革命好きが源平時代に転生したら ~いい国作ろう平民幕府~

キムラ ナオト

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13.草薙の剣編

第87話(1185年12月) 年越し大神楽

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 出雲大社・大神殿

 南宋から帰国したチュンチュンが貴一からの手紙を鴨長明に渡した。絲原鉄心・弁慶・巴御前・熊若を前に長明が読み上げる。

「本当に時忠様が南宋の宰相になるとは……。地方で反乱が起きていて、しばらくはスサノオ様と義仲は帰って来れぬようだ。『硝石を安定して送るためにはもう少し時間がかかる。今回の硝石はチュンチュンの開発優先で使ってほしい』と書いてある。それと――」

 長明がもう一通の手紙を拡げる。

「時忠様が、建礼門院けんれいもんいん様と娘を南宋に送るようにと言っている」

 熊若の方がピクリと揺れた。時忠の娘といえばわらび姫のことである。
 草薙の剣を蕨姫が隠したことは貴一と熊若しか知らないことなので、反対意見も出ず、蕨姫の南宋行は決定された。
 幹部会が終わり、大神殿の長階段を降りている熊若に弁慶が声をかける。

「蕨姫が南宋に行ってくれて一安心だ。ようやく女房の不機嫌な顔を見ずにすむわい。おぬしにも小夜が迷惑をかけたようだな。勘弁してくれ」

「いえ……」

 元気なく熊若は答える。弁慶は視線に気づくと振り返った。

「巴御前、どうかしたのか?」

「わたくしが蕨姫の渡航準備の担当になったものですから、会話が気になったのです。今は年越し大神楽で忙しいですから、渡航はその後になります。言伝があるようでしたらお早めに」

 巴御前はそう言うと先に長階段を降りて行った。

――――――――――――――――――――――――――――――――――
 12月31日 年越し大神楽当日

 大神楽特設会場ではライブが行われ、会場付近では因幡国から出張してきた肉料理の屋台が立ち並んでいる。酒も無料で配られ、町はごった返した人出で大賑わいだった。

 その喧騒から離れたところに熊若は立っていた。

「やっぱり、来たのね――蕨姫の屋敷に」

 暗闇から覆面姿の女が声をかける。

「熊若君は優しい。きっと犠牲が少なくてすむ方法を選ぶと思っていたわ。今日なら出払う者も多く、蕨姫の警護も少ない」

「……小夜ちゃん、帰るんだ」

「さっき、蕨姫が戻ってきたのを見たわよね。門番はわたしに任せて!」

 熊若の制止も聞かずに、小夜は飛び出していく。
 舌打ちをすると、熊若は塀を乗り越えた。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 広くない屋敷である。蕨姫いる場所を熊若はすぐに見つけることができた。
 熊若の尋常ではない気配を感じて、蕨姫は身構える。

「熊若様、酔っての振る舞いではないようですね」

「蕨姫、草薙の剣の在り処を教えてほしい」

「――お断りします。答えるのはスサノオ様の妻になったときと言ったはず」

「痛い目に……、会ってもですか」

 熊若は針剣を抜いた。
 蕨姫は怯まず前に出る。

「熊若様らしくはありませんわ。なぜ夜分に? やましいことがあるのですね」

「やましいだと! 好きな女が苦しんでいる! それを助けたい! そのためなら!」

 蕨姫は真っ直ぐな目で熊若を見つめる。
 熊若は目をそらす。

「鬼になるとでも言うのですか?」

「そうだ! 僕は! 鬼に――」

 熊若が針剣を振りかぶる。

「血迷うたか! 熊若殿!」

 熊若の身体が真横に吹っ飛ぶ。
 起き上がった熊若の前には、薙刀を持った巴御前が立っていた。

「そこを退け! 僕は聞かなきゃいけないんだ!」

 ヒュン、ヒュン、ヒュン、熊若が針剣を揺らし始める。

「蕨姫、どうやら熊若殿は正気を失っている。ここは逃げたほうがいい」

「待て! 僕には草薙の剣が必要なんだ!」

「草薙の剣? それをなぜ蕨姫に問うのです」

 巴御前の動きが止まり、庭へ降りる蕨姫を見る。
 その隙を逃さず熊若が攻撃を放つ。巴御前は避けきれず左腕に刺突を受けた。
 熊若の追撃を巴御前が必死で止める。

「くっ、逃がしはしない!」

 熊若は後ろに下がると、太い針剣を抜いた。

「暗がりに隠れても無駄だ。飛剣――夜雨」

 針剣から飛び出した針が真っすぐ蕨姫に迫っていった――。
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