昭和90年代のストリップ劇場は、2000年代アニソンかかりまくり。

坪庭 芝特訓

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19、初めての観劇デート

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 遥心は全てを話した。
 詩帆が行こうと言っていた映画館周辺を探索したら、ストリップ劇場があったこと。女性割引に惹かれてちょっと行ってみたこと。アニソンとかかかりまくって楽しかったこと。オタク気質が火を吹いて色々な劇場に行ってみたくなったこと。パチンコ屋のことについても。 

「なるほどー」

 詩帆が腕を組む。んー、と考えながらいつもはV字の口を真一文字にする。
 そんな姿を見ながら遥心が判決を待つ。またペナルティか、瞬殺の鳩尾パンチか。恐怖のイヤーカップかと予想しながら。だが、

「ま、知ってたけどね」
「へっ?」

 その発言に、間抜けな声を上げる。

「怪しいなあーと思ってパソコン見たら、検索バーになんかなんちゃら劇場とか、ストリップシアターとか出てきて。よくわかんない、女優さん?芸名みたいな名前も出てきて。あとエロ動画サイトの履歴とか」
「見るなよっ!勝手にッッ!」

 急に恥ずかしくなった遥心は、拳で口元を覆いながら視線を泳がす。

「あとこの前、コンビニにお使い行ったじゃん。その時遥心の財布取るのにバッグの中見たら、こうばんひょう?なんか芸名みたいのずらっと書いた紙とか入ってて、それから」
「もういいよっ!」
「あと蘭ちゃんに聞いた」
「それを早く言えよ!最初に!」

 詩帆がてへっ☆と蘭ちゃん仕込みの舌ぺろを披露する。
 怒りと恥ずかしさを押さえ込みながら遥心が訊く。

「……いつから気付いてたんですか」
「あたしが具合悪くて映画キャンセルした日から」
「なんでっ」
「んー、女の勘?」

 しらっと詩帆が言ってのける。遥心はなぜそのスキルが自分に標準装備されてないのだろうと真剣に考えるが、それは後でいい。

「どうして、ずっと聞かなかったの?」
「いやあ、しばらく泳がせてた方が面白いかなーってね」
「そうですか…」
「それで、だ」

 詩帆の一言で、遥心は説教お叱りモードの空気を嗅ぎ取る。鳩尾か、イヤーか、はたまた一人恥ずかし固めか。しかしそんな予想に反して、

「キスをしなさい」
「はい?」
「早くっ!」
「あ、はいっ!」

 遥心は慌てて正座のままにじり寄り、詩帆にキスをする。
 軽く重ねる程度で終わるはずだったが、床に置いた手を掴まれたのでそのまま続ける。しばらくして、ちゅっという音とともに詩帆から離れていった。

「ふぅ。よしっ」
「はい。えっ?」

 これしきのお咎めでお許しいただけた雰囲気に、遥心はむしろ戸惑うが、

「あたしも連れてってよ、今度」
「ええっ!?」 

 突然の申し出に更に戸惑う。

「つれてけよ」
「えー…」
「いきたいいきたいぃー」

 普通におねだりしてもきかないと悟ったのか、詩帆は作戦を変えて駄々っ子モードに切り替える。

「でもここら辺のはもう行ったし」
「あとは?」
「あとは…、電車で結構遠くまで行かないと」
「いこうよっ!」
「えええーっ!?」
「もっちもっちー」
「やめろっ」

 詩帆が遥心の両頬を手で挟み込んでもちもちする。
 詩帆の大好きなこの戯れが、遥心はあまり好きではない。
 炭水化物を摂り過ぎるとすぐ膨らむ頬。それを触られ、子供扱いされてるみたいで嫌なのだ。
 両手を振り払い、遥心があからさまに嫌そうな顔をすると、

「じゃあキスをしなさい」
「ぐっ」

 本日二度目の折檻だ。いや、調教かもしれない。
 詩帆が目を閉じて唇を待つ。再度にじり寄って唇を重ねた。
 重なった瞬間、詩帆が遥心の髪とシャツをわしっ、と掴み、舌を差し入れる。 
 うまくバランスが取れない遥心は手を床に付き、反対の手で詩帆の腰にあたりに触れる。不安定な体勢のまま、舌が絡まりあう。
 しばらくそうした後、ようやく解放された。詩帆は、はあ、と一つ息をつきながら、

「いくよね?」

と、小さく微笑みながら聞き、遥心は詩帆以上に乱れた呼吸で、

「…はぃ」

と、目の端に涙を滲ませながら答えた。答えざるを得なかった。
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