2 / 9
第一章 幼年期
1 竜海村の日々
しおりを挟む
竜海村は北海地方の海沿いの辺境に存在する村である。
人口は100人ばかりの小さな漁村であり、小さいながらも船の停泊に向いた湾を有したこの村は、しかし村の周りは山に囲まれており、徒歩では出るのも入るのも非常に困難で、最近まで外部との接点がほとんどなかった。
面する海は波の荒い外海であり、航路は全く存在しない。
地理的に閉鎖されたその場所に、住む村人も少し変わった種族であった。村人が全員竜人であるということだ。
竜人とは、今は亡き古代竜と人が交わり生まれた種族であり、かなりの長寿と多少高い身体能力、少し多めな魔力が特徴的な一方で、繁殖力が極めて低く、生涯で3人も子供を産めば多い方という、衰退していってしかりな種族である。
古代のもっと竜人の人口が多かった時代には、支配者層だったこともあるらしいが、混血と出生率の低さから数が減っていく中種族全体でこの場所に隠遁し、現在は、竜海村以外はほとんどいないだろう、そんな種族であった。
ただ、その種族的な性質がこの村ではうまく働いていた。
土地は肥え、海もほかに魚を採るものがいないので非常に豊かであるのだが、周りが山だらけで住める土地が非常に少ない場所だった。
普通の人族が暮らしていたら、すぐに人口が増えすぎて住む場所が足りなくなっていたはずだ。
そんな隔絶した場所で、1000年もの間、人口を減らしながら暮らしていた竜人の、最年少がボク、杏珠であった。
数十年ぶりに生まれたらしい新しい竜人であるボクは、そりゃもう無茶苦茶かわいがられた。
毎日村の人が何人も抱っこしに来るし、みんな撫でにくる。頭が禿げるんじゃないかというぐらい撫でてくる。
一日中ずっと構われっぱなしだし、夜になっても2,3人が近くで寝ずの番をしているから、寂しいと思えることが一瞬たりともなかった。
母は、「みんなが世話してくれてらくだわー」とか言ってあまり構ってくれないぐらい適当だったが、お年寄りから若い人(といっても最低でも100歳超えている)までみんなちやほやしてくれた。
肉を食べたいといえばすぐ山の主であるイノシシの丸焼きが出てきたし、魚を食べたいといえば海竜の刺身が出てきた。いいものを食べさせようとする大人たちの競争は日に日にエスカレートしていった。
ただ、こうやって物で釣ろうとするのは若い村人であった。
おじいちゃんたち(こちらは大体年齢が4桁に届く)はボクにいろいろなことを教えてくれた。
農業と漁業のやり方は、実践付きで教わった。
幸いボクは、村一番のちびっこだったが力はかなり強い方のようで、面白いほど田畑を耕して魚を取ることができた。
時々海に落っこちることもあったが、泳ぐのも得意だったので溺れることもなかった。周りは落ちるたびに大騒ぎだったが。
ほかにも武器の使い方や、魔法の使い方なんかも習ったし、歴史やら礼法やらといったよくわからないものも習ったりした。宮廷ごっことか言って、キラキラの服を着て大げさな作法であいさつしたりお茶を飲んだりするおままごとをすることも多かった。こんな小娘によく爺様方婆様方も付き合ってくれたものである。
そんな風にわがまま放題で暮らしてきたボクだが、まったく不満がなかったというわけではない。
一つだけ大きな不満があった。
同年代の友達がいないのである。
周り中見ても成人ばかり。一番年が近いお兄さんだって100歳は離れているのだ。
可愛がられるのは楽しいしうれしいが、自分が可愛がったり助けたりする立場にないのだけが不満だった。
ただ、そうはいっても無理なものは無理だし、仕方がないとあきらめていたところであった。
そんな生活が変わったのは、ボクが5歳の時、ある夏の嵐の日だった。
人口は100人ばかりの小さな漁村であり、小さいながらも船の停泊に向いた湾を有したこの村は、しかし村の周りは山に囲まれており、徒歩では出るのも入るのも非常に困難で、最近まで外部との接点がほとんどなかった。
面する海は波の荒い外海であり、航路は全く存在しない。
地理的に閉鎖されたその場所に、住む村人も少し変わった種族であった。村人が全員竜人であるということだ。
竜人とは、今は亡き古代竜と人が交わり生まれた種族であり、かなりの長寿と多少高い身体能力、少し多めな魔力が特徴的な一方で、繁殖力が極めて低く、生涯で3人も子供を産めば多い方という、衰退していってしかりな種族である。
古代のもっと竜人の人口が多かった時代には、支配者層だったこともあるらしいが、混血と出生率の低さから数が減っていく中種族全体でこの場所に隠遁し、現在は、竜海村以外はほとんどいないだろう、そんな種族であった。
ただ、その種族的な性質がこの村ではうまく働いていた。
土地は肥え、海もほかに魚を採るものがいないので非常に豊かであるのだが、周りが山だらけで住める土地が非常に少ない場所だった。
普通の人族が暮らしていたら、すぐに人口が増えすぎて住む場所が足りなくなっていたはずだ。
そんな隔絶した場所で、1000年もの間、人口を減らしながら暮らしていた竜人の、最年少がボク、杏珠であった。
数十年ぶりに生まれたらしい新しい竜人であるボクは、そりゃもう無茶苦茶かわいがられた。
毎日村の人が何人も抱っこしに来るし、みんな撫でにくる。頭が禿げるんじゃないかというぐらい撫でてくる。
一日中ずっと構われっぱなしだし、夜になっても2,3人が近くで寝ずの番をしているから、寂しいと思えることが一瞬たりともなかった。
母は、「みんなが世話してくれてらくだわー」とか言ってあまり構ってくれないぐらい適当だったが、お年寄りから若い人(といっても最低でも100歳超えている)までみんなちやほやしてくれた。
肉を食べたいといえばすぐ山の主であるイノシシの丸焼きが出てきたし、魚を食べたいといえば海竜の刺身が出てきた。いいものを食べさせようとする大人たちの競争は日に日にエスカレートしていった。
ただ、こうやって物で釣ろうとするのは若い村人であった。
おじいちゃんたち(こちらは大体年齢が4桁に届く)はボクにいろいろなことを教えてくれた。
農業と漁業のやり方は、実践付きで教わった。
幸いボクは、村一番のちびっこだったが力はかなり強い方のようで、面白いほど田畑を耕して魚を取ることができた。
時々海に落っこちることもあったが、泳ぐのも得意だったので溺れることもなかった。周りは落ちるたびに大騒ぎだったが。
ほかにも武器の使い方や、魔法の使い方なんかも習ったし、歴史やら礼法やらといったよくわからないものも習ったりした。宮廷ごっことか言って、キラキラの服を着て大げさな作法であいさつしたりお茶を飲んだりするおままごとをすることも多かった。こんな小娘によく爺様方婆様方も付き合ってくれたものである。
そんな風にわがまま放題で暮らしてきたボクだが、まったく不満がなかったというわけではない。
一つだけ大きな不満があった。
同年代の友達がいないのである。
周り中見ても成人ばかり。一番年が近いお兄さんだって100歳は離れているのだ。
可愛がられるのは楽しいしうれしいが、自分が可愛がったり助けたりする立場にないのだけが不満だった。
ただ、そうはいっても無理なものは無理だし、仕方がないとあきらめていたところであった。
そんな生活が変わったのは、ボクが5歳の時、ある夏の嵐の日だった。
0
あなたにおすすめの小説
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
私と母のサバイバル
だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。
しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。
希望を諦めず森を進もう。
そう決意するシェリーに異変が起きた。
「私、別世界の前世があるみたい」
前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
転生後はゆっくりと
衣更月
ファンタジー
貧しい集落で生まれたリリは、生まれた瞬間から前世の記憶があった。
日本人特有の”配慮”に徹した赤ん坊を演じていたことで、両親から距離を置かれた挙句、村人からも「不気味な子」として敬遠されることに…。
そして、5才の誕生日に遠くの町に捨てられた。
でも、リリは悲観しない。
前世の知識チートは出来ないけど、大人メンタルで堅実に。
目指すは憧れのスローライフが出来るほど、ほどほどの守銭奴としてリリは異世界人として順応していく。
全25話(予定)
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
メインをはれない私は、普通に令嬢やってます
かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール
けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・
だから、この世界での普通の令嬢になります!
↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・
王宮メイドは今日も夫を「観察」する
kujinoji
恋愛
「はぁぁ〜!今日も働くヴィクター様が尊すぎる……!」
王宮メイドのミネリは、今日も愛しの夫ヴィクターを「観察」していた。
ヴィクターが好きすぎるあまり、あますところなく彼を見つめていたいミネリ。内緒で王宮メイドになり、文官である夫のもとに通うことに。
だけどある日、ヴィクターとある女性の、とんでもない場面を目撃してしまって……?
※同じものを他サイトにて、別名義で公開しています。
転生したおばあちゃんはチートが欲しい ~この世界が乙女ゲームなのは誰も知らない~
ピエール
ファンタジー
おばあちゃん。
異世界転生しちゃいました。
そういえば、孫が「転生するとチートが貰えるんだよ!」と言ってたけど
チート無いみたいだけど?
おばあちゃんよく分かんないわぁ。
頭は老人 体は子供
乙女ゲームの世界に紛れ込んだ おばあちゃん。
当然、おばあちゃんはここが乙女ゲームの世界だなんて知りません。
訳が分からないながら、一生懸命歩んで行きます。
おばあちゃん奮闘記です。
果たして、おばあちゃんは断罪イベントを回避できるか?
[第1章おばあちゃん編]は文章が拙い為読みづらいかもしれません。
第二章 学園編 始まりました。
いよいよゲームスタートです!
[1章]はおばあちゃんの語りと生い立ちが多く、あまり話に動きがありません。
話が動き出す[2章]から読んでも意味が分かると思います。
おばあちゃんの転生後の生活に興味が出てきたら一章を読んでみて下さい。(伏線がありますので)
初投稿です
不慣れですが宜しくお願いします。
最初の頃、不慣れで長文が書けませんでした。
申し訳ございません。
少しづつ修正して纏めていこうと思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる