昭和90年代のストリップ劇場は、2000年代アニソンかかりまくり。

坪庭 芝特訓

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第二回公演

16、彼女が最後に見たかったもの

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 詩帆はこれが今季最後と決めたストリップ劇場へと向かっていた。
 電車を乗り継ぎ、県を跨いでやって来たのは、ヌードスタジオ 滸(ほとり)ミュージック。
 繁華街の中心にある劇場だ。
 黒一色の、下品なライブハウスのような外観。
 劇場外の看板には踊り子さんの宣材写真を勢揃いさせたポスターが貼られ、その一人の下にセクシー女優初来演という文字が掲げられていた。
 どうやら今週はAV女優様がご来演らしい。
 ということは撮影目当てのファンや転売目当ての輩が列を成し、撮影ショーが長引くかもしれない。

「ふうむ」

 劇場前でその辺りまで予想し、詩帆は入り口ドアへと向かうが、その前に、

「だいじょうぶ、かな」

 今日の自分のファッションを改めて見る。
 本日の詩帆の格好はデニムシャツにノルディック柄のポンチョを纏い、下はコーデュロイのショートパンツとウエスタンブーツ姿の大学生風女の子だった。
 設定は、面白そうだと好奇心の塊でやってきたごく普通の女の子。
 普通がわからずポンチョを選んだが、ポンチョなんて正解がわかりづらいものを着てきた。
 果たしてコーディネートはこれで合っているのかと常に首を傾げながら電車を乗り継ぎやってきたのだ。
 だが行先はどうせストリップ劇場。気合いを入れる方向性が女子としては明らかに間違っていた。
 武装するためにデカ目メイクで美人に擬態はしているが。

「学生いちまい」

 学割が効くため窓口でそう告げると、学生証の提示が求められた。
 学校名と名前がバレてしまうがまあいいだろうと詩帆が渡す。

「誰か贔屓にしている踊り子さん見にきたの?」

 お釣りを用意している間、従業員がにこやかに訊いてきた。

「いえ、特には」
「はじめて?」
「はい」

 ここの劇場は、という意味では「はい」だ。
 ストリップは初めてかという意味では「いいえ」だが、詩帆は前者の意味として受け取った。
 様々な劇場を練り歩いていると知れたら、ポンチョまで来て仕込んできた普通設定が壊れてしまう。
 詩帆が答えると、従業員は何かに気づいたようにまじまじと顔を見つめてきた。
 なんだろうと思いつつ半券を受け取ると、それなりに広々としたロビーでプリントアウトされて置いてあった香盤表を取り、詩帆が場内へと向かう。
 そして考える。
 ちょうどストリップ巡りも飽きてきたところだ。
 そろそろ喧嘩期間を取り下げるべきか。
 何より愛する人の体温や匂いを欲していた。

 ぼんやりとした決意と共に詩帆が妙に軽いドアを押すと、きらびやかなライトとやや音の割れたムーディな音楽がお出迎えした。
 更に全裸にマラボーだけを纏った踊り子さんが視界に飛び込んできた。
 背がすらりと高く、均整のとれた身体で中央舞台に立っていた踊り子さんは、他の客の邪魔にならないよう身を低くして入ってきたごくごく普通の女の子に、あらいらっしゃい楽しんでってねと柔らかな視線を送る。
 ロビーに比べ狭い場内にはそれなりに客が入っていたが、全員が男だ。
 そこへ、迷い込んだ仔兎の体で詩帆は混ざり込む。
 設備の古臭さからか、客の年齢層の高さからか、平成の世においてそこはどこか昭和の雰囲気が漂っていた。
 そして、やはりこの秘密クラブのような空間が詩帆は好きだった。



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