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【第3章】 氷の公爵家の奇跡、そして永遠の春へ
第38話 初めての言葉と、歩み出し
北の屋敷に帰還してから、一年半ほどの月日が流れた。
かつて「氷の城」と呼ばれた公爵邸は、今や温かな笑い声に満ちていた。
「レオン! こっちだ、パパのところまでおいで」
「あー、うー!」
リビングのふかふかな絨毯の上で、ジークハルト様が両手を広げて待っている。
その視線の先には、よちよちと頼りない足取りで歩こうとする、一歳半になったレオンの姿があった。
銀色の髪は柔らかくカールし、宝石のような青い瞳は好奇心いっぱいに輝いている。
「頑張って、レオン! あと少しよ!」
私が横から声援を送ると、レオンはニカッと笑い、ぷるぷると震える足を踏ん張った。
一歩、二歩。
ペタペタと小さな足音が響く。
「……おおっ!」
そして三歩目。
バランスを崩して前のめりに倒れそうになったところを、ジークハルト様が素早く、かつ優しくキャッチした。
「捕まえたぞ! ……よくやった、偉いぞレオン!」
「きゃはは!」
ジークハルト様はレオンを高い高いして、頬ずりをした。
その顔は、かつての「冷徹公爵」の面影など微塵もない、完全なる親バカの顔だった。
「見たか、エリス! 今の力強い歩みを! これは将来、剣聖をも超える足腰になるぞ!」
「ふふ、まだ三歩ですけれどね。でも、本当に上手になりました」
この一年、レオンの成長は目覚ましかった。
懸念されていた魔力暴走も、『魔石式メリー(魔力吸収機)』のおかげですっかり安定し、今では感情が高ぶった時に少し周囲を冷やす程度(夏場にはちょうどいい冷房代わり)に収まっている。
◇
そんなある日の午後。
私たちはテラスでお茶を飲みながら、ある「重大な問題」について話し合っていた。
「……そろそろだな」
「ええ。そろそろですね」
ジークハルト様が真剣な表情でティーカップを置く。
「言葉だ。……レオンが最初に呼ぶのが『パパ』か『ママ』か。これは公爵家の今後を占う一大事だ」
「あら、どちらでもいいじゃありませんか」
「良くない! 私がどれだけオムツを替え、高い高いをし、絵本を読んだと思っている! 最初の言葉は『パパ』であるべきだ!」
彼は子供のようにムキになっている。
実はここ数日、レオンが「まんま」「ブーブー」などの喃語(なんご)を話し始めており、意味のある言葉が出るのも時間の問題と思われていたのだ。
「レオン、いいか? パ、パ、だぞ。……父上でもいい」
「あう?」
「パパと言えたら、この最高級の魔石をやるぞ」
彼は賄賂(わいろ)まで使おうとしている。
私は苦笑しながら、レオンにお菓子を差し出した。
「レオン、無理しなくていいのよ。……マ、マ、でいいのよ?」
「エリス! お前も狙っているじゃないか!」
私たちがじゃれ合っていると、レオンは不思議そうに首をかしげ、ジークハルト様の顔をじっと見つめた。
そして、小さな指で彼の銀髪を指差した。
「……き、き……」
「おっ? 来たか!?」
「き……きー……れー」
レオンは、はっきりとした口調で言った。
「きーれー!」
一瞬、時が止まった。
パパでもママでもない。
「綺麗(きれー)」と言ったのだ。
「……綺麗?」
「あう! パパ、きーれー!」
レオンはニコニコしながら、ジークハルト様のキラキラ輝く銀髪を撫でた。
ジークハルト様は、雷に打たれたように固まり、それから顔を真っ赤にして崩れ落ちた。
「……ぐっ、か、可愛い……ッ!」
「ふふっ、あらあら。パパのことを綺麗って褒めたのね」
「パパではないが……私の髪を綺麗だと言ってくれたのか……そうか……」
ジークハルト様は感動で震えている。
かつて彼は、自分の銀髪や瞳を「冷たい色」「呪われた色」だと忌み嫌っていた。
けれど、最愛の息子に真っ先にその色を「綺麗」だと肯定されたのだ。これ以上の喜びはないだろう。
「レオン、お前は……本当になんて良い子なんだ」
彼はレオンを抱きしめ、何度も頭を撫でた。
レオンも嬉しそうに「パパ、きーれー!」と連呼している。どうやら、パパという単語もセットで覚えたようだ。
「……あ、私『ママ』って呼ばれてないわ」
「ふっ、私の勝ちだな、エリス」
勝ち誇るジークハルト様。
けれどその直後、レオンは私の方を見て、満面の笑みで言った。
「ママ、しゅき!」
ドキュン。
今度は私が撃ち抜かれる番だった。
「……天使がいるわ」
「むぅ……『好き』とは反則だぞ……」
こうして、「初めての言葉対決」は、両親ともにメロメロにされるという引き分けで幕を閉じたのだった。
◇
その日の夜。
遊び疲れたレオンを寝かしつけた後、私たちはテラスに出て、満天の星空を見上げていた。
北の空には、美しいオーロラがかかっている。
「……幸せだな」
ジークハルト様が、私の肩を抱き寄せた。
「ああしてレオンの成長を見守り、お前と笑い合う。……こんな穏やかな日々が、私に来るとは思わなかった」
「私もです。……実家にいた頃は、毎日が冬のようでしたから」
「エリス」
彼は私の手を取り、跪(ひざまず)いた。
その瞳は、星空よりも深く、優しく私を映していた。
「順番が逆になってしまったが……まだ、果たしていない約束がある」
「約束?」
「結婚式だ」
ハッとした。
そういえば、私たちは契約結婚から始まり、ドタバタと戦いや出産を乗り越えてきたため、正式な挙式をしていなかったのだ。
もちろん、籍は入っているし、公爵夫人としての地位も盤石だ。けれど、「誓い」の儀式はまだだった。
「お前に、ウェディングドレスを着せてやりたい。……世界で一番美しい花嫁にしてやりたいんだ」
「ジークハルト様……」
「受けてくれるか? 私の、二度目のプロポーズを」
断る理由なんて、あるはずがなかった。
私は涙で滲む視界の中、大きく頷いた。
「……はい。喜んで」
彼は私の指に口づけ、立ち上がって私を強く抱きしめた。
春の風が、二人の頬を撫でていく。
かつて「氷の城」と呼ばれた公爵邸は、今や温かな笑い声に満ちていた。
「レオン! こっちだ、パパのところまでおいで」
「あー、うー!」
リビングのふかふかな絨毯の上で、ジークハルト様が両手を広げて待っている。
その視線の先には、よちよちと頼りない足取りで歩こうとする、一歳半になったレオンの姿があった。
銀色の髪は柔らかくカールし、宝石のような青い瞳は好奇心いっぱいに輝いている。
「頑張って、レオン! あと少しよ!」
私が横から声援を送ると、レオンはニカッと笑い、ぷるぷると震える足を踏ん張った。
一歩、二歩。
ペタペタと小さな足音が響く。
「……おおっ!」
そして三歩目。
バランスを崩して前のめりに倒れそうになったところを、ジークハルト様が素早く、かつ優しくキャッチした。
「捕まえたぞ! ……よくやった、偉いぞレオン!」
「きゃはは!」
ジークハルト様はレオンを高い高いして、頬ずりをした。
その顔は、かつての「冷徹公爵」の面影など微塵もない、完全なる親バカの顔だった。
「見たか、エリス! 今の力強い歩みを! これは将来、剣聖をも超える足腰になるぞ!」
「ふふ、まだ三歩ですけれどね。でも、本当に上手になりました」
この一年、レオンの成長は目覚ましかった。
懸念されていた魔力暴走も、『魔石式メリー(魔力吸収機)』のおかげですっかり安定し、今では感情が高ぶった時に少し周囲を冷やす程度(夏場にはちょうどいい冷房代わり)に収まっている。
◇
そんなある日の午後。
私たちはテラスでお茶を飲みながら、ある「重大な問題」について話し合っていた。
「……そろそろだな」
「ええ。そろそろですね」
ジークハルト様が真剣な表情でティーカップを置く。
「言葉だ。……レオンが最初に呼ぶのが『パパ』か『ママ』か。これは公爵家の今後を占う一大事だ」
「あら、どちらでもいいじゃありませんか」
「良くない! 私がどれだけオムツを替え、高い高いをし、絵本を読んだと思っている! 最初の言葉は『パパ』であるべきだ!」
彼は子供のようにムキになっている。
実はここ数日、レオンが「まんま」「ブーブー」などの喃語(なんご)を話し始めており、意味のある言葉が出るのも時間の問題と思われていたのだ。
「レオン、いいか? パ、パ、だぞ。……父上でもいい」
「あう?」
「パパと言えたら、この最高級の魔石をやるぞ」
彼は賄賂(わいろ)まで使おうとしている。
私は苦笑しながら、レオンにお菓子を差し出した。
「レオン、無理しなくていいのよ。……マ、マ、でいいのよ?」
「エリス! お前も狙っているじゃないか!」
私たちがじゃれ合っていると、レオンは不思議そうに首をかしげ、ジークハルト様の顔をじっと見つめた。
そして、小さな指で彼の銀髪を指差した。
「……き、き……」
「おっ? 来たか!?」
「き……きー……れー」
レオンは、はっきりとした口調で言った。
「きーれー!」
一瞬、時が止まった。
パパでもママでもない。
「綺麗(きれー)」と言ったのだ。
「……綺麗?」
「あう! パパ、きーれー!」
レオンはニコニコしながら、ジークハルト様のキラキラ輝く銀髪を撫でた。
ジークハルト様は、雷に打たれたように固まり、それから顔を真っ赤にして崩れ落ちた。
「……ぐっ、か、可愛い……ッ!」
「ふふっ、あらあら。パパのことを綺麗って褒めたのね」
「パパではないが……私の髪を綺麗だと言ってくれたのか……そうか……」
ジークハルト様は感動で震えている。
かつて彼は、自分の銀髪や瞳を「冷たい色」「呪われた色」だと忌み嫌っていた。
けれど、最愛の息子に真っ先にその色を「綺麗」だと肯定されたのだ。これ以上の喜びはないだろう。
「レオン、お前は……本当になんて良い子なんだ」
彼はレオンを抱きしめ、何度も頭を撫でた。
レオンも嬉しそうに「パパ、きーれー!」と連呼している。どうやら、パパという単語もセットで覚えたようだ。
「……あ、私『ママ』って呼ばれてないわ」
「ふっ、私の勝ちだな、エリス」
勝ち誇るジークハルト様。
けれどその直後、レオンは私の方を見て、満面の笑みで言った。
「ママ、しゅき!」
ドキュン。
今度は私が撃ち抜かれる番だった。
「……天使がいるわ」
「むぅ……『好き』とは反則だぞ……」
こうして、「初めての言葉対決」は、両親ともにメロメロにされるという引き分けで幕を閉じたのだった。
◇
その日の夜。
遊び疲れたレオンを寝かしつけた後、私たちはテラスに出て、満天の星空を見上げていた。
北の空には、美しいオーロラがかかっている。
「……幸せだな」
ジークハルト様が、私の肩を抱き寄せた。
「ああしてレオンの成長を見守り、お前と笑い合う。……こんな穏やかな日々が、私に来るとは思わなかった」
「私もです。……実家にいた頃は、毎日が冬のようでしたから」
「エリス」
彼は私の手を取り、跪(ひざまず)いた。
その瞳は、星空よりも深く、優しく私を映していた。
「順番が逆になってしまったが……まだ、果たしていない約束がある」
「約束?」
「結婚式だ」
ハッとした。
そういえば、私たちは契約結婚から始まり、ドタバタと戦いや出産を乗り越えてきたため、正式な挙式をしていなかったのだ。
もちろん、籍は入っているし、公爵夫人としての地位も盤石だ。けれど、「誓い」の儀式はまだだった。
「お前に、ウェディングドレスを着せてやりたい。……世界で一番美しい花嫁にしてやりたいんだ」
「ジークハルト様……」
「受けてくれるか? 私の、二度目のプロポーズを」
断る理由なんて、あるはずがなかった。
私は涙で滲む視界の中、大きく頷いた。
「……はい。喜んで」
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