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第三回公演
5、きな粉ブハーってなるからこぼさないでたべてね。
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中に入るとライトを浴びながら、女性、踊り子さんが小さな円形ステージに寝そべり、L字開脚をして自分の性器を観客に晒していた。
観客はそれに拍手を送っていた。
やっていたのはベッドショーという、ベッド上の情事を髣髴とさせるような色っぽいショーを見せるショーの真っ最中だった。
ある種ストリップの代名詞とも言えるショーだが、それもほぼクライマックスだ。
踊り子さんが何やらアクロバティックなすごいポーズを決めるごとに、客席からは拍手が送られる。
「おおおー」
聞き慣れたJ-POPを耳に、低い声で唸りながら嵐士がそれを見ていると、ステージにひゅいっと白い柔らかな鉤爪のようなものが弧を描いて襲いかかる。
リボンだ。
踊り子さんの身に振りかかる寸前で、それが逆再生のようにまたひゅいっとステージ外へと引っ込む。
ストリップ独特の応援法らしいが、遥心と詩帆にさんざん聞かされていたせいかやや衝撃が弱かった。こんなものかという。
それよりも、だ。
全てを披露するため踊り子さんは下半身には当然何もつけていない。
だが、上は。
「ん、ふふっ」
赤い華をあしらったシースルー素材の着物を着ていたが、
「し、信玄餅っ」
衣装がどうしても有名土産菓子の包みにしか見えない。
客達が信玄餅姫に拍手をしているようでおかしさが込み上げる。
J-POPの終わり部分には和太鼓と三味線からなるメロディがくっついていた。
場内にそれが流れる中、踊り子さんが着物の裾をはためかせながら花道で繋がった本舞台まで戻り、袂をくるりと袖に引っかける。
そしてポポポポ、ポンッという鼓に合わせてにらみのようなものを見せると、拍手喝采でショーは終わった。
「ありがとうございました。マオリ嬢のステージでした。続きまして撮影ショーとなります。参加をご希望のお客様は舞台向かって左手にお並びください」
耳障りの良い場内アナウンスとともに客席に明かりが点き、座っていた客達がざわざわと動きを見せる。
「…近いな」
明るくなると思った以上に客席と舞台が近いのがわかった。場内も狭く、座席も少ない。
ビル内にあるのだからこんなものかと思っていると薄くBGMが流れだし、客達はロビーに向かったり壁際に移動しだす。
それを見て嵐士が、ああ、あれかと気づく。
噂に聞く撮影ショーが始まったのだ。
アナウンスで言われた通り、何人かの男性客が本舞台の袖あたりを先頭に列を作ると、
「んはぁーい、お待ちぃー」
一度袖に戻った踊り子さんが、元気な掛け声とともに素肌にオーバーオールという格好で登場する。
媚びている、まではいかないが鼻先から声を出しているような妙な高音発声だった。
「はぁーい、おはようございまぁーっすぅー」
列を成した男性客たちが踊り子さんに差し入れを渡し、会話し、踊り子さんに渡されたカメラで写真を撮る。
それを、踊り子さんはにこやかにどんどん消化していく。
その流れを見て、ははあ、会って話して触れて写真が撮れる、接触系アイドルと同じシステムかと嵐士が悟る。
そして何人かの撮影客を消化すると、
「もうお衣装の方いませんかーあ?」
そう踊り子さんが元気に声を掛けるが、反応がないのでオーバーオールを脱ぐ。
壁際に立っていた客が新たな列を作りだす。
全裸撮影を希望する客たちだ。
ただのニコパチ写真ではなく、今度は足を開脚させたり股関を晒した写真を撮らせていく。
それを、あらあらやあだとおばさんのように口元に手を当て嵐士が見る。
だがそれもしばらく見ていると慣れた。
若者らしい順応性の高さゆえか、はたまた動画やなにやらで見慣れているからか、そもそも興味がないからか。
代わりに場内をぐるりと観察してみる。
横に長い本舞台と円形の中央舞台を花道が繋ぎ、その縁全てに丸い電球のようなライトがついていた。
そういえば先程のショーでも点いていた気がする。
天井にはミラーボール。
これも先程のショーで回っていた気がするが。
座席は遥心の助言に反して意外と空いていたので舞台に近い場所に座れた。
客は当然のように男性客ばかり。年配客も多い。
腕組をして眠りの体勢を取っている者もいれば、畳んだスポーツ新聞を読んだり、はたまた雑誌や文庫本の類いを読んでる者もいた。
前の方の席で踊り子というか撮影ショー自体を見て楽しんでいる者もいたが、
「…そうか」
嵐士は撮影ショーとやらはやたら長くて時間がかかるから、暇が潰せるものを持っていけと遥心に言われていたのを思い出す。
ケータイは取り出しすら禁止で、いじるならロビーで、とも。
「んー」
アドバイスを思いだしつつ腕組みする。
バッグには最近読んでいる時代小説があるが、せっかくだから撮影ショーをじっくり見てみようかと思うも、
「ああ、おひさしぶりですぅー」
「おはようございますぅ」
「アハハ、そうなんですかぁ?」
踊り子さんの無理やり節をつけたような変に高い声で耳が痛くなる。
差し入れをしている客も多く、踊り子さんはどんなものでも一つ一つ嬉しそうに受け取る。
それをじっと見てるうちに、もし自分があげるなら何が喜ばれるだろうと嵐士は考え、
「差し入れってぇ」
「えっ?」
蘭が、嵐士という設定の時用の低い声を出す。
踊り子さんの方を見ながら独り言のように。
だが実際には隣の客に話しかけていた。
おそらくは40ぐらいの、小太りで人の良さそうなおじさんに。
観客はそれに拍手を送っていた。
やっていたのはベッドショーという、ベッド上の情事を髣髴とさせるような色っぽいショーを見せるショーの真っ最中だった。
ある種ストリップの代名詞とも言えるショーだが、それもほぼクライマックスだ。
踊り子さんが何やらアクロバティックなすごいポーズを決めるごとに、客席からは拍手が送られる。
「おおおー」
聞き慣れたJ-POPを耳に、低い声で唸りながら嵐士がそれを見ていると、ステージにひゅいっと白い柔らかな鉤爪のようなものが弧を描いて襲いかかる。
リボンだ。
踊り子さんの身に振りかかる寸前で、それが逆再生のようにまたひゅいっとステージ外へと引っ込む。
ストリップ独特の応援法らしいが、遥心と詩帆にさんざん聞かされていたせいかやや衝撃が弱かった。こんなものかという。
それよりも、だ。
全てを披露するため踊り子さんは下半身には当然何もつけていない。
だが、上は。
「ん、ふふっ」
赤い華をあしらったシースルー素材の着物を着ていたが、
「し、信玄餅っ」
衣装がどうしても有名土産菓子の包みにしか見えない。
客達が信玄餅姫に拍手をしているようでおかしさが込み上げる。
J-POPの終わり部分には和太鼓と三味線からなるメロディがくっついていた。
場内にそれが流れる中、踊り子さんが着物の裾をはためかせながら花道で繋がった本舞台まで戻り、袂をくるりと袖に引っかける。
そしてポポポポ、ポンッという鼓に合わせてにらみのようなものを見せると、拍手喝采でショーは終わった。
「ありがとうございました。マオリ嬢のステージでした。続きまして撮影ショーとなります。参加をご希望のお客様は舞台向かって左手にお並びください」
耳障りの良い場内アナウンスとともに客席に明かりが点き、座っていた客達がざわざわと動きを見せる。
「…近いな」
明るくなると思った以上に客席と舞台が近いのがわかった。場内も狭く、座席も少ない。
ビル内にあるのだからこんなものかと思っていると薄くBGMが流れだし、客達はロビーに向かったり壁際に移動しだす。
それを見て嵐士が、ああ、あれかと気づく。
噂に聞く撮影ショーが始まったのだ。
アナウンスで言われた通り、何人かの男性客が本舞台の袖あたりを先頭に列を作ると、
「んはぁーい、お待ちぃー」
一度袖に戻った踊り子さんが、元気な掛け声とともに素肌にオーバーオールという格好で登場する。
媚びている、まではいかないが鼻先から声を出しているような妙な高音発声だった。
「はぁーい、おはようございまぁーっすぅー」
列を成した男性客たちが踊り子さんに差し入れを渡し、会話し、踊り子さんに渡されたカメラで写真を撮る。
それを、踊り子さんはにこやかにどんどん消化していく。
その流れを見て、ははあ、会って話して触れて写真が撮れる、接触系アイドルと同じシステムかと嵐士が悟る。
そして何人かの撮影客を消化すると、
「もうお衣装の方いませんかーあ?」
そう踊り子さんが元気に声を掛けるが、反応がないのでオーバーオールを脱ぐ。
壁際に立っていた客が新たな列を作りだす。
全裸撮影を希望する客たちだ。
ただのニコパチ写真ではなく、今度は足を開脚させたり股関を晒した写真を撮らせていく。
それを、あらあらやあだとおばさんのように口元に手を当て嵐士が見る。
だがそれもしばらく見ていると慣れた。
若者らしい順応性の高さゆえか、はたまた動画やなにやらで見慣れているからか、そもそも興味がないからか。
代わりに場内をぐるりと観察してみる。
横に長い本舞台と円形の中央舞台を花道が繋ぎ、その縁全てに丸い電球のようなライトがついていた。
そういえば先程のショーでも点いていた気がする。
天井にはミラーボール。
これも先程のショーで回っていた気がするが。
座席は遥心の助言に反して意外と空いていたので舞台に近い場所に座れた。
客は当然のように男性客ばかり。年配客も多い。
腕組をして眠りの体勢を取っている者もいれば、畳んだスポーツ新聞を読んだり、はたまた雑誌や文庫本の類いを読んでる者もいた。
前の方の席で踊り子というか撮影ショー自体を見て楽しんでいる者もいたが、
「…そうか」
嵐士は撮影ショーとやらはやたら長くて時間がかかるから、暇が潰せるものを持っていけと遥心に言われていたのを思い出す。
ケータイは取り出しすら禁止で、いじるならロビーで、とも。
「んー」
アドバイスを思いだしつつ腕組みする。
バッグには最近読んでいる時代小説があるが、せっかくだから撮影ショーをじっくり見てみようかと思うも、
「ああ、おひさしぶりですぅー」
「おはようございますぅ」
「アハハ、そうなんですかぁ?」
踊り子さんの無理やり節をつけたような変に高い声で耳が痛くなる。
差し入れをしている客も多く、踊り子さんはどんなものでも一つ一つ嬉しそうに受け取る。
それをじっと見てるうちに、もし自分があげるなら何が喜ばれるだろうと嵐士は考え、
「差し入れってぇ」
「えっ?」
蘭が、嵐士という設定の時用の低い声を出す。
踊り子さんの方を見ながら独り言のように。
だが実際には隣の客に話しかけていた。
おそらくは40ぐらいの、小太りで人の良さそうなおじさんに。
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