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第15話 再会と
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国に3つしかない、過去1万人以上の死者を出した高レベルダンジョンを抱えた街。
俺が彼女にフラれダンジョン踏破をして、全てが始まった街。
「ロイ兄、私、行きたくない」
「ろ、ロイ、ロイ! 本当にこんなにお金貰っていいの!? だっ、だって、ロイとダンジョンに行くにはお金払うって! 私、また何か勘違いして」
街の入り口でもたつく2人を宥める。ちなみにジェラルドは少し前に大層立派な迎えに連れられ消えた。お貴族様も大変なのだ。
「ミア、大事な話をするから今日は顔出してくれ。あとスイ、ダンジョン踏破に報酬は当たり前だろ。2人とも、一緒に潜ってくれてありがとな」
「う、うん! ありがとロイ!」
落ち着いたスイと、片足にしがみついて離れないミアを引っペがして抱え、数ヶ月ぶりにこの街に入った。
冷静に良く良く考えれば、俺は仕事を横取りしていきなり逃げ出し、数ヶ月も音信不通なんていうとんだクソ野郎だ。俺だったら二度と一緒に仕事したくない。
1年間、散々パーティメンバーに常識とチームワークを叫んでいた自覚はあるため、罪悪感が酷い。
「.......とっくに切られてるかもな」
「え、え? ロイ、ロイどうしたの? 何が切れたの? 大丈夫? わ、私の魔法でなんとかなるかな!? 攻撃魔法しか使えないけど、大丈夫かな!?」
「大丈夫だ、落ち着けスイ。それより、アイナとニコラがどこにいるか知らないか?」
「あ、それなら知ってるよ! い、いつもの宿に」
いるはず、とスイが言い終わる前に、どごんっ、と何かが壊れる音がした。ついで悲鳴。
嫌な汗が吹き出した俺は、さっとミアを降ろして駆け出した。
「うおあああああああ!!!」
野太い雄叫びが聞こえる。いや、これは雄叫びでは無いのだ。
「ニコラ!」
「ろおおおおおおおい!!」
スキンヘッドの大男、我がパーティの盾役であるニコラは、腰を低くしてこちらへ体当たりをしてきた。まともに受け止めれば吹っ飛ばされるので、さっと横に避けて真っ直ぐ突進して行ったスキンヘッド大男の首根っこを掴んだ。腕が抜けそうな衝撃。
「どこいってたんだよおおおおおお!!」
「悪かった!」
号泣したニコラにガッチリホールドされる。俺より2回りは大きな腕は、下手をせずとも抱きしめた俺をへし折れる。だがニコラは心優しい大男なのでその辺は信用している。
こいつが危険人物なのは別の点でだ。
ニコラは、普段はパーティ最年長の冒険者として落ち着きを見せる頼れる優しい男なのだが、腹が減るととりあえず建物や壁に体当たりし破壊行動に出るという危険人物だ。
ニコラと上手くやるには1日5食、おやつ付きを基本とする。
「ロイが消えちまって、俺ぁ心配で心配でよぉ.......! でも万が一帰ってきた時、拠点に誰か居ねえとなんねえから、探しにも行けなくてなぁ.......!」
「悪かった、とりあえず何か食いに行こう」
「ロイ、やっぱりお前は良い奴だなああああ!!」
ここまで泣くとは、相当腹が減っているらしい。後ろに控えた憲兵達が、りんご片手にじりじりと距離を詰めていた。ニコラがこの街に来てからの1年で、憲兵達も対処法を学んだのだ。本当に迷惑かけて申し訳ない。
街の外壁を若干壊したのはあとで平謝りするとして、とりあえず腹を満たしてやらねば延々と破壊行動が続くと動き始めた。
今日は頑なに歩いてくれないミアを小脇に抱え、慌てだしたので深呼吸をさせ酸欠になってしまったスイを担ぎ、隙あらばどこかへ突進しようとするニコラを誘導しながら、宿併設の酒場に入った。
「はぁ.......ダンジョンより疲れんなやっぱり.......」
「ロイ、どこいってたんだ一体。ミアもスイも、何ヶ月も戻ってこないなんて、心配したんだぞ」
俺の普段の食事の5倍の量を平らげ、腹が膨れて穏やかになったニコラが、大きな手でわしゃわしゃとミアとスイの頭を撫でた。
「ニコラ、アイナはどうした?」
「あぁ、部屋にいると思う。呼んでこよう」
宿の方に消えたニコラが戻ってきた時には、隣ににこにこと笑う赤茶の髪の女がいた。我がパーティのシーフ、アイナだ。
「ロイさん! よかった、無事で戻ってきてくれて。心配したのよ?」
ちなみに、我がパーティではミアと俺以外新聞は読まないので俺が何をしていたかを知らなくてもおかしくはない。むしろあの醜態を知らないでいて欲しい。
「それに、ニコラがロイさんが居ないと私は外に出てはいけないって言うから、ほとんど部屋から出られなかったの」
「アイナ、勝手して悪かった」
アイナは母性溢れる女性で、常におっとりと優しい。料理も上手だし気遣いもできる。だが、手癖が悪い。集団行動をする際、これが一番タチが悪い。しれっとした盗みがパーティのチームワークに1番影響するのだ。ある意味我がパーティ1番の危険人物である。
俺が隣にいると何故か俺からしか盗みをしないので、他所様に迷惑をかけずアイナを犯罪者にしないために、常に俺は身体中に小銭を隠し持つ1年を過ごした。
俺が逃げ出した後はニコラがアイナを何とかしてくれていたようで、アイナが牢では無く宿にいてくれたことに安心した。
「全員、聞いてくれ」
それぞれの騒がしさで席に着いた我がパーティメンバー達を真っ直ぐ見つめて。
「勝手をして、すまなかった」
頭を下げた。
そして、そのまま。
「俺が勝手をして踏破してしまった仕事の報酬は、今すぐ補填する。それが済んだら」
そう、彼らは冒険者だ。
「このパーティは解散だ」
ダンジョンへ潜る冒険者なのだ。
俺が彼女にフラれダンジョン踏破をして、全てが始まった街。
「ロイ兄、私、行きたくない」
「ろ、ロイ、ロイ! 本当にこんなにお金貰っていいの!? だっ、だって、ロイとダンジョンに行くにはお金払うって! 私、また何か勘違いして」
街の入り口でもたつく2人を宥める。ちなみにジェラルドは少し前に大層立派な迎えに連れられ消えた。お貴族様も大変なのだ。
「ミア、大事な話をするから今日は顔出してくれ。あとスイ、ダンジョン踏破に報酬は当たり前だろ。2人とも、一緒に潜ってくれてありがとな」
「う、うん! ありがとロイ!」
落ち着いたスイと、片足にしがみついて離れないミアを引っペがして抱え、数ヶ月ぶりにこの街に入った。
冷静に良く良く考えれば、俺は仕事を横取りしていきなり逃げ出し、数ヶ月も音信不通なんていうとんだクソ野郎だ。俺だったら二度と一緒に仕事したくない。
1年間、散々パーティメンバーに常識とチームワークを叫んでいた自覚はあるため、罪悪感が酷い。
「.......とっくに切られてるかもな」
「え、え? ロイ、ロイどうしたの? 何が切れたの? 大丈夫? わ、私の魔法でなんとかなるかな!? 攻撃魔法しか使えないけど、大丈夫かな!?」
「大丈夫だ、落ち着けスイ。それより、アイナとニコラがどこにいるか知らないか?」
「あ、それなら知ってるよ! い、いつもの宿に」
いるはず、とスイが言い終わる前に、どごんっ、と何かが壊れる音がした。ついで悲鳴。
嫌な汗が吹き出した俺は、さっとミアを降ろして駆け出した。
「うおあああああああ!!!」
野太い雄叫びが聞こえる。いや、これは雄叫びでは無いのだ。
「ニコラ!」
「ろおおおおおおおい!!」
スキンヘッドの大男、我がパーティの盾役であるニコラは、腰を低くしてこちらへ体当たりをしてきた。まともに受け止めれば吹っ飛ばされるので、さっと横に避けて真っ直ぐ突進して行ったスキンヘッド大男の首根っこを掴んだ。腕が抜けそうな衝撃。
「どこいってたんだよおおおおおお!!」
「悪かった!」
号泣したニコラにガッチリホールドされる。俺より2回りは大きな腕は、下手をせずとも抱きしめた俺をへし折れる。だがニコラは心優しい大男なのでその辺は信用している。
こいつが危険人物なのは別の点でだ。
ニコラは、普段はパーティ最年長の冒険者として落ち着きを見せる頼れる優しい男なのだが、腹が減るととりあえず建物や壁に体当たりし破壊行動に出るという危険人物だ。
ニコラと上手くやるには1日5食、おやつ付きを基本とする。
「ロイが消えちまって、俺ぁ心配で心配でよぉ.......! でも万が一帰ってきた時、拠点に誰か居ねえとなんねえから、探しにも行けなくてなぁ.......!」
「悪かった、とりあえず何か食いに行こう」
「ロイ、やっぱりお前は良い奴だなああああ!!」
ここまで泣くとは、相当腹が減っているらしい。後ろに控えた憲兵達が、りんご片手にじりじりと距離を詰めていた。ニコラがこの街に来てからの1年で、憲兵達も対処法を学んだのだ。本当に迷惑かけて申し訳ない。
街の外壁を若干壊したのはあとで平謝りするとして、とりあえず腹を満たしてやらねば延々と破壊行動が続くと動き始めた。
今日は頑なに歩いてくれないミアを小脇に抱え、慌てだしたので深呼吸をさせ酸欠になってしまったスイを担ぎ、隙あらばどこかへ突進しようとするニコラを誘導しながら、宿併設の酒場に入った。
「はぁ.......ダンジョンより疲れんなやっぱり.......」
「ロイ、どこいってたんだ一体。ミアもスイも、何ヶ月も戻ってこないなんて、心配したんだぞ」
俺の普段の食事の5倍の量を平らげ、腹が膨れて穏やかになったニコラが、大きな手でわしゃわしゃとミアとスイの頭を撫でた。
「ニコラ、アイナはどうした?」
「あぁ、部屋にいると思う。呼んでこよう」
宿の方に消えたニコラが戻ってきた時には、隣ににこにこと笑う赤茶の髪の女がいた。我がパーティのシーフ、アイナだ。
「ロイさん! よかった、無事で戻ってきてくれて。心配したのよ?」
ちなみに、我がパーティではミアと俺以外新聞は読まないので俺が何をしていたかを知らなくてもおかしくはない。むしろあの醜態を知らないでいて欲しい。
「それに、ニコラがロイさんが居ないと私は外に出てはいけないって言うから、ほとんど部屋から出られなかったの」
「アイナ、勝手して悪かった」
アイナは母性溢れる女性で、常におっとりと優しい。料理も上手だし気遣いもできる。だが、手癖が悪い。集団行動をする際、これが一番タチが悪い。しれっとした盗みがパーティのチームワークに1番影響するのだ。ある意味我がパーティ1番の危険人物である。
俺が隣にいると何故か俺からしか盗みをしないので、他所様に迷惑をかけずアイナを犯罪者にしないために、常に俺は身体中に小銭を隠し持つ1年を過ごした。
俺が逃げ出した後はニコラがアイナを何とかしてくれていたようで、アイナが牢では無く宿にいてくれたことに安心した。
「全員、聞いてくれ」
それぞれの騒がしさで席に着いた我がパーティメンバー達を真っ直ぐ見つめて。
「勝手をして、すまなかった」
頭を下げた。
そして、そのまま。
「俺が勝手をして踏破してしまった仕事の報酬は、今すぐ補填する。それが済んだら」
そう、彼らは冒険者だ。
「このパーティは解散だ」
ダンジョンへ潜る冒険者なのだ。
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