ひとりえっちが好きな♀と結婚して子供がいる♀の百合話(仮)

木村 卯月

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女の子には、センチメンタルなんて感情はない

Vamoose!(暴力描写あり)

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Vamoose! = 消え失せろ!
―――――――――――――――――――――
土屋さん「やばい、お父さんだ……」
私「……えっ?」

 ……おい、土屋さん。君は今、何を言ったのだ!?

 そういえば行為の最中、彼女の携帯電話がずっと震えていたような気はしていたが……そうか、アレは彼女のお父さんがガンガン電話を掛けていたからだったのか……

 私は警察に職務質問された時のように、あくまでも土屋さんの先輩を気取って(実際にそうなのだが)冷静に対応してしらばっくれる事にした。

 その一方で隣の彼女はどうしているかというと、神妙な顔付きをしており、それどころか萎縮してしまっているようにも見える。

 私は一応今でも空手を続けており、多少は腕が立つつもりだ。多少の面倒事なら対処できる自信がある。もっとも、こないだみたいな国家権力の場合はどうする事もできないのだがTT
 そしてこちらの事を威圧するように真正面に止められた車から降りてきた彼女の父親の顔を見て、私は冷静さを失ってしまった。

 車から降りてきたのは、突然退職してしまい行方の分からなかった、私の憧れの元上司、ヒロミさんだったのだ。この日は、女装をしていなかった。
 ……いや、まずヒロミさんに子供がいた事を知らなかったし、土屋さんとは苗字も違う。いい歳して(実は年齢不詳なのだが)女装をしている人が結婚しているかどうかなんて、考えもしなかった。それが今になって土屋さんの父親として目の前に現れたのだ。

(ヒロミさん、今何やってるんですか!?挨拶もできなかったし、ずっと気になってたんですよ)

 私も咄嗟とっさに車を降り、その言葉が喉まで出掛かったのだが、ヒロミさんの表情を見て声を出す事ができず、固まってしまった。
 とても久し振りに会った部下(私)に向ける態度ではなく。まるでこちらに対する怒りを無理矢理抑え込んでいるような感じで、生気がない。私のした事は、そんなにまでもこの人の怒りを買ってしまうような事なのだろうかと思ってしまった。

「ヒトミ、直ぐに済むから俺の車に乗ってて」
「はい……」
 ヒロミさんは私の車の助手席のドアを開けてそう言った。土屋さんに対しては特にこの場で叱るような素振りもなく。このまま大人しく連れて帰るのか、はたまたその怒りの矛先は私に向けられているものなのかと勘繰っていた。この人は普段、女装の有無にかかわらず自分の事を「私」と言っており「俺」なんて事は決して言わないのだ。

 どうやら、後者の方が当たっていたようだ。ヒロミさんは私の顔を見て、憐憫さも含めたような複雑な表情でこちらを見ている。

「……卯月、久し振りだね」
「……はい。お久し振りです」
「えーと……これは、二人は付き合ってるっていう解釈でいいのかな?」
 ヒロミさんは私が同性愛者である事を知っている、数少ない人間だ。この人の事を尊敬して心を開いていた私は、大体の事を包み隠さず彼(若しくは彼女)に話してしまったのだ。
 つまり、この件に関しては言い逃れができない。
「……はい。お付き合いしてます。こんな時間まで一緒にいてすいません……」
「まあ、ヒトミももう社会人だし、そこまで干渉するつもりはないんだけど……悪いけどしばらく、仕事以外でヒトミに会うの止めてもらっていいかな」
 口調はあくまで優しかったが、ヒロミさんの内に秘めた怒りは、どうやら相当なものらしい。こちらのいう事など、聞く耳も持たなそうだった。だがこちらも、いくら親だからといって納得できないやり方に少々憤りを感じてしまった。
「……暫くってどれくらいですか?」
「暫くは暫くだよっ!」
 ヒロミさんが今まで見た事もないような、声を荒げる反応を見せた。
「ちょっとヒロミさん、私はヒロミさんの事本当に尊敬してますけど、いくら何でもこのやり方は少し強引なんじゃないですか?」
「……卯月って、確か腕っぷしに自信があるんだったよな?だからそこまで高圧的な態度を取るのか?」
 高圧的な態度はそっちの方だろうと言いたかったが、言えなかった。
「卯月、いくら相手が男でも相手が俺なら勝てると思ってない?」
「ヒロミさんと喧嘩なんてしたくないんですけど……」
 そうは言っても実際、私より身長が低くて女装がさまになるくらい細身なのだ。見た目に影響がない範囲で多少筋肉が付いていたとしても、たかが知れている。
「確かに、普通に考えたらいくら女だからって卯月が俺に負けるなんて思わないよな……」
 ヒロミさんは薄気味悪い表情でぶつぶつと独り言のように喋りだした。
「よくテレビとかで女の人が襲われた時の護身術とか見るけどさぁ、あんなの嘘に決まってるじゃん。反復練習もしないで咄嗟とっさにできるものでもないし、キン〇マなんて女に蹴られても反撃できないほど効かないからね。目潰しだって余程の覚悟がないとできるものじゃない。じゃあどうしようか……」
 私は返事をしなかったというより、真面まともこの人の相手をしていなかった。こんな与太話、とてもじゃないが付き合っていられない。
「想像してみてよ、昔小学校の時にさ、大柄な男の先生が3、4年生くらいの生徒に倒されちゃったんだ……こんな風に!」


「ぐはああああああああッ!!」


 !!!!!!!!!!!!
 鳩尾の辺りに衝撃が走り、私は悶絶してその場に倒れ込んだ。苦しくてまともに呼吸もできない。

 ヒロミさんは不意を付いて、私の鳩尾に全力でパンチを放ったのだ。

「そしたらやっぱりこうなった。大柄な先生が倒れて苦しんでたよ。こんなの喰らいたくないよな……」
 一向に治まる気配のないこの地獄のような苦しみに加え、立ち上がってやり返そうそする精神までへし折られてしまい。目から涙が零れだした。
「せっかく決まったヒトミの仕事を休ませたり辞めさせたりしたくないから、暫くの間仕事以外でヒトミに会わないでね……」
 僅かな意識の中で地面から見上げたその時のヒロミさんは、暗くてはっきりとは見えなかったが、憐れむような表情をしていた。
「……はい……」
 それが必死で呼吸を整えて精一杯絞り出した私の返事だった。

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