狙われたその瞳

神名代洸

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リジーの家へ行くのは2度目だが、そこに大きなクマのぬいぐるみがあるのには気づかなかった。
普段はベットで一緒に寝ているという。
ぬいぐるみが羨ましいとさえ思った。
何を考えていたのかと自分の心が訴える。

「大きなぬいぐるみを持ってるんだね。」
「ええ、そうよ。私のボディガードなの。可愛いでしょ?」
「人形じゃあ君を守れないよ。俺なら…ね。」
「そうね。これからはあなたを頼りにすればいいものね。」
そう言いながら部屋の中心にある小さな机に二人分のコーヒーを置いた。
「ブラックで良かった?」
「ああ。」

静かに時は流れていく。

「じゃあ、そろそろ俺は帰るよ。明日はまた仕事だ。」
「ええ、そうね。じゃあ…」
「送らなくていいよ。ここで。」
そう言いながら別れのキスをした。

リジーは顔を真っ赤にしていた。
シュナイダーはとろけるようなキスをしていったのだ。

「っ、もう!これじゃあ興奮して寝られないわ。」
リジーはシャワーを浴びに行った。
気持ちを鎮めるためにゆっくりと…。


その頃シュナイダーは車の中だ。
走らせながら今日のことを思い出していた。
服装も髪型も俺好みだった。
ポニーテールはよく似合っていた。
活動的なリジーに似合っていると思う。

今日は二人の新しいスタートだ。
慎重にいきたいと思っていた。
だが、携帯が鳴り通話し始めると仕事の顔となる。
明日の警護の事らしい。
新しい仕事はシュナイダーの気持ちを切り替えさせるのに時間をかけなかった。

自宅に急ぐとシャワーを浴びて眠気を覚ます。
コーヒーを飲みながら明日の警護に関する情報を支給されているパソコンから引っ張り出す。


「これ…か。いつも通りだな。」

時計の針は午前1時を指していた。
翌日に備え今日は眠る。



それからは忙しくメールのやり取りしかできなかった。しかも、ほんとに忙しい時にはメールそのものも送ることができなくてイライラさせられた。
それを同僚も知ってるから弄られる。

「おい、シュナイダー、例の彼女とはうまく行ってるのか?」
「そんなのお前に関係ないだろ?」
「そう怒鳴るなって。警護対象がこれから2時間ほど仮眠を取るそうだ。メールでもしたらどうだ?それくらいは目を瞑っててやるよ。」

シュナイダーはブツブツ言いながらもメールを送る。
30分程して返信が入る。
リジーからだ。
1人ニヤけるシュナイダーを横目に見て同僚は目を白黒させていた。今までのシュナイダーとは大違いだ。
素の彼を見てくすくす笑う同僚もいた。
それに気づいたシュナイダーはムスッとしてまた任務に就いた。
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