狙われたその瞳

神名代洸

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仲間に指示を出して速やかに部屋の中のチェックを始める。
「なくなったものとかはないか?この有様だ。警察にも一応連絡をしておいた方がいいだろう。」
「わ、分かったわ。そうする。でもどうしよう~。これじゃあ寝られないわ。」
そう、あたりは物が散乱していて足の置き場もない程に荒らされていたのだ。
「そうだわ、サミーの所で泊めてもらおうかしら。それがいいわね。」そう言ってリジーが携帯から電話をかけようとしたらシュナイダーに止められた。
「やめておいた方がいいぞ。彼女と一緒にいるところを見られたら確実に狙われる。」
そう言われたらどうしたらいいのか困ってしまった。
「どうしよう~。他に当てはないわ。最悪ホテルを探すしかないわね。」
「いや、まだ方法はある。俺のところで泊まればいい。」
「そんな~駄目よ。まだ知り合ったばかりの人なのに…。甘えられないわ。」
「大丈夫だ。俺の所は広いからな。まぁ、広いと言ってもマンションだけどな。防犯設備は万全だ。」
「でも…。」
「でもは無し。その方が俺にとっても警護しやすい。」
「分かったわ。お願いします。犯人が捕まるまでね。」
「ああ。その方がいい。」
リジーは早速手近にあったカバンに着替えを数点詰め込んだ。
ありったけの現金と通帳や印鑑も忘れない。
「さぁ、いいわ。行きましょう。」
「いいのか?それだけで。」
「ええいいの。どっちにしろボロボロで着られないわ。誰が触ったかわからないものは着たくはないし。」
そう言いながらよく見ると震えているリジーの姿を見て犯人が憎らしくなった。と同時にしばらくの間手を出さずにいられるか心配だった。だがこの気持ちは変えられない。
別れるまでの間に何としても恋人になりたいと思った。

車に乗り込んでからはしばらくお互い何も話さなかった。沈黙が重い。
リジーは努めて明るいことを考えていた。
シュナイダーはチラ見しながら運転している。
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