瑞原大学物語 ~ボクと狐ちゃんのほのぼのキャンパス生活~

みやび

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ボクと狐ちゃんとテニスサークル 6

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分けられた新入生女性は、さらに経験者と未経験者に分けられた。未経験者はボクとクーちゃんとあと一人、風里(フウリ)さんという人だけだった。
黒髪で前髪がかなり長いうえ、服がすべて黒なので若干陰気な雰囲気の人で、身長はクーちゃんと同じぐらいの風里さん。その頭には丸っこい耳がのっていた。この子も妖怪なのかなーとかボケーっと思いながら、3人横に並んだ。

「こ、こんどこそ私の本気を見せてやるのです!!」

耳と尻尾を逆立てながらそう息巻くクーちゃん。本気を出して怪我をされると嫌なので、できれば穏便に行ってほしい。

「私も頑張ります」

小さくガッツポーズをするフウリさん。こちらはこちらでかわいらしかった。

「じゃあまずは、ボールにラケットを当てる練習からしましょうか」

担当してくれるのは安井さんという女性だった。ボクより背が高くて足も長いモデルのような美人でちょっとテンションが上がった。
安井さんはボール籠をもってコートの隅へと移動する。ボクたちも安井さんについてコートの隅へと移動するのであった。




「へぶしっ!?」
「へぶっ!!」

なんというか、阿鼻叫喚な光景が広がっていた。
安井さんがアンダースローでやまなりにボールを投げる。そのボールの落下点にラケットを出して、ラケットにボールを当てる、そういう練習だったのだが……
クーちゃんもフウリさんも顔から突っ込み、顔面でボールを受け止めていた。テニスってそういう競技だったっけとちょっと哲学に浸るレベルの突っ込みぶりだった。

「なんで顔にぶつかるんでしょうね……」
「なんででしょうね……」

安井さんもボクも困惑しきりである。

「こ、こんどこそ!! 風里さんには負けませんから!!!」
「私だって、葛葉さんに負けないんですから!!!」

しかも二人ともなぜか無駄に張り合っている。最初は飛距離がどうとか言っていたが、ボールにラケットを当てられた方が勝ちという低レベルな争いにまで落ちた。
風里さんは耳的におそらく狸だろうし、狐と狸は中が悪いのだろうか、そんな感想を抱きながら、ボクは自分のラケットをボールの落下点に差し出す。ポーンとラケットに当たったボールは飛んでいった。

「へぶっ!?」
「ぐはぁ!?」

二人ともまたボールを顔面で受け止めていた。決着がつくことはあるのだろうか。そんな疑問がボクの頭に浮かぶ。安井さんも同じことを考えていたのだと思う。思わず目が合い、顔を見合わせた。





さすがに顔面でボールを受け続けるのは危ないということで二人ともボールを使った練習が禁止されてしまった。ボクだけ別コースにするという話もあったのだが、さすがにド素人たちにそこまで人手を割いてもらうのも申し訳なく、ボクとクーちゃんと風里さんはコートの外に出ることになった。
ひとまず最低限の筋力が二人に足りていないと判断されたのか、筋力トレーニングとして、腕立て伏せと腹筋をすることになった。
ひとまず芝生に両手をついて、腕立て伏せである。ボクの今の体は、体重が三分の二以下になっているにもかかわらず、筋力はほぼ男性時代のまま、という謎現象が起きているので、腕立て伏せもすごく楽である。逆立ちしながらでもできそうだ。ただ、あんまり調子に乗って大道芸をするのも何なので、黙々と腕立て伏せを続ける。

「ショウさんって何か運動していたの?」
「格闘技を少しやっていました」
「道理で運動できるなーと思ったよ」
「そうですかね。球技はやったことないので正直あまり得意ではないですね」

安井さんと並んで腕立て伏せをしながら、そんな雑談をする。
そんなボクたちの横で、クーちゃんとフウリさんは、不毛な争いを続けていた。普通の腕立て伏せだとどちらも1回ぐらいしかできないので、膝を立てての腕立て伏せにすぐ切り替わった。それでも筋力不足なのか、二人とも10回もできていない。
クーちゃんが7回、フウリさんが8回でそれぞれ力尽きて仰向けになっていた。

「わ、私の勝ちなのです」

無駄に勝ち誇るフウリさん。正直五十歩百歩でしかなかった。

「あの二人、テニスできますかね?」
「……ノーコメントで。やる気はあるみたいだし……」

困った顔をする安井さん。無理だけど無理とは言いたくない、そんな感情が表情から読み取れた。
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