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40、ステージを終えた踊り子さんにはお手を触れて優しくしてあげてください
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「経験値貰えるクエストってあとどれ?」
「待って、いま攻略サイトで調べます」
アニメ声ちゃんがご飯しか残っていないロコモコ丼にウスターソースとタバスコをかけ回して平らげ、酔いどれ姉さんが詩帆のバナナシフォンを勝手に食べて遥心の膝枕で眠ってしまった後。
若いライトゲーマー姉さんと遥心と詩帆はお姉さんのレベルをあげるため、ひたすらゲームをしていた。ゲーマー姉さんの問いに、遥心がゲーム機を店の無線LANからネットに繋いで調べる。
「最近のゲームってネット出来るんだー。すごいねー」
頼んだ刺身御膳を食べながらアニメ声ちゃんが言う。
「昴留、よく食うね」
「刺身は別腹ー」
ゲーマー姉さんに言われ、アニメ声ちゃんが胡麻と刻んだ大葉の掛かった白米を箸でわしわし掻きこむと、
「すばるちゃん」
詩帆が昴留と呼ばれたアニメ声ちゃんの方を向く。
「こんばんはすばるちゃん」
「うん、こんばんはー」
そしてライトゲーマー姉さんの方を向く。気付けばお互いの自己紹介もまだだった。
「あたし?綾歌だよ」
「こんばんは、あやかさん」
詩帆が頭を下げ、
「それは?」
と、遥心の膝枕で気持ち良さそうに寝こけている姉さんをあごで示す。
「ああ、季更紀(きさらぎ)姐さんだよ。それって」
一人だけ態度が違う詩帆に綾歌さんが笑う。
季更紀姐さんにはバナナシフォンの恨みがあった。
遥心もあははと笑いながら、寝息を立てる姐さんの頭を撫でた。
さらさらとした髪が気持ちいい。撫でるたびに酒臭い匂いと香水の匂いと姐さん自身の香りが立ち上る。
笑いながら、撫でながら、遥心は詩帆がまたしても焼きもちを妬いているのがわかった。だがそれとは別に、遥心は自分の膝で寝る美人なお姉さんの髪は撫でていたかった。
「あたしは詩帆です。そっちは遥心」
「どうも」
「へえ、二人は」
「あー!わかりました!《死に物狂いで砂漠でダンス》と《快楽に溺れた異教徒》です!」
綾歌さんが関係性を訪ねようとするのを、遥心が攻略サイトで得た情報で遮る。
恋人だとバレたら気を利かせて季更紀姐さんを叩き起こすだろう。
しかし遥心は酔いつぶれた美人を膝枕するという状況と、それに対し焼きもちを妬く彼女という状況をまだ楽しみたかった。あとで詩帆からどんなことを言われようが、どんな事をされようが構わない。今はこのシチュエーションを楽しみたかった。
「回復してっ!」
「はいっ!」
「あー、ごめん死んだ」
「おいっ!」
しばらく三人での通信プレイが続き、食べ終わって暇を持て余した昴留ちゃんが、遥心の肩にあごを乗せてゲーム画面を覗きこんでくる。
「あ、ちょ、昴留ちゃん、やめ、てっ」
昴留ちゃんは肩にあごを乗せたまま時折遥心の脇腹を触ったり、指の背で耳を撫でたり、襟元にひんやりした手を差し入れたりして邪魔をしてきた。
それを遥心が笑いながら、言葉だけでやめてと言う。
お風呂上がりなのだろう、昴留ちゃんの肌と髪からはいい匂いがして、遥心は気づかれないように匂いを嗅いだ。
ゲーム画面を見ているはずの詩帆の第三の視線が遥心に突き刺さる。
「ふぃー。ちょっと休憩ー」
綾歌さんの声にゲームが一時中断された。
昴留ちゃんが肩から離れ、遥心はほっとしたようながっかりしたような気分になる。
「うっわ、肩痛い」
ずっと同じ姿勢でプレイしていたからだろう、綾歌さんが凝り固まった首や肩を揉みだした。それを見て詩帆が綾歌さんの二の腕をふにふにと掴む。
「おっ、なんだなんだ」
「あんまり筋肉ない」
「ああ、ちょっとは付けなきゃいけないんだけどねー。ほとんど地方行ってるからジムとかも通えないし」
「ジムなんか行かなくても筋トレなんかどこでもできる」
「いや、筋トレだけじゃなくて」
「筋トレだって有酸素運動だって、やろうと思えばどこでもできる」
言い訳ばかりでやろうとしない綾歌さんに、詩帆がなかなか手厳しい意見を言う。
「そおだけどぉー。わかってるけどぉー」
「まあ、でも夜遅い仕事だし、色々と大変なんですよね」
むくれる綾歌さんに、遥心がフォローしようとわかった風なことを言う。プロのパフォーマーを甘やかす遥心を詩帆がじっと見て、そのまま鋭い視線を膝の上に動かす。
女を膝に寝かせてわかった風な口を聞くな、とそのデカ目が語っていた。
「えっ、と。お姐さーん、そろそろ起きた方が」
遥心が季更紀姐さんの身体を揺すると、姐さんは、んむう、と寝返りを打ち、顔を遥心のお腹側に向けた。年上美人のゆっくりとしたふくよかな寝息がお腹に当たり、遥心の子宮が切なくなる。
「店員さん!そこの人寝てますよ!叩き起こさなくていいんですか!」
詩帆がテーブルをガンガン叩きながら、怒気を孕んだ声で店員に注意を促し、
「姐さん、そろそろ」
綾歌さんまで一緒になって起こしにかかる。
後輩の声に姐さんがようやくむくりと起き上がると、突然、
「あたしもう踊り子やめる」
と、言い出した。
「ええっ!?」
「ああ、また」
姐さんの突然の引退宣言に遥心が慌て、綾歌さんが額に手をやり、詩帆は下唇を噛む。
「これ、果肉すごーい」
昴留ちゃんは追加注文した夏みかんタルトに舌鼓を打っていた。
「いや、いつものパターンだから。肉食べて、酒飲んで、甘いもの食べて、ちょっと寝て起きると大概やめるやめる言うの」
慌てる遥心に綾歌さんが説明する。いつものことだと。酔っ払いの戯言だと。
「やめて田舎帰る」
「姐さん実家じゃーん。資格も免許もないし、やめてどうすんのー?」
口だけで引退宣言をする季更紀姐さんに、昴留ちゃんがタルトを食べながら言う。
「うう…」
「やめても抜き風俗が関の山だよー。風俗嫌なんでしょー?」
「ううー」
「わっ」
後輩からズバズバと辛辣な言葉を投げつけられた季更紀姐さんが、遥心の肩に顔を埋めた。遥心がそれを思わず抱き締める。
抱き締めながら詩帆を見ると、もう表情というものが無かった。怖い、とても怖い。
「姐さん、落ちついて」
とても怖いけれど、遥心は目の前の女性の背中を撫でて落ちつかせる。
「昴留は映像の仕事あるからいいじゃないっ!」
「映像…」
詩帆が呟く。遥心は知っていた。最近覚えた単語だ。
どうやらこの踊り子さんもセクシー女優さんだったようだ。
「うん、キカタン系。おもにレズ多めー」
映像、が何の職業か、キカタンがどういう意味かわかっている遥心に、昴留ちゃんがフォークを咥えたままVサインをしてくる。遥心がその昴留ちゃんの顔をまじまじと見る。
ハーフ系美少女の顔立ちはなんとなくどこかで、サンプル映像で見た気がした。
「食べるー?あーん」
「あっ、ふぁい」
そして夏みかんタルトをあーんで、一口貰う。その間も優しく季更紀姐さんの背中を撫でていたが、
「おおっとぉ」
与えられる優しさに甘えたいのか、姐さんが肩から本格的に遥心の胸元に顔をうずめた。
甘えたい時、不安に押しつぶされそうな時は男性の厚い胸板より、薄くても女性の胸の方が安心する。遥心はいい歳した大人に、あまり豊かとはいえない胸をどうぞとばかりに貸した。当然、多大な下心を持って。
その現場を見て、詩帆が口を開く。
「おい、ババア」
「なによ小娘!」
その三文字に、遥心の胸に顔を埋めていた季更紀姐さんが詩帆の方を振り向き、食いつかんばかりの勢いで吠える。
「あんたなんてどうせ大学の夏休みとかで冷やかしに見に来ただけでしょ!若いと思ってたらあんただってあっという間に」
「あたしの女から離れろババア」
詩帆の言葉に場が凍りつく。
「…離れろ、ババア」
再度地を這うような低い声で詩帆が言うと、姐さんはゆるゆると遥心の胸元から離れていった。
「綾歌さんとババア、席交代」
「えっ?」
「席交代」
「は、はい」
綾歌さんが返事と共に席を立つ。季更紀姐さんものろのろと立ち上がり、詩帆の隣に座り、綾歌さんが遥心の隣に座る。
昴留ちゃんとはまた違ういい匂いがふわんと香り、遥心がさりげなく鼻をひくつかせるが、はっ、と詩帆を見ると表情がない。
その隣には酔いがすっかり醒め、これから何が始まるのかと急にそわそわとしだした季更紀姐さんがいた。詩帆が目を伏せ、一つ息を吐くと、
「言いたいこと、全部話せ」
静かにそう言った。
「愚痴でも、悩みでも、不安でも、なんでもいい。話したいこと全部話せ。言ったらだいたい楽になる。整理がついて解決に向かう。女ってのはそういう風に出来てる」
詩帆が季更紀ババア姐さんの目をしっかり見据え、
「強いからな」
男ばりの度量の深さと女の強さでもってそう言った。
ううー、と季更紀姐さんが詩帆の、遥心よりは豊かな胸に顔を埋める。それを見て遥心が、あっ、と心の中で声を上げた。
その声が聞こえたかのように詩帆が姐さんを抱きとめながら、遥心の方をニヤリとした表情で見てくる。
嫉妬の念にかられるが、詩帆はこんな思いで自分の膝枕姿を見ていたのかという反省の思いもあった。
だがそれ以上に、両サイドからものすごくいい匂いがして、遥心はなんだかうまく考えがまとまらなかった。
季更紀姉さんの愚痴とも悩みとも懺悔ともつかないそれは長時間続いた。
それを、詩帆はうん、そうだね、わかるよなどと相槌を打ち、時折慰めるように身体に触れてやりながら聴いてあげた。
後の三人で古今東西可愛いものをやり、昴留ちゃんの挙げたものが明らかににグロいものでその都度審議がなされても続いた。
綾歌さんが遥心と詩帆の性生活を根掘り葉掘り聞きだしても続いた。
綾歌さんと遥心だけでゲームを再開すると、若い女の子二人の関係を知るや昴留ちゃんが遥心の内腿を撫でさすったり、ショートパンツの裾から指を差し入れたり、ゲーム機を持った腕を胸で挟もうとしたりしても続いた。
女五人のうろ覚えアニメキャラお絵かき大会が終わっても―。
(了)
「待って、いま攻略サイトで調べます」
アニメ声ちゃんがご飯しか残っていないロコモコ丼にウスターソースとタバスコをかけ回して平らげ、酔いどれ姉さんが詩帆のバナナシフォンを勝手に食べて遥心の膝枕で眠ってしまった後。
若いライトゲーマー姉さんと遥心と詩帆はお姉さんのレベルをあげるため、ひたすらゲームをしていた。ゲーマー姉さんの問いに、遥心がゲーム機を店の無線LANからネットに繋いで調べる。
「最近のゲームってネット出来るんだー。すごいねー」
頼んだ刺身御膳を食べながらアニメ声ちゃんが言う。
「昴留、よく食うね」
「刺身は別腹ー」
ゲーマー姉さんに言われ、アニメ声ちゃんが胡麻と刻んだ大葉の掛かった白米を箸でわしわし掻きこむと、
「すばるちゃん」
詩帆が昴留と呼ばれたアニメ声ちゃんの方を向く。
「こんばんはすばるちゃん」
「うん、こんばんはー」
そしてライトゲーマー姉さんの方を向く。気付けばお互いの自己紹介もまだだった。
「あたし?綾歌だよ」
「こんばんは、あやかさん」
詩帆が頭を下げ、
「それは?」
と、遥心の膝枕で気持ち良さそうに寝こけている姉さんをあごで示す。
「ああ、季更紀(きさらぎ)姐さんだよ。それって」
一人だけ態度が違う詩帆に綾歌さんが笑う。
季更紀姐さんにはバナナシフォンの恨みがあった。
遥心もあははと笑いながら、寝息を立てる姐さんの頭を撫でた。
さらさらとした髪が気持ちいい。撫でるたびに酒臭い匂いと香水の匂いと姐さん自身の香りが立ち上る。
笑いながら、撫でながら、遥心は詩帆がまたしても焼きもちを妬いているのがわかった。だがそれとは別に、遥心は自分の膝で寝る美人なお姉さんの髪は撫でていたかった。
「あたしは詩帆です。そっちは遥心」
「どうも」
「へえ、二人は」
「あー!わかりました!《死に物狂いで砂漠でダンス》と《快楽に溺れた異教徒》です!」
綾歌さんが関係性を訪ねようとするのを、遥心が攻略サイトで得た情報で遮る。
恋人だとバレたら気を利かせて季更紀姐さんを叩き起こすだろう。
しかし遥心は酔いつぶれた美人を膝枕するという状況と、それに対し焼きもちを妬く彼女という状況をまだ楽しみたかった。あとで詩帆からどんなことを言われようが、どんな事をされようが構わない。今はこのシチュエーションを楽しみたかった。
「回復してっ!」
「はいっ!」
「あー、ごめん死んだ」
「おいっ!」
しばらく三人での通信プレイが続き、食べ終わって暇を持て余した昴留ちゃんが、遥心の肩にあごを乗せてゲーム画面を覗きこんでくる。
「あ、ちょ、昴留ちゃん、やめ、てっ」
昴留ちゃんは肩にあごを乗せたまま時折遥心の脇腹を触ったり、指の背で耳を撫でたり、襟元にひんやりした手を差し入れたりして邪魔をしてきた。
それを遥心が笑いながら、言葉だけでやめてと言う。
お風呂上がりなのだろう、昴留ちゃんの肌と髪からはいい匂いがして、遥心は気づかれないように匂いを嗅いだ。
ゲーム画面を見ているはずの詩帆の第三の視線が遥心に突き刺さる。
「ふぃー。ちょっと休憩ー」
綾歌さんの声にゲームが一時中断された。
昴留ちゃんが肩から離れ、遥心はほっとしたようながっかりしたような気分になる。
「うっわ、肩痛い」
ずっと同じ姿勢でプレイしていたからだろう、綾歌さんが凝り固まった首や肩を揉みだした。それを見て詩帆が綾歌さんの二の腕をふにふにと掴む。
「おっ、なんだなんだ」
「あんまり筋肉ない」
「ああ、ちょっとは付けなきゃいけないんだけどねー。ほとんど地方行ってるからジムとかも通えないし」
「ジムなんか行かなくても筋トレなんかどこでもできる」
「いや、筋トレだけじゃなくて」
「筋トレだって有酸素運動だって、やろうと思えばどこでもできる」
言い訳ばかりでやろうとしない綾歌さんに、詩帆がなかなか手厳しい意見を言う。
「そおだけどぉー。わかってるけどぉー」
「まあ、でも夜遅い仕事だし、色々と大変なんですよね」
むくれる綾歌さんに、遥心がフォローしようとわかった風なことを言う。プロのパフォーマーを甘やかす遥心を詩帆がじっと見て、そのまま鋭い視線を膝の上に動かす。
女を膝に寝かせてわかった風な口を聞くな、とそのデカ目が語っていた。
「えっ、と。お姐さーん、そろそろ起きた方が」
遥心が季更紀姐さんの身体を揺すると、姐さんは、んむう、と寝返りを打ち、顔を遥心のお腹側に向けた。年上美人のゆっくりとしたふくよかな寝息がお腹に当たり、遥心の子宮が切なくなる。
「店員さん!そこの人寝てますよ!叩き起こさなくていいんですか!」
詩帆がテーブルをガンガン叩きながら、怒気を孕んだ声で店員に注意を促し、
「姐さん、そろそろ」
綾歌さんまで一緒になって起こしにかかる。
後輩の声に姐さんがようやくむくりと起き上がると、突然、
「あたしもう踊り子やめる」
と、言い出した。
「ええっ!?」
「ああ、また」
姐さんの突然の引退宣言に遥心が慌て、綾歌さんが額に手をやり、詩帆は下唇を噛む。
「これ、果肉すごーい」
昴留ちゃんは追加注文した夏みかんタルトに舌鼓を打っていた。
「いや、いつものパターンだから。肉食べて、酒飲んで、甘いもの食べて、ちょっと寝て起きると大概やめるやめる言うの」
慌てる遥心に綾歌さんが説明する。いつものことだと。酔っ払いの戯言だと。
「やめて田舎帰る」
「姐さん実家じゃーん。資格も免許もないし、やめてどうすんのー?」
口だけで引退宣言をする季更紀姐さんに、昴留ちゃんがタルトを食べながら言う。
「うう…」
「やめても抜き風俗が関の山だよー。風俗嫌なんでしょー?」
「ううー」
「わっ」
後輩からズバズバと辛辣な言葉を投げつけられた季更紀姐さんが、遥心の肩に顔を埋めた。遥心がそれを思わず抱き締める。
抱き締めながら詩帆を見ると、もう表情というものが無かった。怖い、とても怖い。
「姐さん、落ちついて」
とても怖いけれど、遥心は目の前の女性の背中を撫でて落ちつかせる。
「昴留は映像の仕事あるからいいじゃないっ!」
「映像…」
詩帆が呟く。遥心は知っていた。最近覚えた単語だ。
どうやらこの踊り子さんもセクシー女優さんだったようだ。
「うん、キカタン系。おもにレズ多めー」
映像、が何の職業か、キカタンがどういう意味かわかっている遥心に、昴留ちゃんがフォークを咥えたままVサインをしてくる。遥心がその昴留ちゃんの顔をまじまじと見る。
ハーフ系美少女の顔立ちはなんとなくどこかで、サンプル映像で見た気がした。
「食べるー?あーん」
「あっ、ふぁい」
そして夏みかんタルトをあーんで、一口貰う。その間も優しく季更紀姐さんの背中を撫でていたが、
「おおっとぉ」
与えられる優しさに甘えたいのか、姐さんが肩から本格的に遥心の胸元に顔をうずめた。
甘えたい時、不安に押しつぶされそうな時は男性の厚い胸板より、薄くても女性の胸の方が安心する。遥心はいい歳した大人に、あまり豊かとはいえない胸をどうぞとばかりに貸した。当然、多大な下心を持って。
その現場を見て、詩帆が口を開く。
「おい、ババア」
「なによ小娘!」
その三文字に、遥心の胸に顔を埋めていた季更紀姐さんが詩帆の方を振り向き、食いつかんばかりの勢いで吠える。
「あんたなんてどうせ大学の夏休みとかで冷やかしに見に来ただけでしょ!若いと思ってたらあんただってあっという間に」
「あたしの女から離れろババア」
詩帆の言葉に場が凍りつく。
「…離れろ、ババア」
再度地を這うような低い声で詩帆が言うと、姐さんはゆるゆると遥心の胸元から離れていった。
「綾歌さんとババア、席交代」
「えっ?」
「席交代」
「は、はい」
綾歌さんが返事と共に席を立つ。季更紀姐さんものろのろと立ち上がり、詩帆の隣に座り、綾歌さんが遥心の隣に座る。
昴留ちゃんとはまた違ういい匂いがふわんと香り、遥心がさりげなく鼻をひくつかせるが、はっ、と詩帆を見ると表情がない。
その隣には酔いがすっかり醒め、これから何が始まるのかと急にそわそわとしだした季更紀姐さんがいた。詩帆が目を伏せ、一つ息を吐くと、
「言いたいこと、全部話せ」
静かにそう言った。
「愚痴でも、悩みでも、不安でも、なんでもいい。話したいこと全部話せ。言ったらだいたい楽になる。整理がついて解決に向かう。女ってのはそういう風に出来てる」
詩帆が季更紀ババア姐さんの目をしっかり見据え、
「強いからな」
男ばりの度量の深さと女の強さでもってそう言った。
ううー、と季更紀姐さんが詩帆の、遥心よりは豊かな胸に顔を埋める。それを見て遥心が、あっ、と心の中で声を上げた。
その声が聞こえたかのように詩帆が姐さんを抱きとめながら、遥心の方をニヤリとした表情で見てくる。
嫉妬の念にかられるが、詩帆はこんな思いで自分の膝枕姿を見ていたのかという反省の思いもあった。
だがそれ以上に、両サイドからものすごくいい匂いがして、遥心はなんだかうまく考えがまとまらなかった。
季更紀姉さんの愚痴とも悩みとも懺悔ともつかないそれは長時間続いた。
それを、詩帆はうん、そうだね、わかるよなどと相槌を打ち、時折慰めるように身体に触れてやりながら聴いてあげた。
後の三人で古今東西可愛いものをやり、昴留ちゃんの挙げたものが明らかににグロいものでその都度審議がなされても続いた。
綾歌さんが遥心と詩帆の性生活を根掘り葉掘り聞きだしても続いた。
綾歌さんと遥心だけでゲームを再開すると、若い女の子二人の関係を知るや昴留ちゃんが遥心の内腿を撫でさすったり、ショートパンツの裾から指を差し入れたり、ゲーム機を持った腕を胸で挟もうとしたりしても続いた。
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