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終.最後の戦い編

第112話(1192年7月) 関ヶ原の戦い②

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 出雲・源氏両軍が関ヶ原で戦闘をはじめてから2週間たったが、戦況は一進一退を続けていた。火縄銃数の差を補うため、源氏軍の戦術は昼には砦で防戦し、夜は切り込みをかけてきた。

 弁慶が本陣に入ってくる。

「捕らえた者に吐かせたが、切り込みは西国から逃れた豪族ばかりだそうだ。やつらも領地を取り戻したくて必死だ」

「坂東武者は温存か。簡単には決戦に応じてくれないね。蒸気戦車はどうなっている」

 戦車といっても蒸気トラクターの上に大砲を乗っけただけの代物だ。

「まだ10両程度だな。備前(岡山県東部)からは、鉄道が無いのですぐには運べぬ。それはそうと、義仲から越中(富山県)に入ったと知らせが来た。鎌倉を挟み撃ちにできぬのであれば、呼び戻してはどうだ?」

「知らせを送るだけでいい。俺たちがここで主力を引き付けているから、義仲は思う存分暴れられる。戦車が100両を超えるのを待ち、総攻撃をかける」

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 京都御所・庭

「熊若よ、待つのだ! 行ってはならぬ!」

 鴨長明が熊若を止める。

「法眼様が苦戦しています。じっとしてはいられません!」

「比叡山には西国から逃れた者も含め2万の法師武者がいる。1万の兵を率いて行けば、残りは5000。兵糧の守りはどうする。補給の重要性がわからぬそなたではあるまい!」

「関ヶ原で負ければ無意味です! それに戦いが始まってからは、比叡山が動く気配がありません」

「それはそなたがよく口にする思い込みではないのか!」

 2人の口論を聞き、神楽隊が集まってきた。
 蓮華が長明に訴える。

「熊若君の代わりにわたしが5000で京を守ります! だから熊若君を行かせてあげてください」

「そなたはもう神楽隊隊長ではない。兵事に口を挟むな!」

「たしかにもう神楽隊メンバーではないわ。でも一騎当千の兵にはなれます」

 身体が回復した蓮華だったが、神楽隊メンバーに遠慮して復帰はしていなかった。しかし、レジェンドとして尊敬は集めていた。

「蓮華ちゃん、ダメだ!」

「いいのよ、熊若君。わたしも命がけであなたを支えたいの」

「私たちからもお願いします! 蓮華様の願いを叶えてあげてください!」

 神楽隊メンバーが口をそろえて嘆願する。
 長明が大きく息を吐いた。

「よかろう。ただし連れて行く兵は半分の5000だ。それ以上は許さぬ」

「長明様! それでは援軍の効果が少ない!」

 蓮華は熊若の両肩を掴む。

「聞いて熊若君、長明様は譲歩したわ。これ以上はわがままになる。熊若君はスサノオ様の一番弟子なんでしょ? きっと5000の兵で最大の効果を生む兵法を思いつくはず。わたしはそう信じているわ」

 熊若は蓮華の手を握る。

「蓮華ちゃん――わかった。やってみる!」

―――――――――――――――――――――――――――――――――――
 関ヶ原の東・源氏軍本陣

 大江広元と御家人たちの前で、比叡山から来た法師武者が報告していた。

「京より出雲の援軍が向かった模様。九条様が攻めて良いかと聞いてまいれと」

 関白・九条兼実は後鳥羽天皇とともに比叡山に避難していた。

「いつの話か? 援軍の数は?」

「5日前です。数は大軍でした。5000から1万ぐらいかと」

「速さ、正確さ、ともに情報の質が低いな。関白様も苦労が多そうだ」

 広元は上を向いて思案した後に言った。

「――戻って伝えよ。兵糧を狙えと。我が軍も呼応して動く」

「承知しました! 九条様もきっとお喜びになります」

 法師武者が立ち上がると陣から出て行くと、陣がにわかに活気づいた。

「誠か! 執権! 戦わせてくれるのか!」

 侍所別当(長官)の和田義盛が、関東御家人の声を代弁するように言った。

「皆の者、よく我慢してくれた。これより我が軍は攻めに転じる! 全騎馬隊2万を動かす。すぐに支度をしろ」

「「「御意!」」」

 源氏軍の陣中が闘志に包まれた。
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