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第五章 音無の村
正体②
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勝てないのは悔しいが、通信で呼んだ他の隊員がくるまでの時間を稼げればそれでいい。
「待たせたな、水瀬くん、日向くん」
手に深紅の炎を灯した要が温羅に不意打ちで殴りかかる。
炎の推進力で繰り出された素早く重いパンチが温羅の顔面にまともに入った。
だが逞しい肉体の温羅はその場に踏みとどまり、要にカウンターパンチを見舞う。
要は腕を交差させてパンチをガードしたが、怪力に押し負かされて立った姿勢のまま五メートル程後ろに飛ばされた。
「大丈夫か、要」
カットラスを構えた優が要の横に並ぶ。
要は爽やかな笑顔で「平気だ」と応えた。
「退け、日向。俺にやらせろ」
疾走してきた虎徹が陽平をひらりと飛びこして温羅に切りかかった。
金砕棒を横なぶりにして温羅が虎徹を襲うが、虎徹は空中で身を捻って棒を避け、地面に着地すると同時に大きく踏み出した。白刃が鬼の腕を深く抉り、赤い血が地面を濡らした。
さすがは虎徹さん。光季は惚れ惚れするような虎徹の剣戟に笑みを浮かべる。
しかし、当の本人は若干不満そうだ。
「へえ、堅いな。俺の刃が直撃しても落ちないとは、切りごたえがありそうだ」
虎徹の灰色の瞳がギラリと妖しく輝く。温羅に負けないくらい獣じみた顔だ。
敵ならばぞっとするが、味方だと頼もしい限りだ。
光季は戦場を見渡した。阿曽とは京弥と武志が対峙し、遠方から沙奈が弓で、慧士がライフルで援護をしている。
温羅と対峙している虎徹たちの援護に回った方が戦力のバランスがよさそうだ。
光季は光弾を浮かせた。
「そちらさんに不利な状況だぜ。二度とこちらの世界にこないと約束して降参するなら、両腕を落としてから大人しく異界に帰してあげるけど、どうする?」
戦いながら優が温羅に交渉を持ちかける。
戦況は誰がどう見ても温羅が劣勢だ。五体不満足になるとしても、死ぬよりは逃げ帰る方がましだろう。
苦渋の選択ではあるが、光季ならば後者を選ぶ。
しかし、温羅は優の言葉に耳を貸そうとはしなかった。
「我が人間などに屈するはずがないだろう。誇りを捨てるぐらいなら、死を選ぼう」
「そうだろうと思ったけど、いちおう交渉しただけだよ」
木々を足場に温羅の上をとった要と陽平が温羅に襲い掛かる。
二人が注意を引いている隙に、虎徹と優が足元に切りかかった。
温羅が逃げられないよう、光季は背後から威力の高い光弾を飛ばして援護した。
五人に一斉にかかられた温羅は、虎徹と優に脛を切りつけられて仰向けに倒れた。
温羅の胸に飛びのり、優が野太い首にカットラスを宛がう。
温羅が暴れないように、陽平が薙刀で右手を地面に縫い付け、虎徹が日本刀で左手を突き刺した。
標本のように地面に縫い付けられた温羅の金の目が、憎々しげに光季達を見回した。
「さて、喋ってもらおうか。アンタらは人間を喰うために攫ったのか? まさか、全員食べたわけじゃないよね、この村で攫った他の連中はどうした?」
いつもの飄々とした笑みを潜めさせ、冷酷な眼差しで優が温羅を見下ろす。
優の鮮やかな翡翠色の瞳が、夜の森のように薄暗い鈍い輝きを放っていた。
普段の彼とはまるで別人のようだ。
温羅が答えなければ優は本気で首を落とすつもりなのだろう。
温羅も刃が単なる脅しでないと気付いたようで、自供を始めた。
「村で攫った連中は依頼主に届けた。食ったのはほんの三人だ。
腹が無性に空いたから使いものにならなさそうな人間を選んで食べただけに過ぎぬ。
我の好物はいきのよい人肉でな。食欲を刺激する香りに勝てなかった」
死よりプライドを選んださっきまでとは真逆の従順な態度が腑に落ちない。
光季は薄気味悪さを覚えた。
尋問をする優もなにか引っ掛かるのか、怪訝な表情だった。
「依頼主はだれ?」
「聞いてどうする?知っても意味などないだろう」
「いいから答えろ。状況、わかってるでしょ?答えなかったら即アウトだよ」
「仕方がないな。依頼主は我が友、大嶽丸だ」
光季はびくりと肩を揺らした。
大嶽丸、姉の仇の鬼。
まさか奴の名前を聞くとはおもっていなかった。
温羅に大嶽丸について聞きたかったけれど、口を挟む隙がない。
無理やり質問を挟んでみようか。
いや、やめておこう。
弟の仇打ちに燃える文也と違って、自分は復讐なんて考えていない。
聞いてもどうしようもない情報だ。大嶽丸のことを考えるだけ時間の無駄だ。
光季の一人問答をよそに、優が尋問を続ける。
「なんで精神科医のふりなんてしていた?一件目と二件目は抵抗した形跡がなかったらしいけど、どうやって一度に何人も無抵抗で攫った?」
「クク、人間は脆い。甘言に騙され容易く闇に落ちた。精神科医、なかなか愉しい仕事だった。だが、そろそろ潮時のようだ」
意味深な台詞に優が警戒心を高めてカットラスを握る手に力を入れかけた時、パシャリと間抜けなシャッター音が響いた。
「はははっ、スゲーや。夜鴉の仕事現場、激写ってか?」
引き攣った笑いを浮かべてスマホを構えていたのは、北村だった。
異空間に取り込まれたということは、不運にも、北村は常人よりも霊力が高かったようだ。
夜鴉の注意が北村に向いた一瞬の隙に、温羅を案じて動きを止めていた阿曽が姿を消す。
「しまった、阿曽が消えたぞ!」
武志が警戒を促す。夜鴉が阿曽を見つけるよりも先に、阿曽は北村に近付いて彼をはがいじめにした。
人間の肉体は霊体や妖怪よりも格段に脆い。かなり不味い状況だ。
優の注意が僅かに温羅から逸れた。
豪快な立ち回りに反して精神科医をやってのけるほどの繊細さがある温羅が、その隙を逃すはずがない。
「さがれ!」
鋭く優が叫ぶ。温羅を囲んでいた光季達は反射的に温羅から離れた。
温羅の全身から炎が噴射されたのはそれとほぼ同時だった。
あと少しでも優の警告が遅かったら、全員まともにくらっていただろう。
突拍子もない予想外の攻撃に陽平が口笛を吹く。
一見呑気に見えるが、口元の歪な笑みを見ると、彼の米神に滲んでいる汗は熱気のせいだけではなさそうだ。
かくいう光季も背中に冷たい汗が流れるのを感じた。
さすがは甲種の鬼といったところか。
温羅の発した炎が地を這う。
ここが異空間でよかった。戦いの最中に数メートル四方の焼け野原を作ったとなれば、どんな批判が待ち受けていたことか。
厄介なのは妖怪だけではない。守られている市民も時には敵になる。
妖怪を駆除すればそれでいいわけではない。守れなければ百点満点ではないのだ。
被害があれば、それをもたらした妖怪よりも身近な夜鴉が悪者として槍玉にあげられる。
光季は村に向かうバスの中で虎徹が呟いた言葉を思いだした。
確かに、人助けで戦うのは得策じゃない。理不尽さに腹が立つだけだ。
「待たせたな、水瀬くん、日向くん」
手に深紅の炎を灯した要が温羅に不意打ちで殴りかかる。
炎の推進力で繰り出された素早く重いパンチが温羅の顔面にまともに入った。
だが逞しい肉体の温羅はその場に踏みとどまり、要にカウンターパンチを見舞う。
要は腕を交差させてパンチをガードしたが、怪力に押し負かされて立った姿勢のまま五メートル程後ろに飛ばされた。
「大丈夫か、要」
カットラスを構えた優が要の横に並ぶ。
要は爽やかな笑顔で「平気だ」と応えた。
「退け、日向。俺にやらせろ」
疾走してきた虎徹が陽平をひらりと飛びこして温羅に切りかかった。
金砕棒を横なぶりにして温羅が虎徹を襲うが、虎徹は空中で身を捻って棒を避け、地面に着地すると同時に大きく踏み出した。白刃が鬼の腕を深く抉り、赤い血が地面を濡らした。
さすがは虎徹さん。光季は惚れ惚れするような虎徹の剣戟に笑みを浮かべる。
しかし、当の本人は若干不満そうだ。
「へえ、堅いな。俺の刃が直撃しても落ちないとは、切りごたえがありそうだ」
虎徹の灰色の瞳がギラリと妖しく輝く。温羅に負けないくらい獣じみた顔だ。
敵ならばぞっとするが、味方だと頼もしい限りだ。
光季は戦場を見渡した。阿曽とは京弥と武志が対峙し、遠方から沙奈が弓で、慧士がライフルで援護をしている。
温羅と対峙している虎徹たちの援護に回った方が戦力のバランスがよさそうだ。
光季は光弾を浮かせた。
「そちらさんに不利な状況だぜ。二度とこちらの世界にこないと約束して降参するなら、両腕を落としてから大人しく異界に帰してあげるけど、どうする?」
戦いながら優が温羅に交渉を持ちかける。
戦況は誰がどう見ても温羅が劣勢だ。五体不満足になるとしても、死ぬよりは逃げ帰る方がましだろう。
苦渋の選択ではあるが、光季ならば後者を選ぶ。
しかし、温羅は優の言葉に耳を貸そうとはしなかった。
「我が人間などに屈するはずがないだろう。誇りを捨てるぐらいなら、死を選ぼう」
「そうだろうと思ったけど、いちおう交渉しただけだよ」
木々を足場に温羅の上をとった要と陽平が温羅に襲い掛かる。
二人が注意を引いている隙に、虎徹と優が足元に切りかかった。
温羅が逃げられないよう、光季は背後から威力の高い光弾を飛ばして援護した。
五人に一斉にかかられた温羅は、虎徹と優に脛を切りつけられて仰向けに倒れた。
温羅の胸に飛びのり、優が野太い首にカットラスを宛がう。
温羅が暴れないように、陽平が薙刀で右手を地面に縫い付け、虎徹が日本刀で左手を突き刺した。
標本のように地面に縫い付けられた温羅の金の目が、憎々しげに光季達を見回した。
「さて、喋ってもらおうか。アンタらは人間を喰うために攫ったのか? まさか、全員食べたわけじゃないよね、この村で攫った他の連中はどうした?」
いつもの飄々とした笑みを潜めさせ、冷酷な眼差しで優が温羅を見下ろす。
優の鮮やかな翡翠色の瞳が、夜の森のように薄暗い鈍い輝きを放っていた。
普段の彼とはまるで別人のようだ。
温羅が答えなければ優は本気で首を落とすつもりなのだろう。
温羅も刃が単なる脅しでないと気付いたようで、自供を始めた。
「村で攫った連中は依頼主に届けた。食ったのはほんの三人だ。
腹が無性に空いたから使いものにならなさそうな人間を選んで食べただけに過ぎぬ。
我の好物はいきのよい人肉でな。食欲を刺激する香りに勝てなかった」
死よりプライドを選んださっきまでとは真逆の従順な態度が腑に落ちない。
光季は薄気味悪さを覚えた。
尋問をする優もなにか引っ掛かるのか、怪訝な表情だった。
「依頼主はだれ?」
「聞いてどうする?知っても意味などないだろう」
「いいから答えろ。状況、わかってるでしょ?答えなかったら即アウトだよ」
「仕方がないな。依頼主は我が友、大嶽丸だ」
光季はびくりと肩を揺らした。
大嶽丸、姉の仇の鬼。
まさか奴の名前を聞くとはおもっていなかった。
温羅に大嶽丸について聞きたかったけれど、口を挟む隙がない。
無理やり質問を挟んでみようか。
いや、やめておこう。
弟の仇打ちに燃える文也と違って、自分は復讐なんて考えていない。
聞いてもどうしようもない情報だ。大嶽丸のことを考えるだけ時間の無駄だ。
光季の一人問答をよそに、優が尋問を続ける。
「なんで精神科医のふりなんてしていた?一件目と二件目は抵抗した形跡がなかったらしいけど、どうやって一度に何人も無抵抗で攫った?」
「クク、人間は脆い。甘言に騙され容易く闇に落ちた。精神科医、なかなか愉しい仕事だった。だが、そろそろ潮時のようだ」
意味深な台詞に優が警戒心を高めてカットラスを握る手に力を入れかけた時、パシャリと間抜けなシャッター音が響いた。
「はははっ、スゲーや。夜鴉の仕事現場、激写ってか?」
引き攣った笑いを浮かべてスマホを構えていたのは、北村だった。
異空間に取り込まれたということは、不運にも、北村は常人よりも霊力が高かったようだ。
夜鴉の注意が北村に向いた一瞬の隙に、温羅を案じて動きを止めていた阿曽が姿を消す。
「しまった、阿曽が消えたぞ!」
武志が警戒を促す。夜鴉が阿曽を見つけるよりも先に、阿曽は北村に近付いて彼をはがいじめにした。
人間の肉体は霊体や妖怪よりも格段に脆い。かなり不味い状況だ。
優の注意が僅かに温羅から逸れた。
豪快な立ち回りに反して精神科医をやってのけるほどの繊細さがある温羅が、その隙を逃すはずがない。
「さがれ!」
鋭く優が叫ぶ。温羅を囲んでいた光季達は反射的に温羅から離れた。
温羅の全身から炎が噴射されたのはそれとほぼ同時だった。
あと少しでも優の警告が遅かったら、全員まともにくらっていただろう。
突拍子もない予想外の攻撃に陽平が口笛を吹く。
一見呑気に見えるが、口元の歪な笑みを見ると、彼の米神に滲んでいる汗は熱気のせいだけではなさそうだ。
かくいう光季も背中に冷たい汗が流れるのを感じた。
さすがは甲種の鬼といったところか。
温羅の発した炎が地を這う。
ここが異空間でよかった。戦いの最中に数メートル四方の焼け野原を作ったとなれば、どんな批判が待ち受けていたことか。
厄介なのは妖怪だけではない。守られている市民も時には敵になる。
妖怪を駆除すればそれでいいわけではない。守れなければ百点満点ではないのだ。
被害があれば、それをもたらした妖怪よりも身近な夜鴉が悪者として槍玉にあげられる。
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