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ある侍女のお話
しおりを挟む私は王女様が小さな頃から遣えています。
16を迎える時に聖女の力が目覚めた王女様。
丁度その頃この国では
魔物たちの被害が日に日に増して
国中を悩ませていました。
そんな時に目覚めた聖女の力。
正直私はその力を目覚めた事が嬉しくなかったのです。
聖女の力とは傷を癒し
そして魔物たちの力を弱め動きを鈍くする事もできる。
そんな力をもってしまった王女様はきっとこれから危ない運命へと駆り出されるのではないかと不安だったから。
そんな私の予想は的中しました。
このままではこの国が危ないと判断され
討伐隊が組まれる事になりました。
そして私の敬愛する王女様も加わる事になったのです。
私は反対しました。
泣きながら力ない私の嘆きを、一番お辛いはずの彼女がそっと頬を撫でこういってくれました。
「リリー。私は貴女も家族もそしてこの国の民もとても大切なの。だから行かないで後悔するよりも、行って後悔する方を選ぶわ。でもきっと。楽しい事ばかりではないはずだから・・・。私が戻ってきたらリリーに沢山甘えさせてもらうわね」
目尻に涙を覗かせながら
笑う姿を見て私は決意しました。
信じ、私がこの場所を守ると。
あれから3年。
王女様は立派になって帰ってきてくださいました。
旅立つ時に見せた不安な瞳ではなく、
成し遂げた強さと変わらない優しさを秘めた瞳で。
あの時の約束通り私は沢山王女様に甘えてもらおうと思いましたが、そんな必要はなかったのです。
だって彼女の隣にはあ彼の方がいらしゃったのですから。
常に王女様を優しい瞳で見つめ
少しでもよろけそうになれば腰を引きよせ支える。
そんな彼の方に
耳を赤く染めながらも見つめ寄り添う王女様。
美しいお二人は強い絆で結ばれているのがすぐにわかりました。あれから私はお二人をずっと近くで支え見つめてまいりました。あのお2人の様に、強く互いを想いあう2人を私は見たことがありません。
それこそ本当に運命で結ばれているかの様に。
そんな中私も年を重ねてしまいました。
まさか私もよりも若い奥様が先に病に臥せってしまうとは。聖女様は外傷の傷を癒せても、病からなる症状は癒す事はできません。そして年老いる事も止める事はできません。
旦那様は常に奥様に寄り添っておられました。
「君を愛しているんだ」
「頼むから早く元気になっておくれ」
「君が元気になったら、あの湖へ又行こう」
奥様はそんな旦那様の問いかけに優しく微笑みながら、
嬉しそうに幸せそうに相槌を打つのです。
それでも人間は儚い者です。
奥様はいってしまわれました。
それでもそのお顔は大好きな旦那様、子供に孫たち、そして屋敷の者に看取られ幸せそうでした。
旦那様は奥様の最後を見送った後
きっと悲しみが、寂しさが、やるせなさが
溢れてしまったのでしょう。
お二人は運命なのですから。
鐘の音と共に言葉にならない
叫声をあげる旦那様。
奥様の幸せそうな安らかな表情と違って
悲しみを、絶望を詰め込んだかの様な旦那様。
愛する人を置いてく者と
愛する人に置いてかれる者。
旦那様の奥様への惜しまぬ愛を見守っていた私達は
その想いをしっているからこそかける言葉が見つからず、
ただただ握る拳を震わせていたのです。
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