革命好きが源平時代に転生したら ~いい国作ろう平民幕府~

キムラ ナオト

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13.草薙の剣編

第89話(1186年2月) 最後の機会

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 霧の神社・境内

「待て! 草薙の剣を傷つけてはならぬ!」

 安倍国道は陰陽師と因幡衆に攻撃停止を命じた。
 チリン、チリン。手にした鈴を鳴らす。

「やめろ! 神器を何と心得る。そうだ、そなたも霧の神社の住人になればよい。そうすれば百号と一緒に暮らせる。良い考えだと思わぬか?」

「断る。蓮華ちゃんを治す方法を考えろ。それまで草薙の剣はお預けだ」

 熊若は草薙の剣を構えたまま、後ろへ下がっていく。

「待て! 待つのだ! 他の願いなら聞いてやる」

 国道は悲痛な声をあげた。

「いいか、よく聞け。草薙の剣を法皇に献上すれば、その功により私の娘は後鳥羽天皇の后になる。男子が生まれれば、あの平清盛や藤原摂関家に並ぶことができるのだ。私はずっと思っていた。陰陽術では数百人しか操れない。何代に渡って研究していてもだ! だが、天皇の外戚になれば何百万人も操ることができる。
 だがな、安倍家の血筋ではどうあがいても無理だった。だから私は気づかれぬよう、少しずつ法皇に術をかけ機会を狙っていた。そして、今、ようやく巡ってきたのだ。草薙の剣によって!」

「何を言っている?」

「私に剣を渡せば、百号の代わりの女などいくらでも用意してやる。そう言っておるのだ。だから、そんな愚かな真似はするな」

「そうかな。僕は愚かではない。このまま帰ってお前に蓮華ちゃんを治させる」

 興奮していた国道の表情が冷めた。

「――いいや、愚かだ」

 ターン!
 熊若の身体が前に弾け飛び、草薙の剣が手から離れた。すぐに因幡衆が俊敏な動きで剣を奪い取る。
 熊若は転がって大木を背にできる位置で針剣を抜いた。
 国道は前に出て手を挙げる。

「火縄銃を忘れていたのか? フハハハ!茶番は終わりだ」

「茶番?」

「草薙の剣を手に入れた後、そなたを生かすつもりなどなかった」

「同感だね。僕もお前だけは許すつもりはなかった」

 国道は熊若の身体を眺めて言う。

「ふん、怪我をした体で何をほざく――だが、そなたはいい肉体をしている。最後の機会をやろう。実験体になれば生かしてやる。どうだ、私は優しいだろう?」

「お前には最後の機会も与えない」

 国道はあきれた顔をすると首を振った。

「怪我のせいで正気を失っているようだな。まるで話がかみ合わぬ。もうよい――死ね」

 国道が手を振り下ろした。
 だが、陰陽師も因幡衆も襲い掛からなかった。

「どうした? なぜ攻めかからぬ」

 陰陽師の一人が国道に言う。

「安倍様、門のほうから争うような声が聞こえませぬか?」

 ターン! ターン! 
 門のほうから傷ついた因幡衆が走ってきた。

「敵襲です! 武士の大軍が神社を取り囲んでおります!」

「……いったい何だというのだ。陰陽師は火縄銃を取りに行け! 因幡衆は霧を濃くするのだ!」

 皆が走っていった。国道が熊若を見る。

「出雲軍か?――いや、大勢の兵が源氏に気付かれずに京へ潜入できるわけがない……」

「まだ気づかないのか。愚かな陰陽師よ。源氏の兵だ」

――――――――――――――――――――――――――――――――――
 霧の神社・門前

「安倍晴明神社。塀を巡らせ門まである。よくこれで神社を名乗れたものよ――法皇の懐刀・安倍国道。危険な男だ」

 伝令が中原広元の前に走ってくる。

「中原様、神社の中には異形の者や、見知らぬ武器を使う者がおり、損害が200を超えております!」

 中原広元は舌打ちした。

――100足らずの敵に何というざまだ。

 広元の側に興奮した梶原景時がやってくる。

「この強さにあの武器、義経がいるに違いない。中原殿、感謝するぞ」

「景時殿、何度もいうがここに義経がいる確証はありません。私が掴んでいるのは――」

「いいや、いないわけがない! 中原殿、念を押すが手柄はすべてわしの物で良いのだな」

 まとわりつくような景時の視線が広元には不快だった。

「私は手柄に興味はないし、兵を集めたのも景時殿だ。存分に働かれよ。ただし――」

「針剣を持つ男と包帯女には矢を向けない。有能な間者は大事なのはわしもわかっておる。では、わしも行く。ものども! ついてこい!」

 号令をかけると景時は神社の中に突入した――。
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