20 / 139
20、劇場に辿り着くまでが楽しい
しおりを挟む
土日は混む、初日、楽日は混むので二人は平日にストリップ劇場へ行くことになった。
お出かけなので詩帆は普段通り、本来の赤ちゃん的な可愛さを悟られないよう美人メイクで偽装している。
更にデカイ女優グラサンを掛けて武装してるので美人度が余計に上がっている。
「あい、どおじょ」
「いらないって」
電車の中で、詩帆がいつものように噛みかけのガムを遥心に食べさせようとし、遥心はそれをいつものように断るという、二人だけで通じるコミュニケーションを交わしたりしながら目的地に着いた。
「おいっ、はぐれないように手ぇつなごうZE!」
「なんでテンション高めなんだよ」
一足先に改札を出た詩帆が、男前な口調でぐっと手を差し出し、はいはいと差し出された手を遥心が掴む。傍から見ると散歩に俄然意欲的なキャバリアと、あまりそうではない飼い主のようでもある。
「道、どっち?」
「《駅を出たら目の前に交番が見えるので、》」
遥心がケータイで劇場のサイトにある《最寄駅からの道順》を読みあげると、キャバリアは手を繋いだままどんどん歩き出す。
「《二つめの信号が見えたら、》」
「あれじゃない?」
詩帆が前方を指差す。
古い映画館をそのまま再利用した様な外観。入り口の上には細長い提灯がいくつも飾られていた。ストリップ劇場、DX飛翔だ。
「わーい」
詩帆が手を繋いだまま駆け出す。
入口付近の外壁に踊り子さん達の宣材写真を使ったポスターが貼られていた。
「へえーっ。これが本日の出演者さん?じゃああたし、テンキ?アマキ?みゅうちゃん推し」
「じゃあ私、希美霞ちゃん」
宣材写真だけを見ながら、女子二人が手を繋いだままどの踊り子さんが可愛いかを言い合う。
「きみかちゃん、修正してるよ?」
「いいんだよ、別に」
そんなことを言いながらようやく入口のドアを開けた。
ロビーにはタバコを吸っている客が二、三人程度。
入ってきた二人をほんのちょっとだけ珍しそうに見てくる。
「すいません、カップル一組」
詩帆が薄い色のガラスが張られた窓口に向かって言うが、
「ちょっ!すいません女性二人。普通に女二人の方が安いから」
「あ、ほんとだ」
後半部分だけを遥心が小声で伝えると、詩帆が料金表を見る。カップルは6千円、女性は2500円也だった。
「楽しんでってね。今からだと二番目の踊り子さんだから」
支払いを済ませると若い女性客二人に従業員が愛想よく言い、詩帆がそれに、はーい、と愛想よく答えた。
元気で愛想のいい女の子客を、タバコを吸っていた男性客が不躾にじろじろと見てくる。詩帆はそれにも会釈で答えた。その間に遥心はロビーに置いてある香盤表を一枚貰う。
「女の子客って珍しいの?」
グラサンを外しながら詩帆が遥心に訊く。
「さあ。見たことないなあ」
「じゃあナンパ出来ないねー」
「えっ?」
二人はロビーから地下へと向かう階段を下りる。階段は狭く、曲がりくねり、遥心は消防法をきちんとクリアしているのか気になった。
ワクワクを隠さないまま詩帆が場内へのドアを開ける。重厚に黒光りしているわりに意外とスッとドアが開き、詩帆がつんのめった。
お出かけなので詩帆は普段通り、本来の赤ちゃん的な可愛さを悟られないよう美人メイクで偽装している。
更にデカイ女優グラサンを掛けて武装してるので美人度が余計に上がっている。
「あい、どおじょ」
「いらないって」
電車の中で、詩帆がいつものように噛みかけのガムを遥心に食べさせようとし、遥心はそれをいつものように断るという、二人だけで通じるコミュニケーションを交わしたりしながら目的地に着いた。
「おいっ、はぐれないように手ぇつなごうZE!」
「なんでテンション高めなんだよ」
一足先に改札を出た詩帆が、男前な口調でぐっと手を差し出し、はいはいと差し出された手を遥心が掴む。傍から見ると散歩に俄然意欲的なキャバリアと、あまりそうではない飼い主のようでもある。
「道、どっち?」
「《駅を出たら目の前に交番が見えるので、》」
遥心がケータイで劇場のサイトにある《最寄駅からの道順》を読みあげると、キャバリアは手を繋いだままどんどん歩き出す。
「《二つめの信号が見えたら、》」
「あれじゃない?」
詩帆が前方を指差す。
古い映画館をそのまま再利用した様な外観。入り口の上には細長い提灯がいくつも飾られていた。ストリップ劇場、DX飛翔だ。
「わーい」
詩帆が手を繋いだまま駆け出す。
入口付近の外壁に踊り子さん達の宣材写真を使ったポスターが貼られていた。
「へえーっ。これが本日の出演者さん?じゃああたし、テンキ?アマキ?みゅうちゃん推し」
「じゃあ私、希美霞ちゃん」
宣材写真だけを見ながら、女子二人が手を繋いだままどの踊り子さんが可愛いかを言い合う。
「きみかちゃん、修正してるよ?」
「いいんだよ、別に」
そんなことを言いながらようやく入口のドアを開けた。
ロビーにはタバコを吸っている客が二、三人程度。
入ってきた二人をほんのちょっとだけ珍しそうに見てくる。
「すいません、カップル一組」
詩帆が薄い色のガラスが張られた窓口に向かって言うが、
「ちょっ!すいません女性二人。普通に女二人の方が安いから」
「あ、ほんとだ」
後半部分だけを遥心が小声で伝えると、詩帆が料金表を見る。カップルは6千円、女性は2500円也だった。
「楽しんでってね。今からだと二番目の踊り子さんだから」
支払いを済ませると若い女性客二人に従業員が愛想よく言い、詩帆がそれに、はーい、と愛想よく答えた。
元気で愛想のいい女の子客を、タバコを吸っていた男性客が不躾にじろじろと見てくる。詩帆はそれにも会釈で答えた。その間に遥心はロビーに置いてある香盤表を一枚貰う。
「女の子客って珍しいの?」
グラサンを外しながら詩帆が遥心に訊く。
「さあ。見たことないなあ」
「じゃあナンパ出来ないねー」
「えっ?」
二人はロビーから地下へと向かう階段を下りる。階段は狭く、曲がりくねり、遥心は消防法をきちんとクリアしているのか気になった。
ワクワクを隠さないまま詩帆が場内へのドアを開ける。重厚に黒光りしているわりに意外とスッとドアが開き、詩帆がつんのめった。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
義姉妹百合恋愛
沢谷 暖日
青春
姫川瑞樹はある日、母親を交通事故でなくした。
「再婚するから」
そう言った父親が1ヶ月後連れてきたのは、新しい母親と、美人で可愛らしい義理の妹、楓だった。
次の日から、唐突に楓が急に積極的になる。
それもそのはず、楓にとっての瑞樹は幼稚園の頃の初恋相手だったのだ。
※他サイトにも掲載しております
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる