キミを好きな僕と僕を嫌いなキミ

焔 はる

文字の大きさ
58 / 60
9:タイトル未定

9-5

しおりを挟む
「ん。拭いて、綾さん」

「・・・は?」

え、これは何?私に拭けと言ってるのか??

熱で無駄に色気が増して、甘えん坊発動のこの男は、パンイチの格好で無防備に私に両手を広げて・・・

・・・私に、拭けと・・・??

「・・・っ・・・まだ、用意してないから・・・向こうで・・・」

「やだ。早く。俺の事拭いて」

「ちょっ・・・」

「・・・汗かいたから触りたくないの・・・?」

迫りくるのは先日触りまくった裸体の若者。

触りたくないの?じゃない!

反論は許されず、掴まれた手は私の気持ちが追いつかないまま、熱を持つのにひんやりとした肌に吸い付くように押し当てられた。


「・・・あは、ドキドキしてる、俺。」

薄い滑らかな皮膚の下で響く命の音。

「・・・・・・も・・・や、め・・・・・・」

「綾さん・・・?」


ついに耐えきれなくなって、私はズルズルと座りこんだ。

次々に展開される、甘えん坊忽那の攻撃。

かわそうとしても、今まで保っていた距離の堤防は壊し、壊されて、簡単なバリケードしかないに等しい今の私たちのディスタンスは、熱に浮かされた忽那くんの可愛さも・・・いや、そんなまやかしただの幻想だとしてもタチが悪く、私は逃げ場を失った。


「ごめんなさい・・・」

「え・・・?」

「・・・・・・困らせてるってわかってるのに、俺・・・綾さんが俺に困ってくれるのが嬉しい・・・。」

「・・・!」

「・・・・・・でも、ほんと・・・嫌な事はしてほしくないから、俺、シャワー浴びてきますね。」


・・・・・・私の手を握っていた熱くて硬い手が離れていく。

傷つけたかもしれない・・・ギリギリのラインを保って、距離感を維持してくれているのは忽那くんだ。


「あの・・・っ」

「?綾さん?」

「・・・ごめん」

「え?何がですか??」

「だって・・・ごめん・・・できなくて・・・」

「・・・・・・綾さん、俺は綾さんがしたくない事、できない事を知れてよかったって思ってます。俺こそ・・・調子に乗ってすいません・・・。」

忽那くんが、ペコ、っと頭を下げ、再び私を見て微笑む。

けれど、こうして私を追い込まないで、追い詰めないでいてくれる忽那くんに私が救われているのも確かで。

「・・・綾さん?」

「・・・・・・ありがとう」

同じようにペコっと頭を下げた私に、忽那くんが驚いている。

「・・・私、前より・・・嫌じゃないよ・・・嫌じゃないけど・・・」


・・・・・・受け入れる事ができない、『苦痛』に感じる事がある。


距離感が近くなる。

少しずつ、少しずつ、隣にいても苦痛じゃない、心の準備もできないままに触れられても怒りが湧くことはほぼなくなった。

嫌悪感や苦痛が完全に消えているわけじゃないけど、以前よりは格段に忽那くんとの距離は近くなっている。

物理的な距離感だけではなく、心の距離も・・・。


「嫌じゃないなら、それで十分です。嫌じゃないからって、無理に一歩進まなくてもいいんじゃないですか?俺は、今のこの距離感を綾さんが許してくれている事がすごく嬉しいです。」

「・・・・・・手。」

「?手・・・?」

差し出された手から、人差し指を握る。

「・・・・・・今日・・・一緒に寝よ・・・・・・?」

「え・・・でも・・・無理、してたり、気ぃ遣ったり・・・」

「してない、私がそうしたいから・・・」

「・・・ふ~ん・・・ぼくはいいですよ?願ったり叶ったり・・・綾さんに寝かしつけてもらいますからね?」

「手、つなぐだけよ」

「あ、手はいいんですね?!ふふ、やったぁ~。じゃあ、ちゃっちゃとシャワー浴びてきます!」


・・・嫌じゃない。

それに、こんな事でも喜んでくれる彼を可愛いと思う。

こんな事しかできない私と一緒にいる事を喜んでくれる・・・それに少しずつ、応えられたら、と思う。


・・・忽那くんの手を握っていた手が、僅かに震えていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。 **2026.01.02start~2026.01.17end**

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

身体の繋がりしかない関係

詩織
恋愛
会社の飲み会の帰り、たまたま同じ帰りが方向だった3つ年下の後輩。 その後勢いで身体の関係になった。

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

処理中です...