんにはかなわないけどね」
「う、うるせえ」
「はは、出た! 口癖。うるせえ」
「うる! ……いいんだよ」
「ま、立ち話もなんだから、どうぞ」
「お、おう」
家では地べたに座ってたからな。なんか変な感じだ。だが、悪くねえ。悪くねえぞ。
「で、お前ここでなにやってんだよ」
「あー、まずさ。ぼくちゃん、死んだっちゃあ死んだんだよね」
「……え?」
「死んだときにさ、ふわっと体から出たんだけどね。自然と『あぁ、上に昇らなきゃ』ってわかったんだよ。でもどうせならさ、ラットにちょっかい出してからいきたいな~って思ったら、それができちゃったんだよね~」
そりゃ……そうか。確かにタコ助が死んだのは目の前で見た。じゃあ、今目の前にいるのは? いや、どう見てもタコ助だよ、な。
「そんな顔するなよ、ラット」
「じゃ、じゃあよ、今のお前は幽霊、ってことか?」
「う~ん、それがね、ラットの中には暗闇の階段と、部屋があるでしょ? まあ、ここなんだけど。たぶんラットの体をすり抜けた時に、ぼくちゃんの一部が部屋に引っかかっちゃったみたいなんだよね~」
「な、なんじゃそりゃあ!」
「ま、そういうわけだからさ。よくわかんないけど、ぼくちゃんはちゃんとここにいる。今後ともよろしく、兄弟!」
「うーん……よくわかんねえけど。そうだな、頼むぜ! って、ツバメ姉たちにどう説明すりゃいいんだよ……」
「あ」
タコ助、お前なんも考えてなかったな。お前が俺の考えを読めるように、俺もお前の考えは読める。まぁ、気づいたのは最近だけどよ。とにかくよ、なんでもいいや。生きてるとか死んでるって、よくわかんねえけどよ、確かにタコ助とこうやって話ができてんだ。なにも問題はねえ。
「ラット。そろそろ、時間みたいだね」
「え?」
「ぼくちゃんにはわかっちゃうんだよ。そろそろラットは目が覚める」
「俺、今寝てんの? 夢かよこれ!」
「うーん、それとはちょっと違うけど。とにかく、ラットは今後、この集中する感じを忘れないように! ぼくちゃんもこの部屋や階段について調べてみるからさ!」
「お、おう。え、俺またここに来られるんだよな?」
「知らね」
「知らねえじゃねえよ! どうすんだよ、お前閉じ込めちゃってよ!」
「まあ、なんとかなるでしょ~。それにほら、これで物理的にぼくちゃんを冒険に連れて行ってくれることになるじゃん! あ、この場合は精神的に、かな~?」
「いやどっちでもいいわ!!」
「ぎゃあ!」
……え? あ、目の前でババアが倒れてる。ここは……さっきのいい部屋か……。戻ってきちまったんだな。
「えーとあの~、どうしました?」
「なんだ急に叫びおって! 寝ぼけとるんか!」
「いや、え、叫んだ?」
「……まったく、この部屋で寝言を叫んだのはお前が初めてだ。だいたい、どっちでもいいって……こっちはどうでもいいわ」
「いや、悪気はなかったんだよ。ほら、この部屋はなんか、すげえ集中できてよ。これ、ババアが全部やってんのか? すげえじゃん。うん、あんた、すげえババアだよ」
「お前、一回死ぬか?」
あ、マジな殺気だ。あれ? 褒めたはずなんだけどな。
「……まあ、いい。とにかく今日は飯食ってさっさと寝ろ。そんで、朝になったらすぐ出ていくがよい」
「あ、あのー。また今度お湯借りに来ていい?」
「……あん?」
「いやほら、すげえ気持ちよかったからさ。それにこのお香? これの匂いも気に入ったぜ。ホント、身も心も清められた。さすがお清め様ってな」
「……お前に一つ忠告しておこう。町にでてからはあまり冗談は言わんほうがいい」
お、真剣な顔になりやがった。
「そうか。町の連中は冗談も通じねえ野郎の集まりなのかよ。わかった、気を付けるぜ」
「いや、お前のセンスの問題だ。あと礼儀も覚えろ! このたわけ!」
なんかすげー怒られたし。こりゃ飯抜きもあり得るか? って思ったけどよ、ちゃんと出してくれた。これがよ、またすげーうめえの! 俺らの村にくる材料がいかに悪いかって話だよな。うまいのにムカついちまった。
ほんで、この布団! ふっかふかだぜ!? これなら冬もぜってー寒くねえ! 一日中布団の中でもいいくらいだ。マジで。
そんでよ、うまい飯に綺麗な家に布団だろ? これが土と水属性の村にあんだからよ、町や王都なんてとんでもねえんだろうな!
いやほんと、それだけでこれからの冒険が楽しみになってきやがった。
布団に入ってからよ、さっきの感じを思い出してもう一回集中してみた。が、今はあの場所にはいけねえみたいだ。タコ助にも声かけてみたんだけど、応答がねえ。ま、そのうちまたひょっこりいけるだろうよ。あまり考えすぎねえようにしねえとな。
「おーい、ラット。ラット起きろ!」
「ん? あ、ああ」
いつの間にか寝ちまったらしい。いつもなら堅え床の上で寝苦しかったし、チビ達の寝相で二、三発はいいパンチもらってたからな。こんなにぐっすり寝たのは久しぶりな気がするぜ。……にしても寝すぎだよな。昨日も結構寝たのによ。
「お清め様が飯の支度ができたってさ」
「そうか。ゲンは?」
「ゲンはお前の見送りの準備してるから、後からくるよ」
「わかった。ありがとな、ショウ」
なんだかすげえいい気分だ。体力が全開したのがわかる。やっぱりうまい飯に風呂と布団だよな。これだけで人間、相当幸せになれるぜ。そう思うだろ?
「……どうだ。今日の飯はうまいか?」
「おう、絶品だよ。おかわりもらえるか?」
「まったくずうずうしいガキだ。ほらよ」
「あざっす」
今日の飯もうめえ。力がみなぎってくるぜ。お湯借りるついでに飯ももらえるといいんだけどな。まあ、土産くらいは持ってこねえといけねえわな。
「あれ、ババア、今日はお香変えたのか?」
「ほう、わかるか。鼻がきくな」
「うん、知らんけど。これもいい匂いだな」
「そうか……。お前は変わってるな。このお香には魔力が込められていてな、普通ならその魔力にあてられて気分が悪くなるものなんだ」
「へー、でも俺は好きだぜ。なんか、元気がでるな」
「……まあ、魔力にあてられても元気なのはいいことだ。それでな、冒険者管理所についたら、この手紙を受付に見せな」
「ん? なんだこれ」
「これはお前さんの推薦状だ。これがなきゃ、お前さんなんて門前払いだろうよ」
「え? なんでだよ」
「昨日も言ったろ? 闇属性の冒険者なんて今までいないんだ。そりゃそうだろう。力も魔力も倍率がかかってないんだから。魔物どころか大きな野生の犬相手でも命に関わっちまうよ」
そうか。なんか、町に行きさえすれば冒険者になれると思い込んでた。ちくしょう。町に入るにも通行証、働くにも推薦状。紙がねえとなんもできんのか、この国は。……いや、違えな。こうやってジジイやババアに世話してもらってやっと始められるんだな。いつか恩返ししなきゃならんな。
「わかった。ありがとうよ。でも、なんで俺なんかに」
「いいかい、あんたはすごいことをやったんだ。闇属性の一般人が火と風の騎士を倒したなんて、今まで耳にしたことがない。それに、もしそいつらをお前さんが倒してくれなけりゃ、こっちの村にも被害が及んだやもしれん。力を貸すのは当然だ」
「お、おう。そうか。ありがとうな、ババア。あんた、本当にいいババアだよ」
「お清め様と呼べ! このバチ当たりが!」
結局最後は怒られちまった。なんか昨日も言ってたな。礼儀がどうとかよ。まあ、ようわからんけど、そういうのも覚えなけりゃいけねえのかな。面倒くせえ。
「ではショウ、ラットの案内を頼んだよ」
「はい、お清め様」
ここともおさらばか。風呂に飯に布団……。ちょいと後ろ髪ひかれるが、ここでまごまごしてる暇は俺にはねえからな。
「そいでラット。まあ、そのなんだ。気が向いたらいつでもここに来い。一晩くらいは泊めてやる」
「マジで!? いやあ、何から何まですまねえな」
「ふん」
「そうじゃあ、世話になったぜ。また来るから元気でな、お清めババア」
「妖怪みたいな呼び方をすな! さっさといけー!!」
うーん、最後まで怒られっぱなしだったな。だがまあ、あの婆さんは嫌いじゃねえ。
「ラット、お前すごいな」
「え、何が?」
「お清め様に気に入られる人なんて、この村でもほとんどいないぜ」
「そうなのか? 怒られてばっかだったけどな」
少し北へ進むと、ゲンが待っていた。なんか荷物が多いな。あいつも町にでも出んのか? そうなら退屈せんで済みそうだけどよ。
「ようラット。よく眠れたか?」
「ああ、おかげさまでよ。お前らあんないい布団で寝てんのか。羨ましいぜ」
「そんなこたねえよ、あそこは特別だ。でもな~あの匂いがどうも俺はよ……」
「俺も~。でもラットは平気らしいよ」
「そっか、なんかお前は特別なのかもな」
「そんなもんか? よくわからん」
昨日と同じく、なんだか穏やかな話だな。これまでが嘘のようだぜ。やっぱあれか。攻めてきた奴らを斬り倒したのがきいてるのか。正直、あんまり覚えてねえんだが。
「ほれ、見えてきたぞ。あそこからは村の外だ」
「おう」
森に囲まれた街道……って感じか。ゆるい上り坂になってるみたいだな。ああ、じゃなきゃ俺の村から町やら王都が見えるはずねえか。
「おいラット。念のため聞いておくがよ、お前、金って知ってるか?」
「は? バカにすんなよ。知ってるよ。村長が昔見せてくれたし」
「……やっぱその程度か」
ゲンが呆れてやがる。しょうがねえだろ? 町に出ないやつは金なんか必要ねえしよ。持ってても使い道もねえんだ。そもそも、闇属性の村には金なんかねえし。食料も町や王都の残りがよ、豚や牛の餌と一緒に運ばれてくるんだぜ?
「いいか、町では金がねえとなんもできねえんだ」
「おう、だからよ、冒険者になって金稼ぎするつもりだぜ、俺は」
「そう簡単に仕事をふってもらえると思うか?」
「いや、知らんけど」
はぁ、とため息までつきやがる。俺はこのため息ってのがどうも嫌いだ。気分がこっちまで下がんだよ。
「……ほれ、これを持っていけ」
持ってた袋を渡してきやがった。え、これ持って歩くの面倒なんだが。
「これは?」
「中身を見てみろ」
道端で袋から物を出す。乾燥した芋にパン、あとは干し肉なんかもあるじゃねえか! そんでこれは……。
「おいこれ」
「金だ。少ないが、一週間くらいはなんとか暮らせるだろうよ」
「いや、なんでお前らがこんなこと」
「お前、俺たちの喧嘩の勝敗、どんなもんだと思う?」
なんだ急によ。そんなんいちいち覚えてねえよ。
「ショウ」
「はい、兄貴! 俺らの82勝、100敗だ」
「げっ、そんなに喧嘩してたのかよ、俺ら。ってかよく覚えてんな、そんなの」
「それもな、ガキの頃は俺らの圧勝だったのに、気が付いたらこのざまだ。ゴリもタコ助もな、俺らが煽っても乗ってこねえ。でも、お前だけは違った。いくらコテンパンにしてやっても次会ったときはまた挑んでくる。気が付きゃ逆転されてよ、このまえの喧嘩で丁度100敗だ」
そういやそうだったな。昔のことなんざ忘れてたが、最初はよく泣かされてたっけ。そんで悔しくてよ、ゴリ兄に訓練手伝ってもらって。そんでだんだん勝てるようになったんだ。
「なんつーかさ、張り合いがあったんだよ、お前とは。でも、それもこれでお終いだ。お前は町の冒険者になる。だったらよ、行けるとこまで行ってほしいんだよ、俺たちも。もし、もしだぜ? お前が騎士団にでも入れた日には、俺らの自慢になるぜ」
「はは、心配すんな。俺は絶対なってやるよ。そうじゃなきゃ目的は果たせねえ」
「やっぱり、タコ助の恨みか」
「……正直、それもある。だがよ、それ以上に自分自身がどこまで行けるのか。どんな大人になれるのか、試してみてえんだよ」
「へっ。お前らしいな。いいか、俺たちはこれまですげえ喧嘩してきた。ガキの頃から今に至るまでな。これはさ、もう、ダチなんだよ。俺ら」
「ダチ、か」
「そう」
「そうか~?」
今まで散々喧嘩してきたからな。顔を見るのも嫌だった時期もある。でもまあ、張り合いっていうんなら、確かにちょっとこいつらとやりあうのは楽しかった。
「いいんだよラット! 細かいことは! 兄貴がダチっていったら俺たちはダチなんだ」
「まあ……そうだな」
「そう! だからさ、困ったことがあったらまた俺らのところに来てくれよな! ほら、村に帰るのは照れ臭いときとかあるだろ? そういう時に!」
「ショウの言う通りだ。それによ、俺たちもタコ助がやられたことははらわた煮えくり返ってんだ。だからさ、これは俺たちがコツコツ集めてきたものだけど、お前にやる。黙って持っていけ!」
照れくせえ。友達とか家族とか、なんだか恥ずかしいことばっかりだ。でも、悪くねえ。やっぱり悪くねえなこういうの。なんでかな? やっぱ、誰かに期待されることなんてなかったからか。それに、認めたくねえが、ゲンとショウが俺とタコ助に一瞬見えやがった。認めたくねえがな。
「……わかった。ありがたく頂いていくぜ」
「おう、それでさ、最後になるが。死ぬなよ、ラット」
……なんか皆に言われるな、それ。でもそうだな。死んだらななんもならねえ。タコ助を連れていくことができねえしな。
「ああ。お前らも、元気でいろよ」
ここで俺らは別れる。さっきようやく友達になったばっかだけどな。それでも少し、寂しさを感じた。だが、ここから本当に俺一人で進む一歩目が始まる感じがするぜ。って、その前に。
「あ、あと最後に質問なんだけどよ」
「ん? なんだ」
「この、金ってさ。どれがどういう価値があんだ?」
「ラット……そこからかよ!!」
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※※※
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