昭和90年代のストリップ劇場は、2000年代アニソンかかりまくり。

坪庭 芝特訓

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第三回公演

19、さて、本腰を据えて見ましょうぞ。ってうるさいぞ支配人!

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 撮影ショーが始まると席が空いたので、椅子取りゲームが如くそこに二人が座った。

「まだ、大丈夫か」

 そして自分のバッグの中に入れたままのケータイで嵐士が時間を確認し、

「くっそ、腕時計持ってくるんだったぁー。デジタルでライト点く奴」
「それ毎回思う」

 いまこの場に必要な物を言い当て、それそれ、それだよとハルくんが嵐士を指差す。
 場内には壁時計はあるが、ショーの最中は真っ暗になるので手元に時計がないと困る。
 特に今日のような時間を気にする日は。
 かといって時間はケータイで見てしまう世代なので腕時計なんてしない。
 おまけに普通のではなく、バックライトが点くようなものでないと暗闇では見れないのだ。
 こちらはどのステージも大体30分程で終わるのだが、嵐士は途中退席の予定なので時間がわからないのは怖い。

 一人の踊り子さんのショーが終わればすぐ次のショーが始まるので、見応えのある踊り子さんが続けばうっかりすると時間の感覚がなくなる。
 必ず挟まれる撮影ショーが押せば尚更だ。
 抜け出す予定の時間に見応えのあるステージが始まってしまったら、抜け出すタイミングが測れなくなってしまう。

「さっきのとこまで走ってどれぐらいかかるかな」
「ここ来るまで歩いて大体5分位だったでしょ?」
「でもハルくんのせいでちょっと迷ったから」
「いや、出口間違えた時間引いてだよ」
「いやいや、キミ駅出てからも二、三回違う方歩いてったよ」
「ホントに!?」

 そんなことを言い合いながら嵐士がケータイ入りバッグのファスナーを閉め、行儀悪く椅子の上で靴を履いたまま胡座をかくと、

「ちょっと!」

 まっピンクの浮かれた法被を着たおじさんがすっ飛んできた。
 ケータイでの盗撮疑惑かと二人がびっくりするが、おじさんが着た法被の襟の部分には劇場名が刺繍されていた。
 どうやら従業員らしいが、

「靴履いたまんま椅子の上で胡座かかないで!!」
「は、はい。すいません」

 面食らいつつも嵐士が素直に従う。
 そしてぷりぷり肩を怒らせながら、まったく近頃の若いモンはと背中だけで言いながら従業員が去って行くと、

「あれ、ここの支配人だよ。結構マナーうるさいよ、あの人」

 近くにいた常連らしき客が、笑いながら小声でそう教えてくれた。


 そしてその後も、

「そしたらさあ、ケースと中のDVD違っててー。そのまんま返却しちゃって店から電話が」

 長引く撮影ショーの間。ハルくんと話しながら嵐士はついうっかり、椅子の上で靴を履いたまま体育座りをしてしまい、

「ちょっと!靴っ!」

 また支配人がすっ飛んできて注意された。
 どうにも男の子の時は足癖が悪くなってしまう。

「…ここなんかやだ」
「まあまあ」

 支配人が去った後に口をへの字に曲げてそう言う嵐士を、ハルくんが苦笑いで宥めた。



 オープンショーを挟んで次の踊り子さんのステージになった。
 暗くなった場内に有名OLドラマのサントラが流れてくる。
 ライトが点くと、本舞台に踊り子さんがキャスター付きのパソコンチェアに足を揃えてちょこんと座っていた。もっさい眼鏡を掛け、身を包むのは薄いブルーの、コスプレチックな安っぽいOLの制服。
 申し訳なさそうに周りを伺い、おどおどしている。
 髪を後ろでひとつに纏め、カチューシャをした、いかにも野暮ったい庶務課のOL風。

「悪くないな」
「うわー、ハルくんあーゆーの好きなんだ」
「きらいじゃないんだぜ」

 ハルくんの好みに嵐士が難色を示す。
 男の子キャラの時の遥心は語尾がおかしかった。
 舞台では踊り子さんが見えないキーボードを打ち、デスクワークの小芝居をする。
 更にブリーフケースから紙の資料の束を出し、本舞台にぶちまけてしまう。焦ったように拾い、ズレた眼鏡を直し、拾ったのにまた落としてしまう。どんくさい、使えないOLを演じる。

 曲が変わってしっとりしたピアノ曲になった。
 そしてOLさんの、私ってなんてダメなの、という自己嫌悪タイムが始まる。
 斜め座りで、悲しい表情でかぶりを振る。
 拾った資料を抱え、しょんぼりしながら舞台袖へ。
 しばらくのち、一転して曲が豪奢なクラシック音楽に切り代わる。
 高そうなスーツに着替え、優雅に髪を結った姿で踊り子さんが出てきた。
 踵の高いヒールでかつかつと本舞台へ進む。
 OLが大出世を遂げたのか、はたまたその会社のトップなのか、女社長が出てきた。
 パソコンチェアで色っぽく足を組みかえ、

「社長椅子ならよかったのに」

 舞台を見たままハルくんが呟く。
 パソコンチェアでは女社長の雰囲気が出しづらい。
 だがそんなダメ出しなど聞こえるはずもない。
 女社長は高そうなスーツの下には、これまた高そうなランジェリーを直接身に着けていた。
 身動きするたびに豪奢なレースの着いたブラがスーツの胸元から覗く。
 シャープなフレームの眼鏡を神経質そうな指先で直し、スケジュールをチェックする。しばらくすると頭痛を振り払うようにこめかみに手を当てた。
 地位と名誉を手に入れたのに、日々の激務に追われる女社長か。

 しばらくぼうっと宙を見上げていると、周囲を伺ってから眼鏡を外し、立ち上がってコチラにおしりを向けるとストッキングをするすると脱ぎ出す。
 曲がムーディなピアノ曲に切り代わった。
 それに合わせて照明も艶っぽいものに変わっていき、

「うわ…」

 取り出されたものを見てハルくんが低い声で唸る。
 この流れは、いやだなあと。
 仲の良い友達が横にいるのにいやだなあと。
 それは嵐士も同じだった。
 女社長はブランドバッグから黒く太いバイブレータを取り出すと、一緒に出したゴム製品の封を舌舐めずりしながら開けて先端に被せる。
 そしてそれをパソコンチェアに座ったまま生殖器に挿入した。
 女社長が魅惑のリラックスタイムを始める。
 部下にも見せない、秘密の顔と乱れた痴態がそこにはあった。
 いつもより高い位置に生殖器があるため、そんなに見たくもないのに二人にもその様はとてもよく見えた。

 
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