2 / 617
一夜【 淡き光 】
1-2
しおりを挟む
職場に近い場所ではなく、私は通勤にある程度時間がかかる場所にマンションを借りた。
家から最寄りの駅までは徒歩10分。
会社の最寄り駅まで電車で20分。
そこから徒歩10分。
それが私なりの丁度いい時間。
このマンションを選んだ理由は、最上階の6階からの景色。
遠くの街の、ぼんやりと灯る燈が気に入ったのだ。
住宅街からも少し離れた立地にあるマンションは、騒音に悩まされることもなく、ある種、隔離されたような静けさだった。
鍵を取り出しながらエレベーターを降りると、部屋の前に座り込む人影が目に入る。
・・・また来てる。
その人影は、私の足音に気づき顔を上げた。
「やっと帰ってきた~」
よく通るのに間延びしたような、甘えたような独特な、いや、残念な話し方。
「また来たの・・・」
さっきは心で思っただけの本音が、今度はきちんと「本音」として口をついた。
私は玄関前にいるそれを一旦無視して鍵を開けて部屋に入る。
その後ろを当たり前についてくるのは、パンプスを履いた私(6cmヒール+で155cm)を、更に上から見下ろすバカデカい男。
2、3年前に聞いた時で185cmと言っていた気がする。
「またそんな言い方する~。幼馴染みが来たらダメなの?」
勝手知ったるという態度で、ボディバッグを部屋の隅に置き、靴下を脱ぎ、洗面所で手を洗い、冷蔵庫からペットボトルのアイスコーヒーを取り出してグラスに注ぐ。
それを手にリビングへと移動すると、ベランダへ続く窓を開けて風を入れた。
少し冷たさを含んだ風が部屋へと流れ込む。
「はぁ~、涼しいねぇ」
テーブルの前に腰を下ろし、呑気に風を浴びている。
私はそれを横目にシャワーを浴びに向かう。
奴は放っておいても過ごしやすいように勝手にやるので、気にしなくてもいいのだ。
3歳年下の幼馴染み、【時永桜太】、24歳。
かれこれ20年来の付き合いだ。
私が小学生1年生になった冬、幼稚園児だった桜太と歩き始めたばかりの妹と両親というその一家は隣の家に越してきた。
気が合ったらしいうちの両親と桜太の両親は、ことあるごとに旅行やら、キャンプやら、誕生日パーティにクリスマス、あらゆるイベントを企画し、あちこちへと出かけた。
それは子供たちが成人し、家を離れた今も夫婦同士良好な関係として続いている。
家から最寄りの駅までは徒歩10分。
会社の最寄り駅まで電車で20分。
そこから徒歩10分。
それが私なりの丁度いい時間。
このマンションを選んだ理由は、最上階の6階からの景色。
遠くの街の、ぼんやりと灯る燈が気に入ったのだ。
住宅街からも少し離れた立地にあるマンションは、騒音に悩まされることもなく、ある種、隔離されたような静けさだった。
鍵を取り出しながらエレベーターを降りると、部屋の前に座り込む人影が目に入る。
・・・また来てる。
その人影は、私の足音に気づき顔を上げた。
「やっと帰ってきた~」
よく通るのに間延びしたような、甘えたような独特な、いや、残念な話し方。
「また来たの・・・」
さっきは心で思っただけの本音が、今度はきちんと「本音」として口をついた。
私は玄関前にいるそれを一旦無視して鍵を開けて部屋に入る。
その後ろを当たり前についてくるのは、パンプスを履いた私(6cmヒール+で155cm)を、更に上から見下ろすバカデカい男。
2、3年前に聞いた時で185cmと言っていた気がする。
「またそんな言い方する~。幼馴染みが来たらダメなの?」
勝手知ったるという態度で、ボディバッグを部屋の隅に置き、靴下を脱ぎ、洗面所で手を洗い、冷蔵庫からペットボトルのアイスコーヒーを取り出してグラスに注ぐ。
それを手にリビングへと移動すると、ベランダへ続く窓を開けて風を入れた。
少し冷たさを含んだ風が部屋へと流れ込む。
「はぁ~、涼しいねぇ」
テーブルの前に腰を下ろし、呑気に風を浴びている。
私はそれを横目にシャワーを浴びに向かう。
奴は放っておいても過ごしやすいように勝手にやるので、気にしなくてもいいのだ。
3歳年下の幼馴染み、【時永桜太】、24歳。
かれこれ20年来の付き合いだ。
私が小学生1年生になった冬、幼稚園児だった桜太と歩き始めたばかりの妹と両親というその一家は隣の家に越してきた。
気が合ったらしいうちの両親と桜太の両親は、ことあるごとに旅行やら、キャンプやら、誕生日パーティにクリスマス、あらゆるイベントを企画し、あちこちへと出かけた。
それは子供たちが成人し、家を離れた今も夫婦同士良好な関係として続いている。
0
あなたにおすすめの小説
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
密室に二人閉じ込められたら?
水瀬かずか
恋愛
気がつけば会社の倉庫に閉じ込められていました。明日会社に人 が来るまで凍える倉庫で一晩過ごすしかない。一緒にいるのは営業 のエースといわれている強面の先輩。怯える私に「こっちへ来い」 と先輩が声をかけてきて……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる