自分

嵐士

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状況を話しを聞いた孝は、半信半疑な声しか聞こえない。
「信じてくれよ、本当なんだよ。」
「そう言われても、場所も分からないし何で連れさられたか分からないんだろ?マジだとしても、探しようがないからな。」
「頼む!一生のお願いだ!」
「う~ん…。」
孝は、唸り声をあげるだけで答えが聞けない。
頼む、頼む、頼む、僕は祈ることしかできない。しかし、恐怖の瞬間がついに来てしまった。
スマホがうんともすんとも言わなくなった。
「孝?孝!充電が切れた。」
元々残り少なかった充電が、電話をかけまくったので余計消耗してしまったのだ。
「くそ!スマホが使えなくなった!孝が、早く返事してくれないから!」
こんな時怒り狂ってもしょうがないのに、怒らずにはいられなかった。
しばらくして落ち着き、冷静になると突然の恐怖に支配されたそれは、完全なる闇が目の前に広がっていた。
怖い、怖い、怖い、何も見えない。
目の前に迫る闇が僕を包み込んできた。唯一頼りだったスマホが機能なくしては足がすくんで一歩も前に踏み出すことが出来ない。
どうしよう、前が見えない。
僕は、すっかり怯えいてしまった。こんな時にアイツが来たら確実に捕まる、少しでも離れなきゃ。しかし、今まで頼りにしていたスマホが無くなった今、すがる物がなくなり自分には何もなくなったのだ。このまま掴まってもいいかなと言う気持ちになってしまった。
友達だと思っていたみんなが僕の電話に出てくれなかったんだ、きっと僕なんかがいなくなっても誰も気にしないんだろうな。このまま僕のいない世界が始まるんだろうな。
僕は、狂ったように涙を流しながら笑い始めた。
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