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これより洗礼の儀を執り行う

7、お知恵を貸してください。時間はいっぱい取らせます

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さゆきとめぐみの深夜のラッピングバス
 パーソナリティ 榛葉 さゆき/保呂草 恵

アクトレスガールのコーナーより抜粋

 榛葉 「続いてはこのコーナー。アクトレスガールぅ~(エコー)」

 保呂草「♪ヒューヒュー!」
 榛葉 「どんどん!はーい。このコーナーは、キャリアが10年以上にも関わらず、女性としての演技力が乏しい保呂草さんのオンナ演技力を培うコーナーでーす」
 保呂草「毎回失礼よね(笑)このコーナー説明」
 榛葉 「フラッシュモブでプロポーズされた時のリアクション、我が子がホワイトデーにとんだ白モノを送って来た時の母親としてのリアクションの取り方など、今まで数々の試練をこなしてきましたが、今回はっ、《丸見えなんじゃろな》ですっ!」
 保呂草「丸見えなんじゃろな。ほうほう」
 榛葉 「いわゆる普通の《箱の中身はなんじゃろな》は、箱の中に手を入れて何が入ってるか当てるゲームですが、これは始めから中に何が入ってるかを知った上でやります。キャー!なにこれこわーい!というオンナ演技力が培われるゲームです」
 保呂草「はい」
 榛葉 「というわけでぇ、触ってもらうのはこちらっ!ジャーン!砥石です!」
 保呂草「ほおー、砥石。生活にとんと縁がない(笑)」
 榛葉 「(笑)わかりますかね、砥石。わからなかったらあのみんな、検索して。画像検索 砥石 で」
 保呂草「(笑)えっと説明すると、ざらざらした面とツルツルした面があるやつで、たぶんこう荒削りで、包丁を一回ザラザラ面で荒くしてからツルツル面で仕上げ研ぎみたいなことですかね。へえーっ、うちの実家にあるやつと違いますね」
 榛葉 「どんなでした?」
 保呂草「なんか下に木の板みたいのがついてるやつ。二面ではなかったです。ツルツルだけかな」
 榛葉 「あっ、うちもそうかも!お寿司屋さんとかがあの、テレビで」
 保呂草「わかるわかる!職人さんに取材する時に、細い鋭利な刺身包丁をシュシュシュって研いでるやつ。トイデルヤーツですよ(笑)」
 榛葉 「すごい使い込んだようなやつね!銀座ナントカ寿司板前20年の誰々さん(ええ声)、シャキーン!ってカメラ目線みたいな。あれです、パフォーマンスで研いでるやつ」
 保呂草「パフォーマンスではないですけど(笑)手入れでね。まあ、あれです。やっ、あれではないです。コレはアレではないです。えっ、説明難しい(笑)」
 榛葉  「まあ砥石っつったらアレなんですけど(笑)今回スタジオに用意したのは二面のやつね。あとこちら、重さ計ったんですが…、はい、計測済みとあります。350グラム。で、長さは」
 保呂草「情報多い(笑)」
 榛葉 「まあリスナーさんに分かりやすくイメージしてもらえるように(笑)長さが15センチ。あ、縦15センチ、横5センチ、高さ3センチですね。この情報をリスナーさんには頭に、えー、叩き込んでもらって(笑)で、保呂草さんにはこれを知らない体ていで触っていただき、いいリアクションをという」
 保呂草「ちょっと待って知り過ぎ!今ので情報入りすぎ私!(笑)」
 榛葉 「一回消去して!一回脳から消去して!」
 保呂草「はいっ、はいっ!消した!」
 榛葉 「ではいいですかー?アクトレスガールぅー、スタート!」

 (ゴング)カーン!

 保呂草「もう手ぇ入れていいんですか?」
 榛葉 「どうぞ」
 保呂草「どうしよう…、怖いな…。……はっ!ああっ、もういる!はっ!はっ!」
 榛葉 「えー、今指先でチョンチョンしております(笑)」
 保呂草「えっ!?おっきい!?おっきいもの!?」
 榛葉 「そうー、でもないですね」
 保呂草「噛みません!?これ飛び付かない!?」
 榛葉 「大丈夫です(笑)生き物ではないです」
 保呂草「生き物ではない…。えー、でも怖いなぁ」
 榛葉 「指先でツンツンしてます(笑)」
 保呂草「…ん?固い」
 榛葉 「固いですね」
 保呂草「結構ガッ!ていって大丈夫?」
 榛葉 「いっちゃっても大丈夫です」 
 保呂草「え?なんか…、石?」
 作家 「(笑)」
 榛葉 「(笑)すいません。ちょっと、ちょっといいですか」
 保呂草「なんですか(笑)」
 榛葉 「早過ぎません?(笑)石ってもう、答え三分の二出てます」
 保呂草「えー?(笑)」
 榛葉 「もうちょいなんかこう、遊ばせるというか。尺たっぷり取りましょう」
 保呂草「そうですかぁ?(笑)」
 榛葉 「録れ高、録れ高(小声)」
 保呂草「そうか(笑)あ、じゃあ石無しで」
 榛葉 「一旦、石無しで(笑)はい、一旦石無くしまーす」
 保呂草「これ持って大丈夫なやつ?」
 榛葉 「大丈夫です」
 保呂草「わっ、重い重い!」
 榛葉 「重いですねぇ」
 保呂草「あっ、母親の愛情?」
 榛葉 「違いますね(笑)」
 保呂草「なんだろ…。あっ、えっ!?長い!」
 榛葉 「結構長いです」
 保呂草「あとカドがある!カドがある…。トゲトゲしい母親の愛情?」
 榛葉 「違います!(笑)」
 保呂草「疎遠な姑の愛情?」
 作家 「(爆笑)」
 榛葉 「違います!違うけど…、いいですよ(笑)」
 作家 「グッジョブ(笑)」
 榛葉 「グッジョブな方向です」
 保呂草「ありがとうございます(笑)えー?なにわかんない」
 榛葉 「もっと表面撫でたりとか」
 保呂草「はい。……んー?ザラザラしてる…」
 榛葉 「ザラザラだけですか!?ザラザラだけですか!?」
 保呂草「あっ、反対はツルツルしてる!触る位置によって違う!わかった!はいっ!」
 榛葉 「はいっ!どうぞ!」
 保呂草「擬態した、あの」
 榛葉 「ぎたいぃ?」
 作家 「(笑)」
 保呂草「砥石に擬態した、あの」
 榛葉 「なんですか!?擬態じゃなくて!?」
 保呂草「擬態じゃない!?高級カステラ!!」
 榛葉 「違う!カステラて!(笑)カチカチじゃないですか!」
 保呂草「ういう、ういろう!」
 榛葉 「違います!ういうて!(笑)」
 保呂草「羊羮!高級羊羮!海苔羊羮!」
 榛葉 「違います!擬態じゃないの!意味が違います!」
 保呂草「擬態じゃない!?あ、砥石!!」
 榛葉 「おっ、正解」

♪~Congratulation~

 保呂草「これ出題者さんのパスが難しい」
 榛葉 「そうですね(笑)向こうが知ってる前提なんで、こっち側のヒントどこまで出していいのか」



 「はっ!こんなことしてる場合じゃない!」

  深夜。響季は自室で声優ラジオをお耳のお供に携帯ゲームをやっていた。
  相変わらずラジオ的じゃない、けれどとてもラジオ的なコーナー。
  リスナーの想像力を総動員させるコーナーに、ゲームを進める指と視線を自動にし、耳と脳は放送を消化していた。
  が、それどころじゃなかったと響季はゲームをスリープモードにしてベッドに放る。

 「謝礼のアンケート書かなきゃいけないんだった」

  ルームで頼まれた献結の謝礼アンケート。アドリブが利かない響季は持ち帰りにしていいですか?と職員さんに申し出た。

 「ネットからでも送れるって言ってたっけ」

  言われていた通りにパソコンで献結のサイトを見てみると、確かに謝礼についてのアンケートページが設置されていた。

 「ご当地感出した方がいいのかな」

  献結をするのはほぼ十代だ。職員さんが言っていたように、お母さんなどにあげられる家庭向け消耗品か、あるいは親の地元愛をくすぐるものなどがウケそうだと響季は考えた。

 「入浴剤、はあるか。バスソルトは一緒か。うーん…、ホットジェル、痩せる石鹸、お弁当、ふりかけ、保存の利くつまみ…。はっ!イカ薫製か!いや、胃がもたれるな。あ、じゃあお父さんに」

  思い付いたものをとりあえずケータイメールで打ち、未送信ボックスへ保存していると、

 「わっ。なんだ」

 『至急 お知恵を拝借』という件名で柿内君からメールが届いた。
  本文を見ると、

 「メール採用グッズ案?」

  雑誌系ネタ職人である柿内君は、最新家電情報誌の読者コーナーの常連職人だったが、メールが採用された際のグッズをリニューアルするので編集サイドで新グッズ案を募っているらしい。

 「あー、月刊家電殿下か。知らんがな」

  親友が常連だという雑誌は、マイナー過ぎて響季はいまだに見たことがない。どんな雑誌も取り扱っているような巨大本屋にでも行かないと売っていないのだろう。

 「バウムクーヘンでええやろ」

  口では突き放しつつも、『今までどんなグッズだったの?』と親友に協力するため響季が情報を集める。
  返ってきたメールには『ページ欄外の一言メッセージならステッカー。それ以外なら大体雑誌名入りで差額ある図書カード。一番扱いが大きいのはTシャツ。ページがかなりリニューアルするらしいから今後の扱いはわからナイアガラで打たせ湯』とあった。
  今まではごく無難なものだったらしい。それを大リニューアルとするという。

 「家電好きさんが欲しいやつかぁ」

  ぼすっとベッドに寝転がり、響季は頭を捻る。
 『ヘアバンドとかは?配線繋ぐ時とかに便利そう。あとハンドタオルとか。Tシャツからいっそポロシャツにするとか。生地しっかりさせれば職場で着れそう。そういう雑誌買う人って服とか無頓着そうだシーラカンスの骨砕きふりかけ』
  いくつか提案し、失礼な偏見も織り交ぜ、語尾ボケも返して響季が一度保存して文面を見直す。

 「よし送信…、わっ?」

  だが送信しようとすると、またメールが送られてきた。
  送り主は。

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