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第二章 真夏の再会
呼ぶもの①
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光の溢れる川辺に戻ったけど、落ち着かない気分だった。
頭の中に浮かんだ光景はなんだったのだろうか。
美咲のことで、何か大切なことを忘れている気がしてならない。
光季は目を閉じ、失ったピースを探そうと試みた。
ゆっくりと記憶の淵に沈んでいく。
中学一年生の八月十五日、四つ年上の姉が交通事故で死んだことははっきり覚えているのに、事故の現場、状況、事故が起きた時に自分が何処にいたのかなど、なに一つ思い出せない。
どこかの病院の集中治療室の前で、手を取り合って祈る父と母、拳を握り締める響と一緒にいた場面だけなんとなく覚えている。
思い出そうとすると頭がズキリとした。
記憶の箱の底に眠る不穏な光景と姉の事故には何か関係があるのかもしれない。
根拠はないがそんな考えが頭を占めていた。
「なあ、そろそろ帰ろうぜ、光季」
陽平の目にははっきりと警戒心が滲んでいた。
急に背筋が冷たくなった気がして、光季は寒くもないのに二の腕をさする。
「そうだな」
光季と陽平は同時に腰を浮かせた。
それとほぼ同時ぐらいに、森付近の空間が裂けるのを光季は見た。
霊道が発生したのだ。
「陽平、すぐ換装しろ。霊道が開いた」
「マジかよ」
光季と陽平はすぐに霊体に換装した。
基本的に任務以外では基地の外で換装してはならない。
オーブにはGPS機能があり、霊体に換装すると霊力反応を基地でキャッチして、どこで誰が換装したか解るようになっている。
非番の自分達が基地の外で勝手に霊体になったことを知られたら怒られるかもしれないが、今は非常時だ。
「マジで霊道ができてるじゃねえか。さてと、どんな敵がでてくるだろうな」
楽しそうに口の端を吊り上げながら、陽平が霊道を仰いだ。
光季も彼と似たような表情を浮かべる。
いくら相手が襲ってくる妖怪とはいえ、戦うことは市民を守る為に合法化された殺戮行為だ。それでも戦うことを楽しいと感じる。
さっきまで美咲のことで悶々としていたのを忘れて、光季は高揚した。
二人が見守る中、爪痕のような闇から、艶やかな長い黒髪に一重のシャープな目をした、蘇芳色の着物姿の美青年が現れた。
「おでましだぜ。強そうじゃん」
陽平が口笛を吹いて満面の笑みを浮かべる。
一方、光季は唇を真一文字に結んだ。
彼を知っている、彼は危険だ。全身の細胞が叫んでいた。
「光季、会いたかった。私と一緒においで」
柔和な笑みを浮かべて青年が光季に手を差し伸べる。聞き覚えのある優しい声。
この声、さっき自分を呼んだ声と同じ声だ。
優しい声や顔とは裏腹に、彼の周囲にはどす黒い妖気が揺らめいている。
見た目で判断してはいけない典型例だ。
「あんた誰? なんでおれの名前を知ってんだよ」
驚きを隠し、光季は不敵な笑みを浮かべて相手を見据える。
長髪の男はすっと目を細めて、なんとも愛おしげな顔で光季を見下ろす。
「忘れてしまったのか? 前にも私と会っているだろう」
「はあ? 妖怪に知り合いなんていねーよ」
「つれないことを言わないでくれ。ほら、おいで」
長い指にしなやかな美しい手を男が伸ばす。
光季は光弾を浮かせて更に警戒の色を濃くした。
「おや、来てくれないようだな。ならば、実力行使をさせてもらおう」
青年の頭から細く反った長い二本の角が生えた。薄く開いた口からは牙が覗いている。
人間の姿に化けていたが、正体は鬼のようだ。
頭の中に浮かんだ光景はなんだったのだろうか。
美咲のことで、何か大切なことを忘れている気がしてならない。
光季は目を閉じ、失ったピースを探そうと試みた。
ゆっくりと記憶の淵に沈んでいく。
中学一年生の八月十五日、四つ年上の姉が交通事故で死んだことははっきり覚えているのに、事故の現場、状況、事故が起きた時に自分が何処にいたのかなど、なに一つ思い出せない。
どこかの病院の集中治療室の前で、手を取り合って祈る父と母、拳を握り締める響と一緒にいた場面だけなんとなく覚えている。
思い出そうとすると頭がズキリとした。
記憶の箱の底に眠る不穏な光景と姉の事故には何か関係があるのかもしれない。
根拠はないがそんな考えが頭を占めていた。
「なあ、そろそろ帰ろうぜ、光季」
陽平の目にははっきりと警戒心が滲んでいた。
急に背筋が冷たくなった気がして、光季は寒くもないのに二の腕をさする。
「そうだな」
光季と陽平は同時に腰を浮かせた。
それとほぼ同時ぐらいに、森付近の空間が裂けるのを光季は見た。
霊道が発生したのだ。
「陽平、すぐ換装しろ。霊道が開いた」
「マジかよ」
光季と陽平はすぐに霊体に換装した。
基本的に任務以外では基地の外で換装してはならない。
オーブにはGPS機能があり、霊体に換装すると霊力反応を基地でキャッチして、どこで誰が換装したか解るようになっている。
非番の自分達が基地の外で勝手に霊体になったことを知られたら怒られるかもしれないが、今は非常時だ。
「マジで霊道ができてるじゃねえか。さてと、どんな敵がでてくるだろうな」
楽しそうに口の端を吊り上げながら、陽平が霊道を仰いだ。
光季も彼と似たような表情を浮かべる。
いくら相手が襲ってくる妖怪とはいえ、戦うことは市民を守る為に合法化された殺戮行為だ。それでも戦うことを楽しいと感じる。
さっきまで美咲のことで悶々としていたのを忘れて、光季は高揚した。
二人が見守る中、爪痕のような闇から、艶やかな長い黒髪に一重のシャープな目をした、蘇芳色の着物姿の美青年が現れた。
「おでましだぜ。強そうじゃん」
陽平が口笛を吹いて満面の笑みを浮かべる。
一方、光季は唇を真一文字に結んだ。
彼を知っている、彼は危険だ。全身の細胞が叫んでいた。
「光季、会いたかった。私と一緒においで」
柔和な笑みを浮かべて青年が光季に手を差し伸べる。聞き覚えのある優しい声。
この声、さっき自分を呼んだ声と同じ声だ。
優しい声や顔とは裏腹に、彼の周囲にはどす黒い妖気が揺らめいている。
見た目で判断してはいけない典型例だ。
「あんた誰? なんでおれの名前を知ってんだよ」
驚きを隠し、光季は不敵な笑みを浮かべて相手を見据える。
長髪の男はすっと目を細めて、なんとも愛おしげな顔で光季を見下ろす。
「忘れてしまったのか? 前にも私と会っているだろう」
「はあ? 妖怪に知り合いなんていねーよ」
「つれないことを言わないでくれ。ほら、おいで」
長い指にしなやかな美しい手を男が伸ばす。
光季は光弾を浮かせて更に警戒の色を濃くした。
「おや、来てくれないようだな。ならば、実力行使をさせてもらおう」
青年の頭から細く反った長い二本の角が生えた。薄く開いた口からは牙が覗いている。
人間の姿に化けていたが、正体は鬼のようだ。
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