徒然なる恋の話

焔 はる

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十二夜【時を超える花言葉】

12-3

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「・・・椎娜・・・ほら、延命してよ・・・」


「・・・じゃあ・・・目、閉じて・・・」


俺の左腕に頭を乗せて、椎娜の左手が頬に触れた。

言う通りに瞳を閉じたのに、一向に待ちわびる柔らかさはやってこない。


「・・・むかつく・・・」


「・・・え、椎娜さん?」


「・・・・・・綺麗で、カッコイイの、むかつく・・・。あ、目は開かないでくださぁい。」


突然どうしたんだ(笑)


「しぃちゃん、俺、今この顔面になったわけじゃないんだけど(笑)」


「今までは気にした事なかった。」


「・・・わぉ・・・。」


「・・・・・・ほんとに、私の彼氏?」


「・・・他の誰のでもない、あなたの彼氏ですよ。」


頬から顎のライン、唇、鼻に触れる指がくすぐったい。

耳の下から首へ降りる指が鎖骨に触れ、横向きの体勢から、仰向けになるように促したいのか胸を押される。


俺の瞳に映ったのは、じっと俺を見下ろす椎娜。

左手が鎖骨から胸へと動き、椎娜がつけたシルシが消えてしまった心臓の上で止まる。


「・・・椎娜?どうした・・・?」


「・・・・・・わかんない・・・・・・」


ぶわっと盛り上がった涙の淵はあっという間に決壊する。


涙は両目からボロボロと零れて、次から次に俺の顔に落ちて頬を滑った。


嗚咽を漏らすわけでもなく、それでも零れる涙。


椎娜本人ですら戸惑い、両目を手の甲で擦る。


「椎娜・・・おいで。」


起き上がって椎娜を抱き締める。


「・・・俺は、生きてるよ?」


「・・・うん・・・」


「ほら、動いてるでしょ?」


手のひらをその場所に触れさせて確認させる。


「動いてる・・・」


「・・・・・・今度は・・・、死なない・・・。」


「!」


「・・・・・・なんか・・・わかんないけど、今回は・・・俺、椎娜より先に死なないから。一緒に生きて・・・?」



涙がこんなに滝のように流れるなんて知らなかったけど、まさに滝のように涙は両目から溢れて2人の間に流れ落ち、シーツに吸い込まれていった。
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