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6、グランドでもないフィナーレ
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BGMは、アニメ ぱぐ×パグの主題歌『御用だ御用だ!魅惑のボディ』だった。
玉のような女盗賊の肌に、町内の岡っ引きたちが噂しているぜという歌詞は意外とこの場に合っていた。
アニソンとして括るにはもったいないカッチョいいエレキサウンドなど耳に入る様子もなく、撮影希望者が列を作っていく。その列はまずまずの、いやかなりの長さだ。遥心はどうやってこの時間を潰そうかと考える。
することはない。しかし場内は寒い。今は休憩時間に近い。
「……となればトイレか」
場内に入る前に場所を確認していなかったが、とりあえずロビーに出てみると、ロビーの突き当たりの壁に矢印とトイレという文字が見えた。こちらにも列が出来ていた。
最後尾につき、思いのほか早いターンで中に入ってみると、
「うぐっ」
男性用小便器が一つと個室が一つしかない。当然小便器は今まさに男性客が放尿している姿が見えた。別に男女兼用トイレなどは珍しくもないが、なんだか女性客も使うということを端から想定してないように思えた。
だが今は遥心自身も男の子としてこの場に来ていた。
出来るだけ平常心を装い、放尿している男性の後ろを通って個室に入る。当然汚物入れもなく、スカートが付くかもしれないなどということを想定していない和式トイレだった。
女性割引はあるのに、とサービスの行き届いてないことを嘆きながら、遥心は用を足した。
遥心がトイレから帰ってきたところでオープンショーが始まった。
曲は PCゲーム 昨日に勝る今日よりも、明日はもっと素晴らしい テーマ曲『Hey!CHERRY BOY!』だった。
踊り子さんが全裸にピンクの法被姿で元気に登場すると、本舞台でトーマスやスワイプス、中央舞台でクリケットなど、ブレイクダンスの大型系ムーブ技を決める。
下半身に何もつけてない状態で行われるムーブ技に、生殖器が様々な角度、スピードで展開、全開される。おまけに流れてくるのは電波ソングと名高い曲だ。脳がやられそうなパフォーマンスに遥心はぐっと歯を食いしばる。さっきまでの踊り子さんに対するクールなイメージが一気に吹き飛んだ。
代わりに最後まで楽しませるサービス精神に、遥心は拍手を送った。
そしてどうやら今の人が本日最後、今日のトリだったらしい。
全6ステージ。時間にして計二時間半ほど。
さすがに疲れて遥心がぐったりと身体をパイプ椅子に預けていると、客席が暗くなり、安いユーロビートとともにムービングライトが場内を照らしだす。
続いて「本日は清簾劇場にご来場いただき、誠にありがとうございました」という定型通りの場内アナウンスが流れてきた。もう終わりのはずではと遥心が香盤表を見ると、出演者の名前のあとにフィナーレと書いてあった。
周りの客が手拍子をしだすので、遥心も適当に合わせて手拍子すると、
「まずはっ、逢瀬さくら嬢!」
場内アナウンスとともに、本日登場した踊り子さんが次々とステージに現れた。
ファッションショーばりのモデルウォーキングで本舞台と中央舞台を練り歩く。 踊り子さんも曲に合わせて手拍子をするが、それぞれ手の叩き方が違う。
笑顔でリズミカルに叩く人、やる気なく叩く人、アンニュイな表情で叩く人、舞台周りの常連客をいじる人。着ているのもボディコン風衣装だったり、Tシャツにホットパンツだったりと色々だ。裸を商売にしている人達が、皆一様にして普通の服を着ているというのが遥心はなんだか妙な感じがした。
「そして最後に、本日のトリを飾ってくれました、藤谷遊麻嬢!」
トリに登場した踊り子さんが現れ中央に収まると、一番上手にいる踊り子さんが手を挙げ、上手側の客席に向かっておじぎ、続いて下手にいる踊り子さんが手を挙げ、下手側の客席に向かっておじぎをする。
おじぎもデパートガールのようにおじぎをする人、頭を下げながら手を腰の前で組み、一歩足を引く人、スカートの裾をちょいとつまんでみせる人、胸に手を当てておじぎをする人と、おじぎの仕方一つとっても踊り子さんによって様々だった。
最後に正面を向いて客に手を振ると、するすると割り緞帳が閉じていく。しかし古い劇場の割り緞帳はきちんとは締まらず、かったるそうに舞台をあとにする踊り子さん達が緞帳の隙間からチラと見えた。遥心の肌にふつふつと、ゾクゾクと鳥肌が立つ。
踊り子さん達の意外な一面と、いかにも昭和の作りっぽい劇場のチープさが垣間見え、遥心は一人、ひそかにテンションが上がっていた。
玉のような女盗賊の肌に、町内の岡っ引きたちが噂しているぜという歌詞は意外とこの場に合っていた。
アニソンとして括るにはもったいないカッチョいいエレキサウンドなど耳に入る様子もなく、撮影希望者が列を作っていく。その列はまずまずの、いやかなりの長さだ。遥心はどうやってこの時間を潰そうかと考える。
することはない。しかし場内は寒い。今は休憩時間に近い。
「……となればトイレか」
場内に入る前に場所を確認していなかったが、とりあえずロビーに出てみると、ロビーの突き当たりの壁に矢印とトイレという文字が見えた。こちらにも列が出来ていた。
最後尾につき、思いのほか早いターンで中に入ってみると、
「うぐっ」
男性用小便器が一つと個室が一つしかない。当然小便器は今まさに男性客が放尿している姿が見えた。別に男女兼用トイレなどは珍しくもないが、なんだか女性客も使うということを端から想定してないように思えた。
だが今は遥心自身も男の子としてこの場に来ていた。
出来るだけ平常心を装い、放尿している男性の後ろを通って個室に入る。当然汚物入れもなく、スカートが付くかもしれないなどということを想定していない和式トイレだった。
女性割引はあるのに、とサービスの行き届いてないことを嘆きながら、遥心は用を足した。
遥心がトイレから帰ってきたところでオープンショーが始まった。
曲は PCゲーム 昨日に勝る今日よりも、明日はもっと素晴らしい テーマ曲『Hey!CHERRY BOY!』だった。
踊り子さんが全裸にピンクの法被姿で元気に登場すると、本舞台でトーマスやスワイプス、中央舞台でクリケットなど、ブレイクダンスの大型系ムーブ技を決める。
下半身に何もつけてない状態で行われるムーブ技に、生殖器が様々な角度、スピードで展開、全開される。おまけに流れてくるのは電波ソングと名高い曲だ。脳がやられそうなパフォーマンスに遥心はぐっと歯を食いしばる。さっきまでの踊り子さんに対するクールなイメージが一気に吹き飛んだ。
代わりに最後まで楽しませるサービス精神に、遥心は拍手を送った。
そしてどうやら今の人が本日最後、今日のトリだったらしい。
全6ステージ。時間にして計二時間半ほど。
さすがに疲れて遥心がぐったりと身体をパイプ椅子に預けていると、客席が暗くなり、安いユーロビートとともにムービングライトが場内を照らしだす。
続いて「本日は清簾劇場にご来場いただき、誠にありがとうございました」という定型通りの場内アナウンスが流れてきた。もう終わりのはずではと遥心が香盤表を見ると、出演者の名前のあとにフィナーレと書いてあった。
周りの客が手拍子をしだすので、遥心も適当に合わせて手拍子すると、
「まずはっ、逢瀬さくら嬢!」
場内アナウンスとともに、本日登場した踊り子さんが次々とステージに現れた。
ファッションショーばりのモデルウォーキングで本舞台と中央舞台を練り歩く。 踊り子さんも曲に合わせて手拍子をするが、それぞれ手の叩き方が違う。
笑顔でリズミカルに叩く人、やる気なく叩く人、アンニュイな表情で叩く人、舞台周りの常連客をいじる人。着ているのもボディコン風衣装だったり、Tシャツにホットパンツだったりと色々だ。裸を商売にしている人達が、皆一様にして普通の服を着ているというのが遥心はなんだか妙な感じがした。
「そして最後に、本日のトリを飾ってくれました、藤谷遊麻嬢!」
トリに登場した踊り子さんが現れ中央に収まると、一番上手にいる踊り子さんが手を挙げ、上手側の客席に向かっておじぎ、続いて下手にいる踊り子さんが手を挙げ、下手側の客席に向かっておじぎをする。
おじぎもデパートガールのようにおじぎをする人、頭を下げながら手を腰の前で組み、一歩足を引く人、スカートの裾をちょいとつまんでみせる人、胸に手を当てておじぎをする人と、おじぎの仕方一つとっても踊り子さんによって様々だった。
最後に正面を向いて客に手を振ると、するすると割り緞帳が閉じていく。しかし古い劇場の割り緞帳はきちんとは締まらず、かったるそうに舞台をあとにする踊り子さん達が緞帳の隙間からチラと見えた。遥心の肌にふつふつと、ゾクゾクと鳥肌が立つ。
踊り子さん達の意外な一面と、いかにも昭和の作りっぽい劇場のチープさが垣間見え、遥心は一人、ひそかにテンションが上がっていた。
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