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第一章 幼年期
2 嵐の難破船
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それは夏の日のことだった。
嵐が村を直撃した。
すさまじい雨と風で、海は荒れに荒れていた。
特に風がすさまじく、ボクが外に出るとそのまま飛ばされてしまいそうになるぐらいとんでもない風が吹いていた。
最も村の方は大した問題ではなかった。
家はどこも丈夫に作ってあるのでこの嵐で飛んできた枝や石で傷つくことはあっても、大きく壊れることはなかった。
滝のような雨も、村を浸水させるようなことはなく、せいぜい留め方の甘かった船が2隻ほど流される程度の被害しかなかった。
村には全く問題がなかったが、問題があるところは別にあった。
沖を航行していた船である。
村が面する北海は、真冬は時に流氷で閉ざされることもある上、外海で波が荒いので定期的な航海には不向きな海で、航路は全くないはずであった。
しかし、最近の足が長い船と最新の航行法を使うと都と北方地域と大幅に短縮して航行できるらしく、ごくまれにそういった船が村の前の海を航行していることがあった。
そんな数少ない船の一つが、村の近くで難破しかかったらしい。
「おい、あの船、こんな嵐の中沖にいるが大丈夫か?」
最初に発見したのは漁師のおっちゃんであった。
船を係留するべく、しっかりと固定する作業をしているときに偶然沖に船がいるのを見つけた。
その時点ですでに風はかなり強くなり、雨もかなり強く降り始めていた。
「本当だね~ 大丈夫なのかな~」
風で半分飛ばされかける遊びをしながら、父に両手をしっかりつかまれて、ボクも見に行ったが、なるほど確かに沖に大きな船が見える。
確か黒船とか言われる船だったか。木材の防腐のために歴青を塗っているから真っ黒で、長期航海に適した大型船だとおじいちゃんが前に話していた気がする。
それなりに沖の方にいるのにこの暴風雨の中でもはっきりその存在が確認できるぐらいには大きな船であったが……
「ねえ、あれ帆柱が折れていない?」
「もともと1本じゃねえのか?」
「普通は3本か4本あるはずだから、2本は折れてるんじゃないかな」
沖合に見えるシルエットからは帆が1本しか見えなかった。
もともと1本しか帆柱がない船のようにも見えるが、あの種の大型船は帆柱が何本もあるはずだ。
おじいちゃんの知識が正しければ、3本は最低あるはずで、かなり壊れてしまっているのではないか。
「そいつはやばいな」
「どうする? 助けに行くか?」
人がいい村の人たちは、船が壊れていると気づくと救助に行くか相談し始める。
あそこまで大きな船だと、曳航するのは人力の小型船しかない村の船では難しいだろう。
ロープをかけて引っ張るにも、この嵐の中じゃ危険が大きすぎる。
下手に揺れたら村の船が転覆しかねない。
「乗ってる人だけでも助けられないかな?」
「うちの杏珠がいうならそうするか。よし、船出すぞ! 一番でかいのだ!」
ボクが心配そうに助けられないか、というと、村の人たちはやる気を出し始めた。
ちょろい、と思うがいいのだろうかとも思うが、見える範囲では人に優しくしてほしいと思う。
みんな最大限安全策で行くようで、村の船のうち一番大きな船が持ち出された。機密甲板をもつ村一番の大型船だ。
これはおじいちゃんたちの趣味で作られた船で、『昔の最新技術』という、矛盾した何かで作られたものだ。
確かに丈夫で積載量も大きく、安全性も高いのだが、大きすぎて操作性が悪いので、普段は湾の隅で保管されていたものである。
普段の漁なら小さい船で広い海域に展開した方が小回りが利いて浅瀬にも近寄れるし便利なのだ。
そんなおじいちゃんたちのロマンの塊でしかない無駄が、今回非常に役に立った。
風が強く、帆を立てると折れてしまいそうということで、手漕ぎになったようだが、無事船までたどり着き、船員を皆回収して帰ってきた。
沖の黒船は、皆が村の港に帰ってきたころには完全に沈んでしまっていたから、本当に間一髪だったのではないか。
黒船には30人の人間が乗っていたのだが、みな助けることができた。
その中で一人だけ、ボクと同い年ぐらいの子供が混じっていた。
それが万桜であり、万桜はボクにとって運命となるのであった。
嵐が村を直撃した。
すさまじい雨と風で、海は荒れに荒れていた。
特に風がすさまじく、ボクが外に出るとそのまま飛ばされてしまいそうになるぐらいとんでもない風が吹いていた。
最も村の方は大した問題ではなかった。
家はどこも丈夫に作ってあるのでこの嵐で飛んできた枝や石で傷つくことはあっても、大きく壊れることはなかった。
滝のような雨も、村を浸水させるようなことはなく、せいぜい留め方の甘かった船が2隻ほど流される程度の被害しかなかった。
村には全く問題がなかったが、問題があるところは別にあった。
沖を航行していた船である。
村が面する北海は、真冬は時に流氷で閉ざされることもある上、外海で波が荒いので定期的な航海には不向きな海で、航路は全くないはずであった。
しかし、最近の足が長い船と最新の航行法を使うと都と北方地域と大幅に短縮して航行できるらしく、ごくまれにそういった船が村の前の海を航行していることがあった。
そんな数少ない船の一つが、村の近くで難破しかかったらしい。
「おい、あの船、こんな嵐の中沖にいるが大丈夫か?」
最初に発見したのは漁師のおっちゃんであった。
船を係留するべく、しっかりと固定する作業をしているときに偶然沖に船がいるのを見つけた。
その時点ですでに風はかなり強くなり、雨もかなり強く降り始めていた。
「本当だね~ 大丈夫なのかな~」
風で半分飛ばされかける遊びをしながら、父に両手をしっかりつかまれて、ボクも見に行ったが、なるほど確かに沖に大きな船が見える。
確か黒船とか言われる船だったか。木材の防腐のために歴青を塗っているから真っ黒で、長期航海に適した大型船だとおじいちゃんが前に話していた気がする。
それなりに沖の方にいるのにこの暴風雨の中でもはっきりその存在が確認できるぐらいには大きな船であったが……
「ねえ、あれ帆柱が折れていない?」
「もともと1本じゃねえのか?」
「普通は3本か4本あるはずだから、2本は折れてるんじゃないかな」
沖合に見えるシルエットからは帆が1本しか見えなかった。
もともと1本しか帆柱がない船のようにも見えるが、あの種の大型船は帆柱が何本もあるはずだ。
おじいちゃんの知識が正しければ、3本は最低あるはずで、かなり壊れてしまっているのではないか。
「そいつはやばいな」
「どうする? 助けに行くか?」
人がいい村の人たちは、船が壊れていると気づくと救助に行くか相談し始める。
あそこまで大きな船だと、曳航するのは人力の小型船しかない村の船では難しいだろう。
ロープをかけて引っ張るにも、この嵐の中じゃ危険が大きすぎる。
下手に揺れたら村の船が転覆しかねない。
「乗ってる人だけでも助けられないかな?」
「うちの杏珠がいうならそうするか。よし、船出すぞ! 一番でかいのだ!」
ボクが心配そうに助けられないか、というと、村の人たちはやる気を出し始めた。
ちょろい、と思うがいいのだろうかとも思うが、見える範囲では人に優しくしてほしいと思う。
みんな最大限安全策で行くようで、村の船のうち一番大きな船が持ち出された。機密甲板をもつ村一番の大型船だ。
これはおじいちゃんたちの趣味で作られた船で、『昔の最新技術』という、矛盾した何かで作られたものだ。
確かに丈夫で積載量も大きく、安全性も高いのだが、大きすぎて操作性が悪いので、普段は湾の隅で保管されていたものである。
普段の漁なら小さい船で広い海域に展開した方が小回りが利いて浅瀬にも近寄れるし便利なのだ。
そんなおじいちゃんたちのロマンの塊でしかない無駄が、今回非常に役に立った。
風が強く、帆を立てると折れてしまいそうということで、手漕ぎになったようだが、無事船までたどり着き、船員を皆回収して帰ってきた。
沖の黒船は、皆が村の港に帰ってきたころには完全に沈んでしまっていたから、本当に間一髪だったのではないか。
黒船には30人の人間が乗っていたのだが、みな助けることができた。
その中で一人だけ、ボクと同い年ぐらいの子供が混じっていた。
それが万桜であり、万桜はボクにとって運命となるのであった。
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