キミを好きな僕と僕を嫌いなキミ

焔 はる

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5:Rain dance

5-3

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今回の出張・・・

結論から言うと、平坂さんの心配は杞憂に終わった。

俺の意気込みも、蓮見さんのボディガードになろうと張り切った鼻息も、全く持って無意味だった。

「おらおらどこのオヤジだぁぁん?!」と、鎧兜に刀を差して、討ち入りの如く受付に赴けば、なんとタイミングの悪い事に・・・?その部長とやらは、過去の悪行の数々が奥方にバレ、家庭内で内戦状態となり、本日臨時休暇となっているという話・・・(そこまで説明してくれちゃっていいのかしら受付のおねぇさん。)

というわけで、俺と蓮見さん、代理の課長の打ち合わせは滞りなく終了し、「わざわざお越し頂いたのに申し訳ありません」とご丁寧に謝罪を受け、仙台のお土産だと、有名な<笹かまぼこ>やら<萩の月>を頂き、ビルを後にしたのだった。


「・・・蓮見さん・・・俺、闘う気満々だったんですけど・・・」

「えぇ・・・私も・・・何かされたらと思って・・・」

俺と蓮見さんは、近くにあった公園のベンチに座り、身構えていた分の脱力感でしばし、風に吹かれていた。

「えッ・・・ちょ、蓮見さん・・・?」

バッグに手を入れた蓮見さんが何を取り出すのかと一瞬背筋が冷えたが、姿を現したのは、手のひらに収まる、防犯ブザー。

「・・・な、んだぁ・・・よかった・・・スタンガンとか万が一ナイフみたいなのだったらどうしようかと・・・」

「馬鹿ね、これはあなた避けでもあるのよ。馬鹿なことしたら栓引き抜くから。」

「・・・・・・も~~・・・まだ信用されてないんですかぁ・・・ちょっとショックだなぁ・・・そんな、防犯ブザー鳴らされるようなこと、しませんよぉ、ボクは。約束は守ります、頑張ってるんですよ、これでも。」

ちょっと拗ねて見せて、喉に流し込んだお茶。

それを、真意を測るようにジッと見つめる蓮見さん。

その手の中では、防犯ブザーがコロコロと転がされている。

「・・・まぁ・・・不可抗力、だったとはいえ・・・今日駅で触れてしまったのはすいませんでした・・・としか・・・」

ハプニングだけど、この出来事を蓮見さんがどうジャッジするのか、思い返しても、何かそれ以上やましいことはしてないよな・・・と不安になる。

「・・・はぁ・・・」

息を詰める2人の間に落ちたのは、蓮見さんの溜め息。

ビクっと身構えていると、

「・・・・・・あれは・・・あの出来事すらあなたを責めたら、私は・・・なんていうか・・・今以上に自分を嫌いになるわ。」

鼻で笑うのは、俺に対してではなく、「嫌い」と言った自分に対して・・・。

遠く、見つめる瞳。

子供の笑い声や車の往来、騒がしさも遠く感じる、寂しいそうな横顔から、俺は目を離せなかった。

「・・・自分のこと、嫌いですか・・・?」

俺の言葉に揺れたように見えた瞳は、それでも俺を映す事はなく、小さく息を吐いて、

「・・・嫌いよ。」

「・・・・・・俺は、好きです。」

「・・・ふふ、そうでしょうね、あなたはあなた自身の事が好きってわかるわ。」

「違います!蓮見さんの事です!!」

声を張り上げて、思わず立ち上がった俺に、さすがに驚いた蓮見さんは俺を見上げた。

周囲を行き交う人たちがチラっとこちらを見ては、大して興味もないし、揉め事に関わりたくもないし、という様子でさっさと通り過ぎて行く。

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