神様、ごめんね

ロヒサマ

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第十三話【恋敵との出会い】

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 奈良から帰って来た日。学校には行かずゆっくりした。ここ何日かは衝撃的な事が多くて、いつもより疲れていたのどろう。夕食を食べた後はすぐにベットに潜り込み、気付いたらコンタクトレンズを付けたまま、朝まで眠ってしまっていた。逆に普段はどれだけのんびりと過ごしていたかが浮き彫りになったとも言える。
「目、痛い」
 朝起きてすぐにとりあえずコンタクトを外し、お風呂場へ行った。シャワーから上がり、ドライヤーで髪を乾かす。制服に袖を通し、通学の準備をする。いつも通りだとここでコンタクトするんだけど、あれ? コンタクトどこに置いたっけ。いつも置いてある場所になかった。
「あちゃー、予備なくなっちゃったよ。今日買いに行かなきゃ」
 目も痛くなってたし、とりあえず今日は一日メガネで過ごそう。朝ご飯を済ませて、私は学校へと向かった。

「おはよう、美徳実。なんか久しぶりな感じだわ。今日はメガネなのね」
 今日の一美ちゃんは早起きだった。ギリギリに学校来ることが多いから、私より先に来る事は稀だ。
「うん、久しぶり。今日は早いんだね。何かあったの?」
 一美ちゃんは窓の方を向いて、話し始めた。その瞳は新たに何かを決めたんだと思わせる色味をしていた。
「ねぇ、美徳実はあいつの事、改めてどう思う?」
 突然の質問に、思わず鞄を掛け損ねて落としてしまった。心臓に直接耳があったら、私は病院行きだったかも知れない。
「あいつって、もしかして世中先輩のこと?」
「そう」
 彼女の見る窓の外には、散り終えた桜の樹が光に照らされて未だに輝きを保っている。
「私ね、美徳実がいない間、やっぱり思い出してたの。その四葉のキーホルダーをプレゼントされたって聞いた時には、何かちょっとがっかりだったけどさ。でもね、最初はただの変態だと思ったんだけど、さらっと危機から救ってくれたじゃない。あれから結構な時間、頭に浮かんでは消えていくわけ。んで気付いちゃったんだよね」
 一美ちゃんの綺麗な顔がこちらへ振り向く。直球なことは知ってる。でもあまり聞きたくない。次に言う言葉は良く分かっていたから。
「あいつのこと、やっぱり好きになっちゃってるみたい」
「そ、そうなの? 会ったばかりで急ぎ過ぎてないかな?」
 私は普段あまりしないのに、反論を口に出してしまう。いつもだったらすぐに背中を押している。一美ちゃんなら大丈夫だよ、って。でも自分の気持ちを知ってしまった後だと、無意識に出る言葉はどうしようもなく素直だった。
「あれ、意外な反応ね。もっと驚くと思ってたわ」
「え、お、驚いてるよ。そうだよね、なんか運命的な出会いだったもんね」
 そう言いながらも心の中で『私だって』と思ってしまう自分がいた。そして『私も』なんて言えないいやらしさを感じた。

「本当びっくりしちゃうわ。でも会った日にちなんて関係ないと思うのよ。だってそうでしょ? どれだけ過ごしたかじゃなくて、どう過ごしたか、だと思うわけ」
 凛とした態度に伴う言葉はとても説得力があった。私の心の中には、解きかけのジグソーパズルを途中から奪われた映像が浮かぶ。それだけ一美ちゃんの事を可愛いと思うし、私なんかが、と自信のなさが込み上げてくる。複雑な気持ちに、考える余裕なんて出てこなかった。
「あー、なんか話してたら余計に気になってきたわ。よし、時間もまだあるし、あいつの教室行くわよ!」
 すぐさま教室のドアまで走り出す恋する乙女を追いかけて、私は叫ぶ。
「まだ」
「まだ?」
「まだ、修学旅行から帰ってないよ!」

 あ、そうか。とゆっくりと戻ってきた。行動力の速さにも限度があると思うけど、一美ちゃんはそんなルール気にしないよね。
「それなら帰ってきたら、どう思ってるか聞きに行きましょう。いつ帰ってくるのかしら」
「今日の夕方には帰ってくるけど、そのまま自宅へ直帰らしいよ」
「え、何で知ってるの?」
「そ、それは先生が話してるのをたまたま聞いてて」
 世中先輩とLIMEしてたなんて今は言えないよ。こんなとこ行ったぜ、ってお寺の写真とか送られてきてるのも、二人きりの部屋でたくさんお話ししたことも。
「そっか。んじゃ明日までお預けかー」
「そうだね」
 そう言えばLIMEのアドレス知ってるじゃん、教えてよ。と言われなくてほっとしている。でもこのままじゃ一美ちゃんの猛アタックは目に見えている。脳裏に、大切なものが手を離れて行くような、階段を踏み外したような焦燥感が湧く。どうしよう。今の関係がなくなっちゃうのは、嫌だ。本当は応援したい、いつだって味方でいたい。でも今回は、今回だけは後悔したくない。そんなことを考えてる内に、あっという間に下校時間になった。

「でさぁ、そのツッコミがアホかー、とか言ってさ」
 私達は駅に向かって歩きながら、たわいもない会話を楽しんでいた。今朝の一美ちゃんの恋の顔は一旦どこかへ置いてきたようだったので、安心しきっていた。ホームに並び電車を待っていると、数分で次の電車がやってきた。
「そういえば最近ゲームやってないね?」
「まぁね、元カレと付き合って一緒にやってただけだし、今はもう無縁よ」
 それですぐ上手く出来ちゃう一美ちゃんは凄い。いつもすぐ上達する、天才タイプなんだよな。勉強は全くしないけど。束の間、電車が到着する。私達はドアが空いた瞬間に顔を見合わせて驚く。向こうも同じだったに違いない。
「世中先輩?!」
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