アニラジロデオ ~夜中に声優ラジオなんて聴いてないでさっさと寝な!

坪庭 芝特訓

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アニラジを聴いて笑ってる僕らは、誰かが起こした人身事故のニュースに泣いたりもする。(下り線)

34、「ぼくたち」「わたしたちは」「今日もこうして電波の海でキャッキャしてます」「キャッキャしてます」 ※発注指示 卒業式の掛け合い風に

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「…………え?」

  送られてきたメールを響季がもう一度読み返す。
  ごめん。しくった。メール読まれなかった。
  しくったはしくじったという意味だろう。それはわかるが、つまり。

 「読まれなかっ、た」

  零児は番組にメールを送ったが読まれなかったのだ。
  わざわざ手の込んだ手紙まで書いて聴けと言ってきたのに。
  こんな時間に起こさせて、それで読まれなかった。
  火種どころか爆発どころか、不発もいいところだ。

 「……ふ、ぐふっ」

  響季の中で次第におかしさがこみ上げてきた。

 「くふっ…、ひひっ」

  我慢しても笑いが暴発しそうになる。階段に座ったまま顔を伏せ、笑いをこらえる。
  身体が勝手にぶるぶる震えだす。

 「んふっ、きひひっ」

  笑い声を抑えるあまり、脇腹と肺と鎖骨が痛くなる。
  傍から見れば階段で女の子が一人、泣いているようにも見えるだろう。
  誰にも見つからぬよう、誰にも心配をかけないように。誰にも涙を見られたくなくて、一人でこっそり。
  しかし響季は、自分しかわからない面白さに必死に耐えていた。
  あの天才が、職人がしくじったという。

  そして理解する。
  天才だって、時にはしくじることもあるのだ。
  それがとてつもなく面白くて可愛かった。
  響季の中の天才職人が、ただの女の子になった。
  等身大の、自分と同年代のただの女の子に。
  ひょっとしたらそれすら計算のうちだったのかもしれない。
  読まれなかったということが。
  放送でもパーソナリティ二人が言っていた。一週間前からメールの呼び込みをしていたと。
  もし仮に、零児がメールを放送直前に送ったのなら読まれる可能性は低くなる。
  ひょっとしたら最初から送ってすらいないのかもしれない。
  こんな大どんでん返しを見せるために。けれど、

 「あー、おもしれー」

  ニヤけながら響季が額に手をやる。
  あんなに念を押していたのに読まれなかった。そんなオチが面白かった。
  天才職人の深夜の謝罪が。
  そして、こんな夜更けに自分達は何をしているのだろうと笑う。
  良い子は寝る時間で、歳相応の子は夜遊びをしている時間。
  そんな時間に誰も知らないヒミツの夜働きをし、そのしくじりを二人だけで報告し合う。
  それがどうしようもなく楽しかった。

 「あーあ、ったく。退屈しないよホント」

  メールの文面を見ながら、そんな台詞を吐いていると、

 「誰!?」
 「うわあああっ!!」

  懐中電灯を持った夜勤看護師さんにいきなり光を向けられた。夜働きが見つかった泥棒のように。

 「ひびきちゃん!?何してるの?あ、ケータイ!」

  いたのが患者さんだとわかり、看護師さんが小声で咎めてくるが、手の中にあったものを見て何をしてたか気づいたのだろう。
  キュッと眉を吊り上げた看護師さんに響季が萎縮するが、

 「あ、の」
 「もうっ、早く寝なさいっ。明日退院でしょっ?」
 「……へい」

  そう怒られ、すごすご病室へと帰った。
  その背中を、まったくもうなどと言いながら看護師さんが見送る。
  だが背中だけしょんぼりして見せている女子高生が、ひそかに笑いを噛み殺しているのには気づかない。
  それはまるで、布団の中でこっそり深夜ラジオを聴いている子供のようだった。
  真っ暗な廊下を歩きながら、響季は考える。
  怒られてしまった。でも退院したら報告することがまた増えた。
  しかし面白おかしく、時には盛って話さなければならない。
  でなければ彼女は満足しないだろう。


あの後看護師さんに怒られちったよー。メッ!ダメでしょっ!ってスタンガンでびりびり!ってされて、ビカビカして骨透けちゃったよー。ホネホネビカビカしちゃったよー。
いや、流石にこれはないか。
だったらどんなのがお好みだろう。
 看護師さんに見つかってキャー誰よー!ってさすまたでエイヤ!ってされてオウフってなったよー。
 若干床から浮いたよー。
 暗闇だから宇宙遊泳気分だったよー。
いや、宇宙遊泳とかだと長いか。
もっとコンパクトに。


  そんな楽しいことをこっそり考えながら、響季が廊下を歩く。
  いつもは少し怖い、深夜の病院の廊下。
  だがそれも今日が最後で、明日からはまたきっと楽しい日々が始まる。
  唐突にコントを仕掛けられたり、大喜利を仕掛けられたり、振り回されたり、いきなりケツキックをされたり、不意にドキドキさせられたり。
  どんな形でもいい。どんなことをされてもいい。
  あんな面白い女の子と、この先もずっと一緒にいたいと思った。
  誰もいない病室に戻り、響季が窓のカーテンをほんの少しだけ開けると、月が見えた。
  遅くまで深夜ラジオを聴いていた時によく見た、夜明け前の月だった。
  もうすぐ夜が明ける。そうすれば、彼女に逢いに行くことも出来る。
  それはなんて幸せなことなんだろうと、響季は月を見ながら思った。


  そして、いつか二人が大人になって、近くにいることが叶わなくなったとしても。
  きっと彼女はまた暗号めいた文章を自分だけに送り、可愛くて面白い獣を見せてくれるだろう。
  遠く離れた場所でも彼女だとわかる、鮮やかな夜働きを電波に乗せて聴かせてくれるだろう。

  そんな未来を思い描きながら、響季は終わっていく夜空を見上げていた。



さゆきとめぐみの深夜のラッピングバス

 パーソナリティ 榛葉 さゆき/保呂草 恵

 最新放送回
エンディング(生放送特番後に収録。実質2本撮り)

※巻きなのは特番前に保呂草氏が飲んだエスプレッソの利尿作用でトイレに行きたいからで、ドアガチャしてるのはいつもと違うスタジオで勝手がわからないからです



保呂草「あいっ、現在募集中のコーナーは《あなたの街のセクシー・バス・ストップ》《こんな無料シャトルバス乗ってきました》えー、あとはもう全部自分で調べてっ!!」
 榛葉 「はい調べてっ!」
 保呂草「ぁーぅー」
 榛葉 「ヤバイヤバイヤバイッ!!(笑)あとコーナーこれだけですから!」
 保呂草「はやくぅー。ぅぅぅ」
 榛葉 「えーとえーと、《時刻表メッセージボードっ!》」

♪トゥルルルル~ン  ジコクヒョー アーンドゥ Message ボゥード

保呂草「もーいーよ!!オシャレなコーナージングルとかいいよ!はやくやっちゃって!!」
 榛葉 「ひどい!!ぶった切った(笑) えー、ラッピンネーム チキジョージさん。『従兄弟のあきのぶ君へ。この前テレビくれたのにリモコン置いてっちゃってわざわざ郵送してくれてありがとう。また遊びに行くからはっさくちょうだいね』
 保呂草「置いてくな置いてくな!!あげるあげるはっさく!!はい次っ!!」
 榛葉 「(笑)てきとー。ラッピンネーム 休日コスプレイヤーさん『同じ病院で外科看護師やってた倉田パイセン。今はとある場所で音楽活動してるそうで。今度ライブに押しかけて名前うちわ振りますね』
 保呂草「ライブいくいく!!はいはいはい!!」
 榛葉 「(笑)じゃあー、最後っ!ラッピンネーム ゼロスチャイルドくん 『友達のひびきへ。頑張って怪我直せよ。退院するのオレずっと待ってるからな』」
 保呂草「あー、はいはいいいねっ!なに、ステキな友情?もう終わり?」
 榛葉 「いや、まだ続きが、『元気になったらまた一緒にバカやって遊ぼうな PS あとずっと言えなかったけど大好き。愛してる』
 保呂草「エッ!?」
 榛葉 「『これからも君の隣にずっといたいです。君の声とか匂いとか、とにかく全部が大好きです。』だってさ!!キャーッ!!」
 保呂草「えっ!?なにこれBL!?リアルBL!?なにやだどうしよう!ドキドキしてきたっ!!」
 榛葉 「大丈夫ですか?(笑)興奮しすぎてじょばって」
 保呂草「だぁー!!あああっ!!ヤバイかもっ!!早く締めてっ!!」
 榛葉 「尿道締めてっ!!(笑)ああ、じゃあ今週はここまでっ。えっ?あれ?これあたしが言うの?あたしが締めるの?」
 保呂草「尿道締めてェェェン!!(セクシーボイス)」
 榛葉 「そりゃお前だよっ!(笑)すごい、セクシーボイスなのに断末魔の叫び…、あ、じゃあ今週も、ご乗車有難う御座いましたぁ」
 保呂草「ありがとうございましたぁぁ!!」
 榛葉 「(笑)また来週ー」
 保呂草「じゃあねバイバイッ!!くううっ!!」

 (ガタッ!ガシャガシャッ!ガチャガチャガチャ!)

 保呂草 「えっ、ちょっ、ドア!ドアああっ!!!ドア開けてェェ!!」

 (ドンドンドンッ!)

スタッフ「(爆笑)」
 榛葉  「押すの押すのそれっ!(笑)ドア押すのそれっ!」

 (ガチャ、バタンッ!)

 保呂草「どいてぇぇぇぇぇっ!!!」

 榛葉 「マジダッシュだこりゃ(笑)」



 (了)第一部 完
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