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アニラジを聴いて笑ってる僕らは、誰かが起こした人身事故のニュースに泣いたりもする。(下り線)

33、コーンでもカップでも値段かわらない

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榛葉 「なので今回は、ミニアルバム発売を記念して番組名物キャラクター達も続々と登場します」
保呂草「えっ!?あれ?ちょっと待って、台本、」
榛葉 「まずは、保呂草さんが知らない間にご実家で飼い始めたメスのドーベルマン 鳳凰丸ちゃん 大体31歳バースディ企画 覚えてますかね」
保呂草「はい…、覚えてますけど…。待って待って!あたしの持ってる台本と違うッ!」
榛葉 「悪いがその台本はダミーだ(ハードボイルドボイス)」
保呂草「えーっ!?」
榛葉 「それでは登場してもらいましょう!あのバースディ企画のアイスクリーム擬人化計画で産まれた、ジャッキーロードオブジジィです!どーぞ!」
保呂草「…えっ、どんなんだっけ(小声)
榛葉 「ぶるんぶるーんです(小声)」
保呂草「あ、そーだ(小声)」

ジャッキーロードオブジジィ(CV 保呂草 恵 )「ブルンブルーン!おうっ、そこの可愛いお嬢ちゃん!オイラの暴れサイドカーに乗らないかい?ブルン!ブロローン!」

 榛葉 「わーお!ジャッキーロードジジィ、お久しぶりです!」
ジジィ「おう!相変わらずいいケツしてんなぁ!こーの安産型ちゃんめっ!」
 榛葉 「ジジィも相変わらずですね!サイドカーもいい調子で」
ジジィ「ハッハッハァー!こぉーのサイドカーのぉぉ、バン!っと張った流線型がぁぁぁ、オイラはたまらんのさぁぁ!」
 保呂草「(笑)ちょっと待って。なにこれタスケテ」
 榛葉 「はい次っ!どんどんいきますよっ?ポッピングサワーちゃーん?出てきて―」

ポッピングサワーちゃん(CV保呂草 恵)「ポッピン!ポッピンポッピン!ぷいぷいっ!」

 榛葉   「おっ。ポッピンちゃん、今日もポッピンですねぇ」
ポッピン「そうポッピン!えいッ!」
 榛葉   「わ、ちょ、乳首、乳首触んないでくださいっ(笑)人差し指で乳首狙わないでくださいっ」
ポッピン「えいえいッ!ちくびちくびッ!ちくびだいすきッ!」
 榛葉  「これ私の身がもたないな…。えーとじゃあ次は、グレープゾルゲ夫人ー」

グレープゾルゲ夫人(CV保呂草 恵)「グゥゥルェーップッ…、ゾォオオールグェェェェ!!」

 榛葉 「おおッ、ゾルゲ夫人もいらっしゃってくれました!」
 夫人 「クククッ、私の眠りを妨げるのはどこの」
 榛葉 「じゃあ次は」
 保呂草「えっ!?夫人もう終わり?(笑)」



 「うわぁ、ポッピンちゃん懐かしー」

  放送を聴いていた響季がニヤけながら呟く。
  アルバム宣伝の特別番組だと思っていたパーソナリティは、嘘台本を渡されていた。
  ドッキリとしてはよくある展開だが、そんなドッキリムチャぶりも、自前のキャラクター引き出しと瞬発力でこなしていく。
  ジジィもポッピンちゃんも夫人も、スタジオに現れては消えていく。
  それを、パーソナリティは声だけで行っていた。
  声優が声一つでいくつものキャラクターを作り上げ、電波に乗せる。
  それを受け取った聞き手は勝手に想像し、個々の脳内でキャラクターとして完成させていく。ある種それは声優ラジオの醍醐味とも言えた。
  そんなエンターテイメントを、響季は深夜、こっそり楽しんでいた。



  その後は擬人化アイスを取っ替え引っ替えで通常コーナーをこなし、キャラが破綻すること無くやり遂げたらアルバム曲を流していいという流れで番組は進んでいった。
  後ろでうすーく流してもらうのを相方が大声トークで邪魔したり、イントロだけしか流してくれなかったりと、宣伝になるのかならないのかわからない。
  いや、番組側は初めから宣伝なんてする気がなかったのかもしれない。
  宣伝にかこつけて、ただド深夜生放送という普段はやらない企画を大いに楽しみたかっただけかもしれない。そして、



 榛葉 「というわけでぇ今日の生放送、楽しかったひとー?」
 保呂草「はあああああああああああああああああああああいっ!!!」
 榛葉 「もうテンションおかしい(笑)ダブル挙手って。ハイ過ぎますよ」
 保呂草「ハイテンション(笑)えっ!?ハイ!?今ハイっつった!?はああああああああああああああああああああああああああああい過ぎる?」
 榛葉 「うるさいうるさい(笑)聴いてる人みんな耳痛いっ。お母さんも起きてきちゃうよ」
 保呂草「(笑)いいじゃん起きついでに朝ごはん早くしてもらえば。ハムエッグ食べようよハムエッグ」
 榛葉 「はあー。もうね…、あっ、締めろって(笑)」
 保呂草「ええっ!?急っ!!あ、えー、じゃあ、えー、それではよきところで。今週もご乗車、ありがとうございましたぁ」
 榛葉 「急に落ち着いた(笑)」
 保呂草「(笑)」
 榛葉 「はい。じゃあもうみんな、寝ろーっ」
 保呂草「はああああああああああああああああいっ!!!」
 榛葉 「(笑)うるさいうるs」

「……あれ!?」

  響季は普通に特別放送を聴いてしまった。
  曲中に寝落ちすることもなく、予想以上に楽しくてスペシャルな特別生放送だった。
  与えられた放送時間をギリギリまで使ったのか、最後はぷっつりと切れ、すぐにCMが入った。
  だが目的の、零児のメールは読まれなかった。番組内ではいくつかのメールは読まれていたが。

 「…違うラジオネームだったのかな」

  普段使う、自分が授けたラジオネームか、自分がかつて使った使い捨てのラジオネームだと予想していたのだが。
  零児が考えたまったく違うラジオネームだったかもしれない。
  しかし読まれたメールの中から、自分だけに記したメッセージ的なものは拾えなかった。

 「……どういうことだ」

  零児の意図が見えない。
  そして、もしや、いやまさか、という考えが頭をよぎる。
  もしかして、いやまさか。
  送ったメールは読まれなかったのでは、という。



 こっそり病室を抜け出した響季は、真っ暗な廊下を抜き足差し足で歩き、フロアの一番端にある階段へ向かった。
  入院中に仲良くなった若い患者さんに教えて貰った、ケータイを使ってもいいゾーンだ。
  そこなら例外的にいいと、長期入院の患者さんが仲の良い看護師さんに教わり、脈々と口伝されている場所らしい。

 「えっと…、なんて送ろう」

  階段に座りながら文面を考え、

 『放送聴いたけど?』

  どう送ったらいいかわからず、響季はそれだけを伝えた。
  自分と相手しかわからない暗号のような文面。
  ボケも何も挟まない、珍しくシンプルな用件だけの内容。
  それだけ早く知りたかったのだ。そして、

 「わ」

  返信はすぐに来た。
  いつもの総工費100億円レストランのテーマ曲は流れず、バイブ機能にしたケータイが手の中で震える。
  すぐさま響季がメールを開くと、そこには、

 『ごめん。しくった。メール読まれなかった』

と、あった。

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