33 / 40
【第3章】 氷の公爵家の奇跡、そして永遠の春へ
第33話 凍てつくゆりかごと、新米パパの苦悩
出産から三日が経過した。
王都を覆う分厚い雪雲は依然として晴れず、公爵邸の内部は、まるで極寒の氷の城のようになっていた。
「さ、寒いです……。暖炉の火を絶やすな! 薪(まき)をもっと持ってこい!」
「お湯が! 運んでいる途中で凍ってしまいます!」
「若様がお目覚めだぞ! 全員、防寒魔法を最大展開しろ!!」
廊下を行き交う使用人たちは、真冬用のコートを着込み、マフラーをぐるぐる巻きにして走り回っている。
彼らが恐れているのは、屋敷に侵入した魔物ではない。
たった一人の、愛らしくも恐ろしい「新生児」だった。
◇
主寝室のベビーベッドの前で、ジークハルト様は腕組みをして仁王立ちしていた。
その眉間には、魔獣討伐の最前線にいる時よりも深い皺(しわ)が刻まれている。
「……難敵だ」
彼の視線の先にいるのは、ふかふかのクッションに埋もれた我が子だ。
銀色の髪に、宝石のような青い瞳。
天使のように愛くるしい外見だが、その周囲には半径一メートルの「絶対零度領域」が展開されていた。
「あー、うー」
赤ちゃんが機嫌よく手足をバタつかせるたびに、ピキピキと空気が凍り、キラキラした氷の結晶が舞う。
メイドたちがミルクやオムツを持って近づこうとするが、領域に入った瞬間、持っているものがカチンコチンに凍りついてしまい、撤退を余儀なくされていた。
「旦那様……もう限界です。若様のお世話ができるのは、氷の魔力に耐性がある旦那様しかおりません」
「……分かっている」
ジークハルト様は覚悟を決めたように頷いた。
彼は上着を脱ぎ捨て、シャツの袖をまくり上げた。
「エリスは出産で消耗している。今は別室で眠っている彼女を起こすわけにはいかん。……この私が、父親の威厳を見せてやる」
彼は気合を入れると、右手に新しいオムツ、左手に魔法で温めたおしり拭きを持ち、決死の形相でベビーベッドへ踏み込んだ。
「いいか、暴れるなよ。……パパだぞ。怖くないぞ」
彼は普段の冷徹な声とは似ても似つかない、裏返ったような猫撫で声で話しかけた。
赤ちゃんは、ジークハルト様の顔を見ると、ニパッと無邪気に笑った。
可愛い。
その笑顔に、ジークハルト様の頬が緩んだ隙だった。
――ブリュッ。
無慈悲な音が響いた。
生理現象だ。こればかりは公爵令息だろうと関係ない。
「なっ……! い、今か!?」
「ふぇ……ふえぇぇぇ……!!」
不快感を覚えた赤ちゃんが、顔をくしゃくしゃにして泣き出した。
――オギャアアアアアアッ!!
泣き声と共に、強烈な魔力の波動が放たれた。
ドォォォォンッ!!
ベビーベッドを中心に、冷気の爆風が巻き起こる。
「うおぉっ!? ま、待て! 泣くな! 今きれいにしてやるから……ぐっ、凍る! 指が動かん!」
ジークハルト様は必死にオムツを替えようとするが、赤ちゃんの涙が瞬時に氷の粒弾(つぶだん)となって降り注ぎ、彼の手元を凍らせていく。
さらに、赤ちゃんが足をバタつかせるたびに、カミソリのような冷風が彼の頬を切り裂く。
「つ、強い……! なんだこの魔力は……! 私の結界を中和するだと!?」
「旦那様ーッ! 頑張ってくださいーッ!」
遠巻きに見守るハンスさんたちが声援を送るが、誰も助けには来られない。
世界最強の魔導師が、たった一人の赤子に翻弄され、みるみるうちに氷像のように白くなっていく。
「くそっ……負けてたまるか……! 私は……父親だぞ……ッ!」
彼が震える手で最後のボタンを留めようとした、その時。
「――はいはい、そこまで」
凛とした声と共に、温かい光が部屋に満ちた。
「エリス!?」
扉の前に立っていたのは、ガウンを羽織った私だった。
まだ体は重いが、騒ぎを聞きつけてじっとしていられなかったのだ。
「もう、廊下まで泣き声が聞こえていましたよ。……ジークハルト様、交代です」
私は苦笑しながら近づき、凍りついたジークハルト様の背中をポンと叩いた。
ジュワッ。
私の手から溢れた「魔力中和」の光が、彼を覆っていた氷を一瞬で溶かした。
「エリス……すまない。起こしてしまったか」
「いいえ。……ほら、泣かないの。ママが来ましたよ」
私はそのままベビーベッドへ手を伸ばし、ギャン泣きしている赤ちゃんを抱き上げた。
瞬間、猛吹雪のようだった冷気が、ピタリと止む。
私の体から溢れる金色の光が、赤ちゃんの青い魔力を優しく包み込み、中和していくのだ。
「よしよし……気持ち悪かったね。パパが下手っぴでごめんね」
「うう……面目ない」
私が赤ちゃんをあやすと、彼はすぐに泣き止み、私の胸に顔を埋めて「きゅぅ」と甘えた声を上げた。
その変わり身の早さに、ジークハルト様はがっくりと肩を落とした。
「……信じられん。私があれほど苦戦した絶対零度の結界を、素手で無効化するとは」
「ふふ。……魔力中和だけじゃありません。これは『ママの愛』です」
私は手際よくオムツを整え、新しい産着に着替えさせた。
すっきりした赤ちゃんはご機嫌になり、キャッキャと笑いながら私の指を握って遊んでいる。
「……完敗だ」
ジークハルト様は、霜で濡れた髪をかき上げ、感服したようにため息をついた。
「やはり、母は強しだな。……私には、魔獣の群れを相手にする方がまだ楽かもしれん」
「何をおっしゃいますか。これから毎日こうなんですよ? パパも特訓あるのみです」
「う……善処する」
情けない声を出す公爵様がおかしくて、私はクスッと笑った。
大変だけれど、幸せだ。
こんなドタバタな日常が、私たちの新しい生活なのだ。
◇
落ち着いたところで、私たちはベッドサイドに腰掛け、ミルクを飲む我が子を見つめた。
「……名前、決めましたか?」
「ああ。ずっと考えていた」
ジークハルト様は、赤ちゃんの小さな手を指先で突っつきながら、静かに言った。
「『レオン』。……古語で『獅子』を意味する。強く、気高く、そしてお前のように優しい心を持った男になってほしい」
「レオン……。レオンハルト公爵家にも繋がる、素敵な響きです」
私は赤ちゃんの頬を撫でた。
「こんにちは、レオン。……あなたの名前よ」
レオンは、名前を気に入ったのか、ミルクを飲みながらニッコリと微笑んだ。
その瞬間、窓の外の雪が一瞬だけ止み、雲の切れ間から太陽の光が差し込んだ。
「……すごい。天候まで操るのか」
「ふふ、お天気屋さんの王子様ですね」
私たちは顔を見合わせ、声を上げて笑った。
レオン。
この子がもたらすのは、破壊的な冬だけではない。きっと、私たちに見たことのない新しい景色を見せてくれるはずだ。
――だが。
その「新しい景色」を見る前に、私たちはまず、面倒な現実と向き合わなければならなかった。
翌日。
屋敷の門前に、王家の紋章が入った馬車と、教会の聖印を掲げた一団が押し寄せてきたのだ。
「公爵に告ぐ! 王都を凍らせる災厄の元凶について、査問を行う!」
「その赤子は魔物である! 直ちに教会へ引き渡せ!」
先頭に立っていたのは、あの忌々しい叔父、ヴィルヘルムだった。
彼は勝ち誇ったような顔で、「異端審問官」たちを引き連れていた。
幸せな育児生活は、早くも中断の危機を迎えていた。
私たちの愛しいレオンを守るため、今度は「社会」という敵との戦いが始まろうとしていた。
王都を覆う分厚い雪雲は依然として晴れず、公爵邸の内部は、まるで極寒の氷の城のようになっていた。
「さ、寒いです……。暖炉の火を絶やすな! 薪(まき)をもっと持ってこい!」
「お湯が! 運んでいる途中で凍ってしまいます!」
「若様がお目覚めだぞ! 全員、防寒魔法を最大展開しろ!!」
廊下を行き交う使用人たちは、真冬用のコートを着込み、マフラーをぐるぐる巻きにして走り回っている。
彼らが恐れているのは、屋敷に侵入した魔物ではない。
たった一人の、愛らしくも恐ろしい「新生児」だった。
◇
主寝室のベビーベッドの前で、ジークハルト様は腕組みをして仁王立ちしていた。
その眉間には、魔獣討伐の最前線にいる時よりも深い皺(しわ)が刻まれている。
「……難敵だ」
彼の視線の先にいるのは、ふかふかのクッションに埋もれた我が子だ。
銀色の髪に、宝石のような青い瞳。
天使のように愛くるしい外見だが、その周囲には半径一メートルの「絶対零度領域」が展開されていた。
「あー、うー」
赤ちゃんが機嫌よく手足をバタつかせるたびに、ピキピキと空気が凍り、キラキラした氷の結晶が舞う。
メイドたちがミルクやオムツを持って近づこうとするが、領域に入った瞬間、持っているものがカチンコチンに凍りついてしまい、撤退を余儀なくされていた。
「旦那様……もう限界です。若様のお世話ができるのは、氷の魔力に耐性がある旦那様しかおりません」
「……分かっている」
ジークハルト様は覚悟を決めたように頷いた。
彼は上着を脱ぎ捨て、シャツの袖をまくり上げた。
「エリスは出産で消耗している。今は別室で眠っている彼女を起こすわけにはいかん。……この私が、父親の威厳を見せてやる」
彼は気合を入れると、右手に新しいオムツ、左手に魔法で温めたおしり拭きを持ち、決死の形相でベビーベッドへ踏み込んだ。
「いいか、暴れるなよ。……パパだぞ。怖くないぞ」
彼は普段の冷徹な声とは似ても似つかない、裏返ったような猫撫で声で話しかけた。
赤ちゃんは、ジークハルト様の顔を見ると、ニパッと無邪気に笑った。
可愛い。
その笑顔に、ジークハルト様の頬が緩んだ隙だった。
――ブリュッ。
無慈悲な音が響いた。
生理現象だ。こればかりは公爵令息だろうと関係ない。
「なっ……! い、今か!?」
「ふぇ……ふえぇぇぇ……!!」
不快感を覚えた赤ちゃんが、顔をくしゃくしゃにして泣き出した。
――オギャアアアアアアッ!!
泣き声と共に、強烈な魔力の波動が放たれた。
ドォォォォンッ!!
ベビーベッドを中心に、冷気の爆風が巻き起こる。
「うおぉっ!? ま、待て! 泣くな! 今きれいにしてやるから……ぐっ、凍る! 指が動かん!」
ジークハルト様は必死にオムツを替えようとするが、赤ちゃんの涙が瞬時に氷の粒弾(つぶだん)となって降り注ぎ、彼の手元を凍らせていく。
さらに、赤ちゃんが足をバタつかせるたびに、カミソリのような冷風が彼の頬を切り裂く。
「つ、強い……! なんだこの魔力は……! 私の結界を中和するだと!?」
「旦那様ーッ! 頑張ってくださいーッ!」
遠巻きに見守るハンスさんたちが声援を送るが、誰も助けには来られない。
世界最強の魔導師が、たった一人の赤子に翻弄され、みるみるうちに氷像のように白くなっていく。
「くそっ……負けてたまるか……! 私は……父親だぞ……ッ!」
彼が震える手で最後のボタンを留めようとした、その時。
「――はいはい、そこまで」
凛とした声と共に、温かい光が部屋に満ちた。
「エリス!?」
扉の前に立っていたのは、ガウンを羽織った私だった。
まだ体は重いが、騒ぎを聞きつけてじっとしていられなかったのだ。
「もう、廊下まで泣き声が聞こえていましたよ。……ジークハルト様、交代です」
私は苦笑しながら近づき、凍りついたジークハルト様の背中をポンと叩いた。
ジュワッ。
私の手から溢れた「魔力中和」の光が、彼を覆っていた氷を一瞬で溶かした。
「エリス……すまない。起こしてしまったか」
「いいえ。……ほら、泣かないの。ママが来ましたよ」
私はそのままベビーベッドへ手を伸ばし、ギャン泣きしている赤ちゃんを抱き上げた。
瞬間、猛吹雪のようだった冷気が、ピタリと止む。
私の体から溢れる金色の光が、赤ちゃんの青い魔力を優しく包み込み、中和していくのだ。
「よしよし……気持ち悪かったね。パパが下手っぴでごめんね」
「うう……面目ない」
私が赤ちゃんをあやすと、彼はすぐに泣き止み、私の胸に顔を埋めて「きゅぅ」と甘えた声を上げた。
その変わり身の早さに、ジークハルト様はがっくりと肩を落とした。
「……信じられん。私があれほど苦戦した絶対零度の結界を、素手で無効化するとは」
「ふふ。……魔力中和だけじゃありません。これは『ママの愛』です」
私は手際よくオムツを整え、新しい産着に着替えさせた。
すっきりした赤ちゃんはご機嫌になり、キャッキャと笑いながら私の指を握って遊んでいる。
「……完敗だ」
ジークハルト様は、霜で濡れた髪をかき上げ、感服したようにため息をついた。
「やはり、母は強しだな。……私には、魔獣の群れを相手にする方がまだ楽かもしれん」
「何をおっしゃいますか。これから毎日こうなんですよ? パパも特訓あるのみです」
「う……善処する」
情けない声を出す公爵様がおかしくて、私はクスッと笑った。
大変だけれど、幸せだ。
こんなドタバタな日常が、私たちの新しい生活なのだ。
◇
落ち着いたところで、私たちはベッドサイドに腰掛け、ミルクを飲む我が子を見つめた。
「……名前、決めましたか?」
「ああ。ずっと考えていた」
ジークハルト様は、赤ちゃんの小さな手を指先で突っつきながら、静かに言った。
「『レオン』。……古語で『獅子』を意味する。強く、気高く、そしてお前のように優しい心を持った男になってほしい」
「レオン……。レオンハルト公爵家にも繋がる、素敵な響きです」
私は赤ちゃんの頬を撫でた。
「こんにちは、レオン。……あなたの名前よ」
レオンは、名前を気に入ったのか、ミルクを飲みながらニッコリと微笑んだ。
その瞬間、窓の外の雪が一瞬だけ止み、雲の切れ間から太陽の光が差し込んだ。
「……すごい。天候まで操るのか」
「ふふ、お天気屋さんの王子様ですね」
私たちは顔を見合わせ、声を上げて笑った。
レオン。
この子がもたらすのは、破壊的な冬だけではない。きっと、私たちに見たことのない新しい景色を見せてくれるはずだ。
――だが。
その「新しい景色」を見る前に、私たちはまず、面倒な現実と向き合わなければならなかった。
翌日。
屋敷の門前に、王家の紋章が入った馬車と、教会の聖印を掲げた一団が押し寄せてきたのだ。
「公爵に告ぐ! 王都を凍らせる災厄の元凶について、査問を行う!」
「その赤子は魔物である! 直ちに教会へ引き渡せ!」
先頭に立っていたのは、あの忌々しい叔父、ヴィルヘルムだった。
彼は勝ち誇ったような顔で、「異端審問官」たちを引き連れていた。
幸せな育児生活は、早くも中断の危機を迎えていた。
私たちの愛しいレオンを守るため、今度は「社会」という敵との戦いが始まろうとしていた。
あなたにおすすめの小説
誘拐された公爵令嬢ですが、なぜか皇帝に溺愛されています』
富士山麓
恋愛
舞踏会で王太子から婚約破棄を告げられそうになった瞬間――
目の前に現れたのは、馬に乗った仮面の皇帝だった。
そのまま攫われた公爵令嬢ビアンキーナは、誘拐されたはずなのに超VIP待遇。
一方、助けようともしなかった王太子は「無能」と嘲笑され、静かに失墜していく。
選ばれる側から、選ぶ側へ。
これは、誰も断罪せず、すべてを終わらせた令嬢の物語。
「地味で無能」と捨てられた令嬢は、冷酷な【年上イケオジ公爵】に嫁ぎました〜今更私の価値に気づいた元王太子が後悔で顔面蒼白になっても今更遅い
腐ったバナナ
恋愛
伯爵令嬢クラウディアは、婚約者のアルバート王太子と妹リリアンに「地味で無能」と断罪され、公衆の面前で婚約破棄される。
お飾りの厄介払いとして押し付けられた嫁ぎ先は、「氷壁公爵」と恐れられる年上の冷酷な辺境伯アレクシス・グレイヴナー公爵だった。
当初は冷徹だった公爵は、クラウディアの才能と、過去の傷を癒やす温もりに触れ、その愛を「二度と失わない」と固く誓う。
彼の愛は、包容力と同時に、狂気的な独占欲を伴った「大人の愛」へと昇華していく。
『生きた骨董品』と婚約破棄されたので、世界最高の魔導ドレスでざまぁします。私を捨てた元婚約者が後悔しても、隣には天才公爵様がいますので!
aozora
恋愛
『時代遅れの飾り人形』――。
そう罵られ、公衆の面前でエリート婚約者に婚約を破棄された子爵令嬢セラフィナ。家からも見放され、全てを失った彼女には、しかし誰にも知られていない秘密の顔があった。
それは、世界の常識すら書き換える、禁断の魔導技術《エーテル織演算》を操る天才技術者としての顔。
淑女の仮面を捨て、一人の職人として再起を誓った彼女の前に現れたのは、革新派を率いる『冷徹公爵』セバスチャン。彼は、誰もが気づかなかった彼女の才能にいち早く価値を見出し、その最大の理解者となる。
古いしがらみが支配する王都で、二人は小さなアトリエから、やがて王国の流行と常識を覆す壮大な革命を巻き起こしていく。
知性と技術だけを武器に、彼女を奈落に突き落とした者たちへ、最も華麗で痛快な復讐を果たすことはできるのか。
これは、絶望の淵から這い上がった天才令嬢が、運命のパートナーと共に自らの手で輝かしい未来を掴む、愛と革命の物語。
【完結】家族に愛されなかった辺境伯の娘は、敵国の堅物公爵閣下に攫われ真実の愛を知る
水月音子
恋愛
辺境を守るティフマ城の城主の娘であるマリアーナは、戦の代償として隣国の敵将アルベルトにその身を差し出した。
婚約者である第四王子と、父親である城主が犯した国境侵犯という罪を、自分の命でもって償うためだ。
だが――
「マリアーナ嬢を我が国に迎え入れ、現国王の甥である私、アルベルト・ルーベンソンの妻とする」
そう宣言されてマリアーナは隣国へと攫われる。
しかし、ルーベンソン公爵邸にて差し出された婚約契約書にある一文に疑念を覚える。
『婚約期間中あるいは婚姻後、子をもうけた場合、性別を問わず健康な子であれば、婚約もしくは結婚の継続の自由を委ねる』
さらには家庭教師から“精霊姫”の話を聞き、アルベルトの側近であるフランからも詳細を聞き出すと、自分の置かれた状況を理解する。
かつて自国が攫った“精霊姫”の血を継ぐマリアーナ。
そのマリアーナが子供を産めば、自分はもうこの国にとって必要ない存在のだ、と。
そうであれば、早く子を産んで身を引こう――。
そんなマリアーナの思いに気づかないアルベルトは、「婚約中に子を産み、自国へ戻りたい。結婚して公爵様の経歴に傷をつける必要はない」との彼女の言葉に激昂する。
アルベルトはアルベルトで、マリアーナの知らないところで実はずっと昔から、彼女を妻にすると決めていた。
ふたりは互いの立場からすれ違いつつも、少しずつ心を通わせていく。
精霊の愛し子が濡れ衣を着せられ、婚約破棄された結果
あーもんど
恋愛
「アリス!私は真実の愛に目覚めたんだ!君との婚約を白紙に戻して欲しい!」
ある日の朝、突然家に押し掛けてきた婚約者───ノア・アレクサンダー公爵令息に婚約解消を申し込まれたアリス・ベネット伯爵令嬢。
婚約解消に同意したアリスだったが、ノアに『解消理由をそちらに非があるように偽装して欲しい』と頼まれる。
当然ながら、アリスはそれを拒否。
他に女を作って、婚約解消を申し込まれただけでも屈辱なのに、そのうえ解消理由を偽装するなど有り得ない。
『そこをなんとか······』と食い下がるノアをアリスは叱咤し、屋敷から追い出した。
その数日後、アカデミーの卒業パーティーへ出席したアリスはノアと再会する。
彼の隣には想い人と思われる女性の姿が·····。
『まだ正式に婚約解消した訳でもないのに、他の女とパーティーに出席するだなんて·····』と呆れ返るアリスに、ノアは大声で叫んだ。
「アリス・ベネット伯爵令嬢!君との婚約を破棄させてもらう!婚約者が居ながら、他の男と寝た君とは結婚出来ない!」
濡れ衣を着せられたアリスはノアを冷めた目で見つめる。
······もう我慢の限界です。この男にはほとほと愛想が尽きました。
復讐を誓ったアリスは────精霊王の名を呼んだ。
※本作を読んでご気分を害される可能性がありますので、閲覧注意です(詳しくは感想欄の方をご参照してください)
※息抜き作品です。クオリティはそこまで高くありません。
※本作のざまぁは物理です。社会的制裁などは特にありません。
※hotランキング一位ありがとうございます(2020/12/01)
【完結】隣国のモフモフ騎士団長様、番ではない私でよろしいのですか?
こころ ゆい
恋愛
※最終話に、3/11加筆した分をアップしました。
※番外編書きたい気持ちがあるのですが、一旦、恋愛小説大賞の締め切りに合わせて、完結とさせて頂きます。🌱
※最後、急ぎ足で駆け抜けたので、説明不足や誤字脱字多くなっているかもしれません。都度見つけ次第、修正させて頂きます。申し訳ありません。💦
ジャスミン・リーフェント。二十歳。
歴史あるリーフェント公爵家の一人娘だが、
分厚い眼鏡に地味な装い、常に本を読んでいる変わり者。皆が自分のことをそう言っているのは知っていた。
モーリャント王国の王太子殿下、コーネル・モーリャントとの婚約が王命で決まってから十三年。王妃教育を終えても婚姻は進まず、宙ぶらりん状態。
そんな中、出席した舞踏会でいつも通り他の女性をエスコートする王太子殿下。
それだけならまだ良かったが、あろうことか王太子の連れた女性が事件を巻き起こす。その最中で言い渡された婚約破棄。
「....婚約破棄、お受けいたします」
そのあと、ジャスミンは一人旅に出てある人物と出会った。
これは、婚約破棄された女性が獣人国で知らぬうちに番と出会い、運命に翻弄されていく物語。
自滅王子はやり直しでも自滅するようです(完)
みかん畑
恋愛
侯爵令嬢リリナ・カフテルには、道具のようにリリナを利用しながら身体ばかり求めてくる婚約者がいた。
貞操を守りつつ常々別れたいと思っていたリリナだが、両親の反対もあり、婚約破棄のチャンスもなく卒業記念パーティの日を迎える。
しかし、運命の日、パーティの場で突然リリナへの不満をぶちまけた婚約者の王子は、あろうことか一方的な婚約破棄を告げてきた。
王子の予想に反してあっさりと婚約破棄を了承したリリナは、自分を庇ってくれた辺境伯と共に、新天地で領地の運営に関わっていく。
そうして辺境の開発が進み、リリナの名声が高まって幸福な暮らしが続いていた矢先、今度は別れたはずの王子がリリナを求めて実力行使に訴えてきた。
けれど、それは彼にとって破滅の序曲に過ぎず――
※8/11完結しました。
読んでくださった方に感謝。
ありがとうございます。
婚約破棄された伯爵令嬢ですが、辺境で有能すぎて若き領主に求婚されました
おりあ
恋愛
アーデルベルト伯爵家の令嬢セリナは、王太子レオニスの婚約者として静かに、慎ましく、その務めを果たそうとしていた。
だが、感情を上手に伝えられない性格は誤解を生み、社交界で人気の令嬢リーナに心を奪われた王太子は、ある日一方的に婚約を破棄する。
失意のなかでも感情をあらわにすることなく、セリナは婚約を受け入れ、王都を離れ故郷へ戻る。そこで彼女は、自身の分析力や実務能力を買われ、辺境の行政視察に加わる機会を得る。
赴任先の北方の地で、若き領主アレイスターと出会ったセリナ。言葉で丁寧に思いを伝え、誠実に接する彼に少しずつ心を開いていく。
そして静かに、しかし確かに才能を発揮するセリナの姿は、やがて辺境を支える柱となっていく。
一方、王太子レオニスとリーナの婚約生活には次第に綻びが生じ、セリナの名は再び王都でも囁かれるようになる。
静かで無表情だと思われた令嬢は、実は誰よりも他者に寄り添う力を持っていた。
これは、「声なき優しさ」が、真に理解され、尊ばれていく物語。